地域に根差した企業の発展を歴史から学ぶ!

2023年1月12日(木)~13日(金)、JICA留学生がセイコーエプソン㈱を訪問し、同社がこれまでどのように発展し現在のグローバル企業となったのか、その地域に根差した発展を学びました。

2023年2月6日

JICA地域理解プログラム「諏訪セイコーエプソンの地域に根差した発展の経緯を歴史から学ぶ」

JICAでは、将来、国の未来を支えるリーダーとなるJICA留学生に向けて、欧米とは異なる日本の近代化や開発経験などを伝える取組を幅広く推進しています。
本プログラムはその一環として、SDGs 貢献を経営戦略に反映させている長野県に本社を置くグローバル企業のセイコーエプソン㈱(以下、「エプソン」)の協力のもと、JICA東京が実施したものです。日本の大学院に在籍するJICA留学生12名が、諏訪地域の歴史を通して同社発展の経緯と事業マインド(過去に開発された時計等の同社製品・技術に新しい価値を加え生まれ変わらせることを含め、失敗を恐れず様々な新事業に挑戦する哲学等)や地域に根差した取組について学びました。

視察概要 ①エプソン本社での講義、創業記念館・歴史館視察

エプソン講義の様子

  
最初に「諏訪の歴史・特性を踏まえたエプソンの発展」について講義を受け、諏訪の地形的特性を踏まえ、同社がどのように起業し戦後の近代化の中で発展していったかについて、代表的な製品の開発や東京オリンピックといった転換点を示しつつ分かり易く説明頂きました。

エプソン記念館で説明を受ける様子

製品体験の様子

   
その後同社内にある創業記念館・歴史館を視察し、世界初のクオーツ腕時計や時計から印刷機への転換にも繋がった小型デジタルプリンタEP-101、使用済みの紙を原料にして、大量に水を使う一般的な再生工程を経ずに新たな紙を生産できるペーパーラボといった独自の開発技術の説明に留学生は感銘を受けていました。
   
また、諏訪湖を中心に地域の自然との共生を重視する同社の環境配慮も理解できた様子がうかがえました。

②諏訪大社(秋宮)付近、諏訪湖からの富士山見学

諏訪大社で手水を使う様子

諏訪大社で参拝の様子

午後は諏訪地域の人々にとって心の拠り所となっている諏訪大社(秋宮)を見学しました。
7 年に一度開催される「御柱祭」は地域一体となって取り組む行事であり、住民が相互に協力しあうコミュニティ形成に繋がっています。

諏訪湖から見える富士山

   
また、中山道と甲州街道の合流点であった下諏訪宿付近は古くから物々交換や情報交換が行われる場であり、内陸の遠隔地で物流が不便な諏訪では小さく高付加価値のものを扱う必要がありました。こういった経緯の説明も踏まえ、留学生は、時計やカメラなどの精密機械工業がこの地に発展したことを実感できた様子でした。
当日は天気にも恵まれたところ、諏訪湖岸の凍った湖面から富士山をくっきり望むことができ、諏訪地域の地形を実感できる機会となりました。

③夕食および交流会

浴衣姿で交流会に参加

エプソン社員も交えての夕食及び交流会では、各グループに分かれて「日本人へのアプローチ方法」について話し合いました。エプソン社員からも意見をもらいつつ、日本社会での効果的なコミュニケーションの取り方やコロナ後の日本における生活の悩みなど様々な話題について情報交換を行い、留学生を元気づける機会となりました。

④エプソン豊科事業所訪問・ワークショップ実施

プロジェクターを扱う豊科事業所では、留学生はいろいろな製品の紹介およびデモ体験を通し、人々の生活の質向上のための製品開発に取り組む同社の姿勢や、部品製造から販売まで一貫して社内で対応することで販売価格が抑えられていることに感銘を受けていました。

ワークショップの様子

   
続くワークショップでは、それぞれの留学生の自国が抱える教育課題やその解決に向けて、同社のポータブルプロジェクター活用を中心にグループ毎に活発な議論がなされ、エプソン側からは、今後留学生が自国の都市開発アプローチを検討する際、各都市を世界の中でどう位置付け発展させていきたいのかを多様な視点から考えていってほしいとのコメントがあり、加えてエプソン発展の鍵は人的資源と地域との共生であることが強調され、締めくくられました。

⑤岡谷蚕糸博物館訪問視察

岡谷蚕糸博物館での糸繰体験

髙林千幸館長と

インドの養蚕プロジェクト専門家であった髙林千幸館長より、日本全体及び諏訪地域の蚕糸業盛衰の歴史も含めた内容を、館内視察や繰糸の実演を交えながら説明頂きました。エプソン発展の背景にある諏訪の産業の推移や手先の器用な女工が精密機械工業の発展に貢献したことについて理解が深まる機会となりました。

この経験を自国の国づくりに向けたヒントに! 

プログラム終了後、参加した留学生からは、「エプソンの成長の経緯から日本の主要産業成長の理由も理解できた」「大学院で学んでいる理論をいかに実践に移していくかという点で学びが大きかった」といったコメントが寄せられました。今回得た学びや気づきが、将来の国づくりに向けて活かされることを祈っています。
JICA東京では、今後もエプソンとの連携協力関係を維持・発展させ、更に充実したプログラムとしていきたいと思います。

報告者名 長期研修課