民間企業が誇る黒煙低減技術~学生たちが感じたこと~

共栄大学(埼玉県)の学生が、株式会社コモテック(埼玉県、春日部市)をオンラインを通じて視察。開発途上国におけるディーゼルエンジンから出る黒煙をなくしたい!という先代社長の想いを伺い、工場内のオンライン中継を通じてDPF(ディーゼル微粒子捕集フィルター)の性能を実際に拝見しました!

2022年7月26日

環境問題の視点から開発途上国における黒煙問題を解決すべく

 「開発途上国におけるディーゼルエンジンから排出される黒煙問題をどうにかしたい」という先代社長の想いから、モンゴルでの課題解決へと立ち向かったコモテックのみなさん。同社は、2017年から2019年にかけてJICA中小企業・SDGsビジネス支援事業を活用し、モンゴル国ウランバートル市で「ディーゼル路線バスのDPFによる黒煙低減計画に関する普及・実証事業」を実施しました。

DPF内にあるフィルター

ガーゼを使用してフィルターを使用した時としてない時の比較

 DPF(Diesel Particulate Filter: ディーゼル微粒子除去装置)とは、黒煙除去率99.9%以上、PM(粒子状物質)除去率90%以上の性能を持つフィルターでディーゼルエンジンの排気に含まれるすすを捕集します。この技術を用いて、開発途上国における黒煙問題に貢献しています。
現地調査に参加したメンバーは、「モンゴルでの活動は当初言葉の壁もあり、意思の疎通が大変でした」、「DPF搭載業務を通じて徐々にコミュニケーションがとれるようになってきた。意欲の高い現地技術者は、臆せずどんどん質問してきてくれて、一旦納得するとすぐに実行に移すので頼もしく、教えがいもありました」、「JICA事業を活用したおかげで大臣を含む相手国のトップの方々と面談の機会もあり、我々のような小さな中小企業でも一国の政策プロジェクトに関われ、国を動かせたことをとても誇りに思う」と当時のことを振り返りました。

コモテック社の海外事業展開への挑戦から学生たちが学んだこと

オンラインでの工場見学の様子

 今回、企業オンライン見学に参加したのは「開発途上国の貧困・格差の問題と開発協力の可能性」をテーマに学ぶ共栄大学 国際経営学部 国際経営学科 小林 尚之教授とゼミ生(3年生)10名。参加した学生からは、「JICAの調査費用はどのような調査をするのに使っているのか?」、「モンゴルでの活動で苦労されたことは?」といった質問がありました。

 また、学生たちから以下のような感想がありました。
●「モンゴルで苦労したこととして言語や文化の違いによってうまく伝わっているのかいないのか分からないなどがあり、これから先私自身仕事で海外事業に携わることがあれば、同じように言語の壁、特に英語以外の国ではとても苦労するんだろうなと思いました。コモテックさんのような小さな会社でも、国のプロジェクトに携われるくらいの技術があり、それに誇りを持っているという言葉にとても感動しました。私も仕事や何かをやる上では、何かやりがいや誇りなど見つけて大事にしていきたいです。」
●「フィルターを使うことでガーゼが黒くならないことを実際に見てもらう技術の紹介方法が、日本だけでなく言語も考え方も違うモンゴルでも通じるコモテック社の技術力の明解なアピールとなったことが印象に残りました。また社員の方が自分たちの技術を誇らしい気持ちを持っている点や、電気自動車が普及し始めている日本から、JICAの経験や知識などのサポートを通して発展途上国でのビジネスを展開することに至った行動力の高さは、私自身が将来働くうえで大切にしたい心意気であると考えることに繋がりました。」
●「特に印象に残ったのは、建設現場は住宅地や飲食店の傍である場合も多く、重機から黒煙やガスが排出されると、近隣の人や店に迷惑がかかってしまうというお話です。私たちが普段工事現場や建設現場の傍を安心して歩けるのは、御社が製造されているような黒煙除去フィルターのおかげであることがよく分かりました。また、事業の海外展開は容易ではなく、実際に御社がモンゴルに進出された際は、言葉の壁や現地の人への教育など、ご苦労された経験についてもお話を聞くことができ、大変勉強になりました。しかし、あらかじめ除去フィルターが取り付けられている新車を資金的に入手できない発展途上国において、御社の黒煙除去フィルターの潜在的需要はとても大きいと感じます。今後、御社の世界中でのさらなるご活躍を期待しております。」

株式会社コモテックの皆様
(中央:小森社長)

 先代が思い描いたビジョンから、コモテック社の社員一同がモンゴルのディーゼルエンジンの問題に一所懸命に取り組まれ、一国を動かすほどの成果を出せたというのは、学生にとっても「働く」ことの楽しさや、将来への具体的なイメージを持てた機会となったのではないでしょうか。

JICA民間連携事業とは?

開発途上国への進出や人材育成を考える企業の「海外への思い」をサポートする事業です。
事業の詳細を知りたい方は下記リンクから。

報告:JICA東京センター 埼玉デスク 国際協力推進員/矢田部 建佑