JICA留学生へのインタビュー(ブルキナファソ出身Mr.DA Nan、東京大学大学院)

2023年3月15日

【画像】現在、東京大学大学院農学生命科学研究科に在籍、2023年3月に卒業予定のブルキナファソ出身のJICA留学生DA Nanさんにインタビュー! JICA筑波とJICA北海道での課題別研修でSHEPアプローチ(市場志向型農業振興:SHEP(市場志向型農業振興)アプローチ ※下記リンクより)を学んだDA Nanさんは、帰国後母国でのフィールド活動実践を経て再来日し、農業経済学の観点からその研究を行っています。母国の小規模農家の生活向上に繋がる研究に取り組むDA Nanさんの熱い気持ちを語っていただきました!

SDGs グローバルリーダーコースへの応募のきっかけ~再来日まで

ブルキナファソで収集したデータ分析を大学院の研究室で行うDA Nanさん

氏名:   DA Nanさん
出身国:  ブルキナファソ
留学先: 東京大学大学院農学生命科学研究科 修士課程
JICAコース:SDGsグローバルリーダー
研修期間: 2020年9月~2023年3月
所属先:   ブルキナファソ農業省

ブルキナファソの歴史家Joseph KI-ZERBOが”We are not born ready-made (私たちは生まれた時にはまだ出来上がっていない)”と強調したように、この地球に生を受けた私たちには教育が必要です。そして研修はいつも良い機会を与えてくれます。国の発展には人的資源が大事ですが、その好事例である日本に学ぶため、私はSDGsグローバルリーダーに応募しました。

私は2018年にJICA筑波のSHEPアプローチついての課題別研修に参加し、SHEPアプローチのコンセプトである、「経済学」(情報の非対称性理論を踏まえた「ビジネスとしての農業」の推進)と「心理学」(自己決定理論に裏打ちされた農民のモチベーションを引き出す仕掛け)の2つの要素を満たす活動の実践に感銘を受けました。2019年には、JICA北海道で新たな課題別研修に参加し、農産物加工のマーケティングにSHEPアプローチを適用していくことについて話し合いました。これらのJICA研修の経験から、農家が適正技術を活用しつつ自律的に行動することの重要性について学び、大きな影響を受けました。帰国後、農業省に戻った後はJICAブルキナファソ事務所等の協力を得ながら、JICA研修で作成した計画の実現に向けた取り組みを行いました。ブルキナファソでのSHEPアプローチの実践自体は、私よりも先にJICA研修を受けた職場の上司が始めていましたが、私も帰国後は、日本で学んだことを職場の同僚に共有し、適用する必要があるという確信のもと、フィールド活動を続けました。資金面で苦労することもありましたが、他ドナーが実施するプロジェクトにSHEPアプローチを活用した研修を入れ込んだ企画書を提案し、採用してもらいました。

その後、治安上の問題で活動継続が難しくなったことは残念でしたが、この活動は素晴らしい経験となりました。自分の能力を高めるべく継続的に努力することが成功への道であると確信しています。また、(研修などで)学んだことを実践していくことが新たな知識を生み出すことに繋がります。

私はブルキナファソの農家とともにSHEPアプローチに取り組み、その有効性を実感してきたため、国の農業普及制度に同アプローチを政策的に取り入れる根拠が必要だと考えました。SHEPアプローチが小規模農家の生活に与えるインパクトに関する多くの報告書を読みましたが、自身でもその科学的証拠について研究したいと考え、SDGsグローバルリーダーコースに応募し、再来日が実現しました。

日本人の家庭訪問で餅つきを体験しました

   
【日本での生活】
私は東京での生活が好きです。交通機関やコンビニエンスストアが便利で、その多様性は活気に満ちた都市生活をもたらしてくれました(もちろん他の国同様、便利な生活には物価が高いという代償が伴いますが)。
来日当初はコロナウイルス感染症拡大の影響により、簡単ではありませんでしたが、幸い現在は通常の生活が戻りつつあります。コロナ禍では、日本の文化的なイベントはほとんどありませんでしたが、昨年末には山梨県にいらっしゃる日本の友人宅を訪問し、お餅の作り方を学ぶ機会がありました!

今、そしてこれからの進路について

今年はアジア農業経済学会(ASAE)と日本農業経済学会(AESJ)と共催のもと、2023年3月17日から20日まで第11回国際会議が東京で開催されます。これは、農業経済分野の学者、政策立案者、専門家等による重要な会議であり、科学論文の発表やディスカッションで構成されます。私たちの「ブルキナファソの小規模農家に対する 市場志向型農業普及(SHEP アプローチ)の影響」に関する研究が選ばれ、とても嬉しく思います。このトピックについて著名な研究者と議論する絶好の機会となるため、現在、その発表に向けた用意を行っています。

ブルキナファソのSHEPサイト

2023年3月23日の修士課程卒業後は帰国し、農業省に戻ります。ブルキナファソにはSHEPのトレーニングを受けた多くの関係者がいますが、更なる組織の能力強化と他地域での実践を継続する必要があります。
特に農村地域はさまざまな脅威に直面しており普及活動が困難になっているため、技術を駆使して活動を引き続き実行できるよう方策を考える必要があります。また、SHEP のインパクトを高めるには、農家の市場アクセス力向上のみならず、生産技術の向上も必要です。
そして、国家の政策レベルで、どのような農業普及制度が効果的かという議論を行っていくことも求められています。ブルキナファソの農業普及におけるSHEP適用拡大を推進していくには、調整・経験共有をしあう枠組みを確立していくことが重要と考えています。

これから日本で学ぶ長期研修員に向けたメッセージ 

来日当初は、母国と異なる日本の教育制度や生活の実情がよくわからずに混乱したことがしばしばありましたが、生活に慣れるために手助けしてくれる人が常に周囲にいました。
日本には良い研究環境が整っているので、日本への留学は正しい知識を学ぶ良い機会になると思います。そして、自身の研究に取り組むだけでなく多様な人との交流により学びを深めることで、確実に学業の成功を収めることができます。

長期研修課 安藤 洋子