JICA基金活用団体にインタビュー!

2023年3月20日

JICA では、国際協力に関心のある市民の皆様、法人・団体の皆様からの寄附金を基に、「世界の人々のための JICA 基金活用事業」を実施しています。認定NPO法人「アジア・コミュニティ・センター21」は、この事業を通じて、フィリピンのストリートチルドレンの自立支援(自営業を目指す若者の能力向上)を行っています。今回は、2月上旬にフィリピンへ渡航された同団体事業担当の辻本さん、現地での活動の様子や事業の背景等、インタビューを行いました。

ストリートチルドレン支援の道のり

猪原:今回、JICA基金活用事業に申請をされた理由を教えてください。

辻本さん:フィリピンでは、路上で暮らす子どもたちが、大人になっても日雇いの仕事や物乞いを続けながら、新しい家族を形成して、路上で生活をする子どもがますます増えています。そこで、2018年から「Childhope」という現地のNGO団体と共働で、路上で暮らす若者の自立支援事業(職業技術を身につける研修の提供)を始めました。当初は、「就職」に重点を置いていたのですが、2020年の3月、コロナ禍によるロックダウンで、人々が家の外に出られなくなり、研修を修了した路上の若者たちが雇われていたレストランやホテルなどの産業自体が大きな打撃を受け、就業機会が激減しました。感染拡大の長期化が予想されるなかで、「起業」にもっと力を入れようと、2020年の後半から色々と模索をしていました。就職するためのスキルだけではなく、起業につながる生計技術を学ぶための研修や、起業家精神、予算の立て方・コスト管理などを学ぶ研修も増やしました。

若者起業グループ話し合いの様子

2021年の9月に過去3年間の活動の評価・調査をしたところ、研修修了生の約6割が起業や就職をし、自立した生活を送っていることがわかりました。一方で、起業しても長く続かないケースが多くあり、起業後のフォローアップも必要ではないかと考えました。そこで新しく、「若者起業グループ(研修を修了した若者たちの中で、起業している・これからしたいという若者を集めたグループ)」を昨年夏に作りました。このグループでは、単に座学の研修を行うだけではなく、若者たちが取り組んでいるビジネスについて専門家の助言を受けたり、経験共有などを通じて若者たちが相互に学びあう機会をつくるなど、継続的なサポートをしていくことをめざしていますが、より研修内容を充実したものにしたいと思い、JICA基金に応募しました。

現地への渡航で見えてきたこと

猪原:2月のフィリピン渡航で気づいたことを教えてください。

辻本さん:まず、Childhopeの事業担当者が若者たちと話している様子を見ることで、毎月オンラインで話しているだけでは気づくことのできない、担当者の人となりがよくわかりました。また、現地の事業担当者同士で活発な話し合いができている様子も確認できました。現地の若者に、自分たちのビジネスの難しい点について話し合ってもらい、それをどのように解決するか発表してもらったのですが、若者たちが自発的に、活発に議論をしている姿も見られました。

猪原:現地の路上ビジネスには、どのような課題がありましたか?

路上でビジネスをする女性

Childhopeスタッフとの話し合いの様子

辻本さん:路上でビジネスをしている人の全員が、営業許可を取っているわけではないということです。このようなインフォーマルセクターの商売をしていると、ある日突然自治体からの取り締まりが来て、商品をすべて没収されることもあります。
実際、この子(写真1)のいとこの奥さんが、生まれて約二か月の幼子を抱えて店番をしているときに、警察の取り締まりが来てしまいました。当然、子どもがいるので店じまいをして走って逃げることもできず、せっかくお金を出して仕入れた商品は没収されてしまい、商売ができなくなってしまいました。
もちろん、うまくいっている事例も沢山あるのですが、このように、まだ不安定な状況で仕事をしている若者たちもいるということが、よくわかりました。
いずれお金が稼げるようになったら営業許可を取ろうと思っていると、結局それまでの段階で取り締まりをされてしまうので、特に起業をしたばかりの早いタイミングで、きちんとした営業許可のとり方や合法的な商売の仕方をレクチャーする必要がある、という話を現地担当者としました。

さいごに…

猪原:今後事業を進めていくにあたって、どのような課題が予想されますか?

辻本さん:今は、若者たちも活発な議論ができていてとてもいい状態ですし、このグループ活動に関しては修了・卒業は決めずに、グループのメンバーである限りはサポートを続ける予定です。しかし、与えられることに慣れてしまうと、結局若者たちの起業精神を損ねることにもなりかねないので、いかに若者たちが“自分たちの活動”として参加していく雰囲気を作っていくか、自立心を養うことがとても重要になってくると思います。
将来的には、この「若者起業グループ」を、若者たちが自ら運営する自助グループ的なものに育てていけないかという話をChildhopeとしています。いずれは若者たち自身がグループを管理して、必要な講師を自分たちで呼んでくるようなグループに育てていければと思っています。そのような「自立心・オーナーシップを若者たちに持たせていく」ということも、今後の大きなチャレンジなのかなと思っています。

猪原:日本にいる私たちにできることはあるでしょうか?

辻本さん:ストリートチルドレンの問題は、フィリピン国内の問題ではありますが、同じアジアに住み、同じ時代に生きている国際社会の一員として、そのような状況があるということに目を向けてほしいです。特に今は、ウクライナ侵攻やトルコの地震などもあり、日本国内にも貧困の現実はあるので、目を向けなければならない課題は沢山ありますが、路上で生まれ育っていくという現実があること、またその状況を少しでも良くしようとしている若者たち(起業を目指す若者等)の挑戦や頑張りにも関心を持っていただきたいと思います。

hildhopeスタッフと(右から二番目が辻本さん、真ん中がACC21伊藤代表理事)

報告者より
今回はJICA基金活用事業を実施している「アジア・コミュニティ・センター21」の辻本さんにお話を伺いました。現地のパートナー団体とも密に連絡を取り、常に将来を見据えた活動をされていました。支援を受ける現地の若者たちの成長や活躍によって、ストリートチルドレンの負の連鎖が断たれるといいなと感じました。
今回お伝えした「世界の人びとのためのJICA基金活用事業」では、市民の皆様の寄附金が活用されています。ご寄付をお考えの方は、JICA寄附サイト(関連リンク)もご確認ください。