ルワンダ国向け技術協力プロジェクト「デジタルイノベーション促進プロジェクト」のニュースレターVol.3を発刊しました。
2025.06.26
第三国研修(インド): Biotechnology Incubation Centre(ハイデラバード)での集合写真
2024年12月17日、キガリ市内にあるデジタルトランスフォーメーションセンター(※1)にて、第5回合同調整委員会(以下、JCC)を開催しました。当JCCでは、日ル両国のプロジェクト関係者19名が各成果の進捗状況を確認し、成果の達成とインパクトの最大化に向けて、さらなる活動の迅速化・合理化に取り組むことで合意しました。また、2024年8月10日に公表されたルワンダ政府のICTセクター戦略計画2024~2029年版(ICT SSP (2024-2029))の目標に合わせて、各成果の客観的に検証可能な指標(OVI)の見直しを行いました。引き続き成果の実現に向けて邁進して参ります。
※1:ルワンダICTイノベーション省(MINICT)とドイツ国際協力公社(GIZ)が共同で運営するプロジェクトおよびその拠点
第三国研修(インド):Biotechnology Incubation Centre(ハイデラバード)での集合写真
第2地方都市のムサンゼ、フイエにあるイノベーションハブのスタッフ6名に対し、今後、自律的に起業家育成プログラムを実施していくための能力強化を目的として、2024年12月中旬~2025年1月中旬にかけて、指導者育成研修(ToT:Training of Trainers)を実施しました。研修に参加したスタッフは、5日間の集合研修(2024年12月16~20日)を通じてプログラムマネジメント、コミュニケーション、デザイン思考等について学び、その実践の場として2025年1月14日と1月17日にそれぞれムサンゼ、フイエで「持続可能な未来のためのイノベーション」というテーマでビジネスアイデアコンテストを企画・開催しました。コンテスト参加者からは、農業用ドローンを活用した播種(はしゅ)サービスや非生物分解性廃棄物(non-biodegradable waste)管理ソリューションといった、現地のニーズに沿ったアイデアが披露されました。イベント運営では時間管理や参加者のエンゲージメントに課題がありましたが、イノベーションハブのスタッフには、今後様々なプログラムやイベントの企画・運営を通じて、個人だけでなくチームとしての対応力を向上させていくことが期待されます。
ToT集合研修の一コマ
ビジネスアイデアコンテストの様子
2025年2月21日から3月11日にかけて、同地方ハブでルワンダ政府の起業家育成プログラムの一環としてアイディエーションプログラムが行われました。このプログラムには、延べ100名が参加し、62のビジネスアイデアが提案されました。プログラムの最後にはピッチングイベントを開催し、審査の結果19のアイデアが評価され、続くプレインキュベーションプログラムに進むことになりました。また、4月29~30日には、ムサンゼイノベーションハブにて「ムサンゼにおける農業および観光産業の成長を阻害する諸課題」をテーマとしたハッカソンを実施しました。当プロジェクトでは、このような取組みを通じて、更なるICT起業家支援環境の改善および起業家輩出の仕組みの強化を進めて参ります。
Vigyan Ashram(プネ)でのディスカッションの様子
ビジネスアイデアコンテストの様子
当プロジェクトの重要なゴールの1つである、ムサンゼ・フイエの各イノベーションハブの持続可能なビジネスモデルの策定にあたり、他国の事例を学ぶとともに、将来的な両国間のネットワークを構築することを目的として、2025年5月13日~20日にかけて、インドへの第三国研修を実施しました。インドのスタートアップ・エコシステムはアメリカ、中国に次ぐ世界第3位の規模を誇り、2025年5月現在、政府の認定を受けているスタートアップ数は17万社を超え、100社以上のユニコーン企業を輩出しています。FabLabの運営に精通する短期専門家の竹村氏(ファブラボ浜松/TAKE-SPACE代表)およびJICAインド事務所の協力のもと、ムンバイ、プネ、ハイデラバード、コチ、デリーの5都市を巡り、各地の主要な起業家支援機関計8か所を視察訪問しました。その中でも特に、ハイデラバードでは円借款事業「テランガナ州における起業・イノベーション促進計画」のサブプロジェクト実施機関かつ世界最大級の起業家支援施設であるT-Hubを訪問し、関係者との意見交換を通じて、政府の強力なイニシアティブや様々なステークホルダーの関与によってインドの巨大なスタートアップ・エコシステムが形成されていることを学ぶことができ、非常に有意義な研修となりました。
詳細については、JICAインド事務所による2025年5月22日のプレスリリース(https://www.jica.go.jp/english/overseas/india/information/press/2025/1568359_59609.html※英語)をご覧ください。
Vigyan Ashram(プネ)でのディスカッションの様子
T-Hub(ハイデラバード)でのディスカッションの様子
行政サービスデジタル化の概念実証(PoC、新たなサービスの実現可能性を検証すること)の第2弾として、ルワンダ工科大学(RP)の学生や教職員の学習・研究成果が記録・閲覧できる電子ポートフォリオ管理システムの開発支援を行い、2025年5月30日にリリースされました(https://eport.rp.ac.rw/
)。
このプラットフォームによって、学生同士や教員間での情報共有やフィードバックが容易となり、また、電子履歴書としても機能し、学生の就職活動に役立てることも期待されます。なお、本PoCでは、イノベーション促進型公共調達法(通称PPI)に基づく競争入札の結果、70社以上の応募の中からキガリ発のテック系スタートアップ企業のStrettch社が受注しました。同社は昨年、ルワンダ国内で高度なプログラミングスキル教育を行っているルワンダ・コーディング・アカデミー(※2)を卒業したばかりのメンバで構成されています。
このように、PPIの導入によって公共調達の参入障壁が下がり、スタートアップ企業が既存企業と対等に競争できる環境が整備されつつありますが、これは、ルワンダ政府にとって、イノベーション・エコシステムの活性化という観点からも顕著な成果といえます。
※2:ルワンダ政府(教育省・財務省)と韓国国際協力団(KOICA)が共同で設立したプログラミングスクール
プロジェクトキックオフ会議でのStrettch社によるプレゼンの様子
電子ポートフォリオ管理システムのWebサイト
2024年11月1日から12月6日にかけて、ルワンダ政府の各省庁や関連機関におけるICT・デジタル担当の職員73名(男性50名、女性23名)を対象に第2期リーダーシップ開発プログラムを実施しました。昨年度の内容に交渉スキルやパブリック・スピーキングスキルの研修カリキュラムを加え、週1回、計6回の集合研修をキガリ市内にある会場で行い、職員のソフトスキル向上および職場・職位を超えたチームワークの強化を図りました。現在第3期プログラムの実施に向けた準備を進めていますが、ICTセクターにおける組織文化の改革を促すための試みとして、第1~3期プログラム受講者全員を対象に学びを振り返るオンラインセッションの実施も計画しています。
集合研修の様子
ルワンダのICTセクターでは、現在多くのイニシアティブやプロジェクトが進行しており、当プロジェクトは、それらの開発効果を最大化するために「ICTイニシアティブ統合管理能力の強化」を目指して活動しています。JICAルワンダ事務所も、2017年以来、ルワンダのICTセクターワーキンググループ(※3)の共同議長を務め、MINICTや他ドナー、当プロジェクト等と連携して情報収集や施策提言を行っています。本コラムでは、具体的にどんなイニシアティブや実施機関が存在し、どのような活動が行われているのかについて理解を深めて頂くために、いくつか主要なものについて紹介していきたいと思います。
※3:ルワンダのICTセクターにおける政府機関や開発パートナー等の関係者間で定期的に政策対話を行うための分科会
まず1つめは、ドイツ国際協力公社(GIZ)が実施中の「Digital Solutions for Sustainable Development (DSSD)」というプロジェクトになります。こちらは、デジタル技術を活用してルワンダの持続可能な開発を促進することを目的としており、政府機関、民間企業、市民に対して幅広い支援を行っているのが特徴です。特に、MINICTやRISAと連携してデジタル公共サービスの拡充を図り、先述のデジタルトランスフォーメーションセンターの設立・運営を通じてデジタル技術を活用できる環境の整備を行っている点は、当プロジェクトにも関連するところであり、密接な連携や調整が必要とされています。
2つめは、世界銀行(WB)が支援している「Revenue Improvement Action Plan (RIAP)」です。主にルワンダ政府の財政基盤の強化と持続可能な経済成長の促進を目的としており、とりわけ、電子税務システムの導入による税収管理の透明性・効率性向上や企業の税負担の適正化によって、投資環境の改善に取り組んでいる点が特筆すべきでしょう。直接的な繋がりはないものの、ICTセクターにおける起業家支援および市場の創造を目標に掲げている以上、当プロジェクトでも動向を把握しておかなくてはいけません。
3つめは、世界銀行(WB)およびアジアインフラ投資銀行(AIIB)が手掛ける「Digital Acceleration Project (DAP)」です。こちらは、RISAとルワンダ開発銀行(RDB)が実施機関で、ブロードバンドアクセス拡大、デジタル公共サービス強化、デジタルイノベーション促進を目的とした巨大プロジェクトとなります。後者2つは当プロジェクトの成果目標と重なる部分があるため、RISAの担当職員には、特に職員間での情報共有やプロジェクト間の調整能力が求められます。
4つめは、先述した「Rwanda Coding Academy (RCA)」となります。こちらは、ルワンダ政府とKOICAが共同で設立したプログラミングスクールで、高度なプログラミングスキル教育環境を提供し、ルワンダにおけるICT分野の人材育成を強化することを目的としています。RCAの卒業生が起業家となり、また将来的には次世代の起業家の指導者・支援者として活躍することが期待されるため、地方ハブとの戦略的なパートナーシップを構築していく必要があります。
この他にも、MINICTが国際労働機関(ILO)と進めている「Start and Improve your Business (SIYB)/Digitalise Your Business(DYB)研修プログラム」や、RISAと欧州連合(EU)による「Hanga Hubs project」、RISAとフランス開発庁(FDA)による「Drone Operation Center(DOC)プロジェクト」等、実に様々なレイヤーでICTイニシアティブが進行しています。
このような他ドナーおよびJICAが協力している各プログラムとの間で重複が生じないよう、本プロジェクトではICT イニシアティブ統合管理能力を強化していくべく、今後も活動を続けて参ります。
■プロジェクト情報発信 JICAプロジェクトページ
https://www.jica.go.jp/oda/project/202005081/index.html
JICAルワンダ事務所 X(Twitter)アカウント
@JicainRwanda
■お問い合わせ
E-mail: sshonai.jica@gmail.com
デジタルイノベーション促進プロジェクト 広報(担当:庄内)
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