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- JICAの若手職員が奮闘! SNSで多様な人材をつなぎ新しい価値を生み出す
JICAが長年培ってきた途上国との人脈をデジタルの力でさらに強化する取り組みが進んでいる。中でもSNSを活用した人材ネットワーキングを先導するのはJICAの若手職員たちだ。豊富な人材が集うデジタルを活用したJICAの人的ネットワークに、途上国でのビジネスチャンスを探る民間企業も熱い視線を注ぐ。
デジタル技術を活用した人材ネットワークづくりを進めるJICAの若手職員。右から、ガバナンス・平和構築部STI・DX室の吉田将さん、アフリカ部計画・TICAD推進課の池和田沙子さんと佐藤航平さん
68万7000人に上るJICA研修員との関係を生かす
「JICAがこれまで途上国から受け入れてきた研修員は、約68万7000人を数えます。その中には行政官や技術者、途上国の国づくりを担う若手人材もいます。そのつながりを生かさないのはもったいないです」
そう語るのは、ガバナンス・平和構築部STI・DX室の吉田将さんだ。SNSを活用した人材ネットワークの推進を担う。これまでJICAの研修員は、日本で専門的な技術を学んだ後、帰国してしまうと関係が切れてしまうことも多かったという。それぞれの国で要職に就いている元研修員もいる。そのつながりをデジタルの力でもっと活用できれば、JICAの事業において、また新しい価値や共創が生まれるかもしれない。
そうして、JICAは、2020年からSNSの中でもLinkedInを使ったネットワーキングを開始した。「LinkedInは実名投稿であり、投稿者のキャリアも明記され、どんな分野で活躍しているかもわかります。関係を継続したい人が自主的に参加し、自らの業務や経験をシェアしながら、つながりが強化される仕組みができつつあります」と吉田さんは述べる。一方通行ではなく双方向で、「顔の見える関係」の維持が期待できる。
さらに、JICAは研修員らが専門とする分野を超えてさまざまな知見を共有できるよう、オンライン学習システムの構築も進める。デジタル技術をフルに活用して、人材ネットワークの強化や知識の共有を図っている。
民間企業のデジタルパートナーとの共創を図る「JICA DXLab」も担当するガバナンス・平和構築部STI・DX室の吉田将さん
吉田さんは、「JICAが実施する事業やJICAが有する人材ネットワークを民間企業の皆様にもっと開放し、共創の場を創ることで、もっと価値のある事業が生まれると思っています」と述べ、今後とも、民間企業が集まる場での露出を増やし、民間企業のデジタルパートナーとの共創を推進していくことに意気込みをみせる。
アフリカの将来を担う若者たちとのつながりに熱視線
現在、JICAでは分野ごとに15のLinkedInグループがあり (2023年12月現在)、研修員同士だけでなく、海外協力隊員や民間企業もグループに参加している。中でも最大なのが、参加者1000名を超える「ABEイニシアティブ」の研修員や修了生が参加する、いわゆるABEイニ生のグループだ。
ABEイニシアティブ (アフリカの若者のための産業人材育成イニシアティブ: African Business Education Initiative for Youth) は、アフリカに貢献したいという志高いアフリカの若者たちを日本に招き、修士号取得と日本企業でのインターンシップの機会などを提供するプログラム。多くの修了生が、アフリカと日本のビジネスの架け橋となり活躍している。
ABEイニシアティブのLinkedInグループの運用を担当しているのはアフリカ部計画・TICAD推進課の池和田沙子さんと佐藤航平さんだ。ABEイニ生同士のつながりだけでなく、民間企業との接点となるよう、積極的なネットワーキングを支えている。
アフリカ部計画・TICAD推進課の佐藤航平さんは、「このLinkedInグループをいかに日常的に使ってもらうかが課題」と言う
アフリカ部計画・TICAD推進課の池和田沙子さん。ABEイニ生と、アフリカで起業した海外協力隊員とのオンライン交流イベントも手掛けた
「2013年に始まったABEイニシアティブではこれまで1700名を超えるアフリカの若者を受け入れてきました。そのうち約6割がこのLinkedInグループに参加しています。今年3月からは、海外協力隊員やABEイニ生をインターンで受け入れている企業なども参加し、多様なつながりが生まれつつあります」と佐藤さんは言う。
池和田さんは、「このグループを常にアクティブな状態にできるよう、投稿をこまめにチェックしています。新しく参加したABEイニ生や企業に自己紹介を促し、関連イベントがあった際には次の日には報告を投稿するようにしています」と、積極的なネットワーキングに向け、地道な努力を続けている。今後は管理者の手を介さずに、参加者同士がお互いの投稿を通じてつながり、新たな連携事例が生まれていくことを目指す。
では、参加する民間企業は、このグループを一体どのように活用しているのだろうか。ABEイニ生をインターンとして受け入れているフランチャイズ事業を運営する株式会社アセンティア・ホールディングスの松本信彦取締役に聞いた。長期・短期のインターンだけでなく、ビジネスの相談に乗ったABEイニ生は、これまで百数十名に上る。
リアルなアフリカのニーズを吸い上げる絶好の場
「アフリカの現状も日本のことも知っているABEイニ生は、アフリカ市場でのビジネスを検討する際、とても貴重な存在です」
そう力強く語る松本氏は現在、ABEイニシアティブの修了生セルジオ・モライスさんと、彼の母国であるモザンビークで、セルフサービスのコインランドリー事業をフランチャイズ形式で展開するビジネスを手掛けている。
コインランドリー事業について協議するセルジオさん (中央) と松本氏 (左)
セルジオさんがアセンティア・ホールディングスにインターンシップを申し込んだ際、このビジネスについて相談があった。半信半疑で可能性を探る中、活用したのがABEイニシアティブのLinkedInグループだ。参加者を募り、アフリカでのコインランドリーの需要などについてオンラインでのグループインタビューも実施した。
「ナイジェリアやマダガスカル出身のABEイニ修了生からは、すぐにでもコインランドリー事業を始めたいという声も上がり、自分が思っている以上にニーズがあることがわかったのです」と松本氏は語る。
日本の企業がアフリカに進出する際、自社の製品や技術を売り込むことを目的することが多いが、そうではなく、アフリカの課題解決やニーズに自らの知見を合わせていく、という発想の転換が必要なことをABEイニ生とのつながりの中で学んだと言う。
松本氏は、ABEイニシアティブのLinkedInグループをアフリカでの事業展開に向けたツールとして活用している (松本氏の投稿より)
日本企業が開発した微生物の働きを生かした安価な植物活性剤を、フランチャイズ形式で普及させるビジネスもABEイニ修了生と共にアフリカで進めている。この事業をモーリタニアでやりたいと名乗り出たABEイニ生の声が発端だ。アフリカで大多数を占める小規模農家の農業生産性の向上という課題の解決につながる。
松本氏は、ABEイニシアティブのLinkedInグループを活用することで、ABEイニ生と手掛けるビジネスの拡大につながると同時に、自分たちが気づいていないアフリカの課題やニーズを察知し、把握することができると語る。「自らの力で国を造っていこうという若者たちに出会うと応援しようという気持ちになります」と、ABEイニ生と共に進めるアセンティア・ホールディングスのアフリカでの挑戦はこれからも続く。
2019年に横浜で開催されたTICAD7 (第7回アフリカ開発会議) では、ABEイニ生のインターンと共に、アフリカでのフライチャイズ・ビジネスの可能性を紹介した。前列左端が松本氏
ABEイニシアティブのLinkedInグループへのお問い合わせはこちら
abe2@jica.go.jp
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