北岡理事長が就任後初の海外出張でエチオピア、ケニアを訪問:2016年のTICAD VIケニア開催に向けて、更なるパートナーシップ強化を表明

2015年12月4日

北岡伸一JICA理事長は、就任後初めての海外出張として、11月25日から12月1日にかけてエチオピア、ケニアの2か国を訪問しました。

エチオピアはアフリカ連合委員会(African Union Commission: AUC)本部が所在する国でもあり、近年著しい経済成長を遂げています。また、ケニアは来年のTICAD VI開催国に決定しています。

両国滞在中、北岡理事長は、ドラミニ・ズマAUC委員長、ハイレマリアム・デサレン・エチオピア首相、ウィリアム・アラップ・ルト・ケニア副大統領など要人との面談を行うとともに、両国でJICA事業を視察しました。今回の訪問により、アフリカの指導者たちからの日本への期待と信頼を改めて確認するとともに、アフリカへの協力にあたっては、開発協力大綱、持続可能な開発目標(SDGs)、AUがアフリカの長期ビジョンとして策定するアジェンダ2063などを統合させて事業を実施していくこと、その際にはオーナーシップとパートナーシップの相互信頼の関係性に基づいて対話を重視しながら進めていくことが重要であり、経済成長を促すととともに、さらには成長の恩恵から取り残されないよう最も弱い人に配慮した支援が必要との見解を示しました。

1.エチオピア訪問

北岡理事長は、11月26日(木)に、ズマAUC委員長と面談を行い、アフリカの経済社会発展のための人材育成、産業開発、貿易などについて意見交換しました。

また、先立つ11月25日(水)には、ハイレマリアム首相と面談を行いました。ハイレマリアム首相からはこれまでのJICAからの多岐にわたる協力への評価と日本への信頼感が示されるとともに、特に産業政策対話、カイゼン運動、地熱開発について強い期待感が表明されました。北岡理事長からは、日本とエチオピアは多くの共通点があり、引き続き日本の経験を生かした協力により、エチオピアの経済社会発展に貢献していきたいと述べました。

【画像】

写真左:AUCズマ委員長(中央)を鈴木大使(右から3番目)とともに表敬訪問する北岡理事長とAU本部でカイゼンを指導する日本人チーム 写真右:北岡理事長(左)とエチオピア国ハイレマリアム首相

カイゼンを実施している靴製造メーカーでゲタフン・エチオピア・カイゼン機構理事長より説明を受ける北岡理事長

北岡理事長は、エチオピア滞在中JICA事業現場の視察を行いました。「カイゼン実施促進能力向上プロジェクト」(技術協力)の実施機関であるエチオピアカイゼン機構を訪問し、2015年度JICA理事長賞を授与するとともに、カイゼン運動がエチオピアのみならずアフリカのモデルとなることへの期待を表明しました。また、カイゼン運動を実践している企業である靴製造メーカーを訪問し、エチオピアにおけるカイゼン運動の定着ぶりを確認しました。「デジタル地図データ作成能力強化プロジェクト」では、日本人専門家がエチオピア人カウンターパートに対して地図作成技術を移転する現場を視察し、同分野に対する技術協力の有用性、重要性を確認しました。また、アディスアベバ市内小学校において、小学2年生への情操教育を担当する青年海外協力隊員が、流暢な現地語をもちいてエチオピア人同僚教諭とともに活き活きと活動している授業を見学しました。

2.ケニア訪問

北岡理事長(左)とケニア国ルト副大統領

北岡理事長は、11月30日(月)に、ルト副大統領と面談を行いました。北岡理事長は前日にモンバサ港を視察したことに触れ、日本は1970年代にモンバサ国際空港の建設を支援して以来、同地域の重要性に着目していることに言及しました。そして、同港が東アフリカ地域のゲートウェイとなることから、ケニアのみならず周辺国にも意義のある包括的な開発が行われるよう、JICAとしてもケニア側関係者ともよく対話して最適な方策を共に考え、環境社会配慮も含めきめ細かな協力を実施していきたいと述べました。ルト副大統領からは、ケニア政府は、モンバサをはじめとするインフラ開発に加え、オルカリア地熱発電等エネルギー分野、農業、教育、保健等での日本の継続的な支援に大変感謝しており、両国間の強固な関係をさらに深めていきたいとの期待と、来年のTICAD VIを必ず成功させたいとの決意が表明されました。

船からコンテナを積み下ろしする日本製のガントリークレーンを導入したモンバサ港コンテナターミナルを視察。

モンバサ港の訪問では、円借款による支援を通じて間もなく完成予定の新コンテナターミナルについてケニア港湾公社や日本人関係者から説明を受けながら、日本の技術である軟弱地盤での埋立工法採用により建設されたコンテナバースや、環境に配慮したハイブリットエンジンを搭載する日本製ガントリークレーンなどを視察しました。また、事業を通じ、建設工事に従事するケニア人の能力や技能が向上したとの説明を受け、北岡理事長は、本取り組みが日本らしい協力であるとして、今後予定されている港湾拡張事業においても、真に現地に役に立つ開発協力を行っていくべきであると述べました。

ケニア訪問最終日にあたる12月1日(火)には、ジョモ・ケニヤッタ農工大学(JKUAT)を訪問しました。JKUATは、日本が1970年代から無償資金協力、技術協力を行い、現在ではケニアにおいて実学を伴う高等教育機関として確固たる地位を築き、多くの入学希望者を得るようになった国立大学です。さらに、アフリカ連合(AU)が展開する汎アフリカ大学の一つとして、科学技術・イノベーションをテーマとした大学院課程を設置するなど、アフリカ全体の教育の向上にも貢献しています。北岡理事長は、大学や高等教育機関の役割の重要性を強調し、人材育成は息の長い取り組みであるが、JKUATは、長年の協力を経て自立し、最近では日本の民間企業との共同事業を手掛けるなど日本との協力関係が確実に成果を出している好事例であると述べました。