北岡理事長がネパール、ブータンを訪問:両国政府要人と会談、JICA事業の現場やネパール大地震の被災地を視察

2015年12月28日

北岡伸一JICA理事長は、12月20日から26日にかけて、ネパールとブータンを訪問しました。

1.ネパール訪問

2015年4月25日に発生したネパール大地震から8か月が経ちました。同年9月、ネパールでは新憲法が公布されましたが、それに伴う政治的混乱の影響でインドとの国境が封鎖状態になり、燃料や資材が不足する中で、震災復興が進められています。今回、同国を訪問した北岡理事長は、カドガ・プラサード・シャルマ・オリ首相を初めとする要人との会談や日本が支援を表明した「緊急学校復興事業」、「緊急住宅復興事業」の円借款契約の調印に立ち合うとともに、震災被害や復興状況の視察を行いました。

【オリ首相を初めとする要人との会談】

北岡理事長(左)とオリ首相(Laxmi Prasad Ngakhusi撮影)

12月21日にはオリ首相との会談を行いました。同首相からは、来年が日本・ネパール国交樹立60周年にあたることに触れつつ、今後も両国の協力関係を深めていきたいとの意向が示されました。北岡理事長は、震災の犠牲者に哀悼の意を表するとともに、燃料不足を含め種々の難題に直面し、ネパール政府として難しいかじ取りを迫られている状況に理解を示した上で、JICAとして最大限のサポートをしていきたいと述べました。そのほか、ヴィシュヌ・プラサド・ポウデル財務大臣、ビジャヤ・クマール・ガチャダール副首相兼インフラ運輸大臣、国家開発計画委員会のユバ・ラジ・カティワダ副議長との協議を行い、「より良い復興(Build Back Better)」の実現のために、首都カトマンズの強靭化、地方郡復旧・復興計画の策定、公共施設やインフラの復興等を早期に実現していくことの重要性を確認しました。

また、同日21日に、6月25日の支援国会合で日本が支援を表明した「緊急学校復興事業」、「緊急住宅復興事業」の2件の円借款契約が調印されました。

【被災地の視察】

住宅建設の技術を学ぶ大工研修の様子(Laxmi Prasad Ngakhusi撮影)

12月20日には大きな被害のあったバクタプール王宮や、震災後いち早く修復されたカトマンズ−バクタプール間道路(KB道路)の視察を行いました。KB道路は4月の地震で亀裂や段差が発生したため、7月よりJICAの協力で応急復旧対策を実施し、9月に完工しました。

また、12月22日には、今回の地震の被害が最も大きかった地域の一つであるシンドパルチョーク郡チョータラを訪問し、女性や子供への社会サービス拡充を目的とした訓練施設の建設予定地、同地震でもっとも被害の大きかった住宅の被害状況のほか、今後住宅を再建していく上で鍵となる大工向けの研修現場を視察しました。

2.ブータン訪問

日本とブータンは2016年に国交締結30周年を迎えます。今回、北岡理事長は、ジグミ・シンゲ・ワンチュク前国王陛下(第4代国王)、ジグミ・ケサル・ナムギャル・ワンチュク国王陛下(第5代国王)に謁見するとともに、ツェリン・トブゲイ首相ほか政府要人と会談しました。また、農業機械化センター等のJICA事業の視察を行いました。

【国王陛下を初めとする要人との対談】

ジグミ・ケサル国王陛下(左)と北岡理事長

12月23日のジグミ・シンゲ前国王陛下への謁見においては、無償資金協力による耕耘機供与をはじめとする長年の日本の協力が成功していることに対し、陛下から高い評価と感謝が示されました。ジグミ・ケサル国王陛下(第5代国王)への謁見(23日)においては、陛下より、日本の協力、とりわけボランティア派遣や橋梁建設に対する謝意とともに、ブータンは日本の支援を効果的に活かしており、国際協力のモデルとして国際社会に紹介できるものとの見解が述べられました。ツェリン・トブゲイ首相との会談では、同首相から、特に農業分野を中心にしたJICAからの長きにわたる協力成果に対する謝意とともに、今後の同分野への協力や道路防災分野への新たな協力についての期待が寄せられました。また、政府のガバナンスと援助効果についての意見交換を行いました。

【JICA事業現場の視察】

「西岡チョルテン」を参拝する北岡理事長

12月25日に、北岡理事長は、日本の農業協力が展開された西部の街・パロにおいて、半世紀以上にわたる日本の協力現場を視察しました。故・西岡京治JICA専門家を祀った「西岡チョルテン」(慰霊塔)参拝後、1980年代に日本の支援により整備された国立種子センターの温室、培養研究室、種子加工機材が、現在も種苗の生産・開発・普及で活用されている状況を確認しました。続いて、30年にわたり無償資金協力、技術協力、ボランティア派遣による協力を行っている農業機械化センターを訪れ、同センターが日本の支援により発展を続けていることや、その施設や機械が、農業の機械化の推進に向け現在でも効果的に活用され、その成果が広く人びとに行き渡っていることを確認しました。

青年海外協力隊員及びその教え子たち(中央左から堀内隊員と北岡理事長)

このほか、「氷河湖決壊洪水(GLOF)を含む洪水予警報能力向上プロジェクト」によって気象・洪水の予警報体制が構築されている状況や、ブータンの青少年に柔道を指導する青年海外協力隊員の活動、日本やシンガポールでの研修を通じて「交番」のコンセプトを学んだブータン警察が設置した「ブータン版交番(Community Police Center)」の様子を視察しました。