北岡理事長がイラクとヨルダンを訪問:両国政府要人との面談やJICA事業の現場・難民キャンプの視察を通じ、中東地域の安定における両国の重要性を再確認

2016年2月2日

北岡伸一JICA理事長は、1月25日から29日にかけて、就任後初めての中東地域の訪問として、イラクとヨルダンを訪問しました。

1.イラク訪問:政府要人と面談し、困難に立ち向かうイラクの努力への支援継続を表明。

北岡理事長は、1月25日から27日にかけて、イラクを訪問しました。滞在中は、ハイダル・アル・アバーディー首相をはじめとする要人との面談を行いました。

イラクは、長期化する治安情勢の悪化やそれに伴う国内避難民への対応、経済を支える石油の価格低迷等、多くの困難に見舞われています。今回、同国を訪問した北岡理事長は、一連の要人との面談を通じて、復興と安定に向けた同国の努力に対してJICAが支援を継続していくことを表明しました。

1月27日、北岡理事長は、アバーディー首相との面談において、イラクが様々な困難に直面しながらも復興と安定に向けて努力を続けていることに敬意を表すると共に、JICAは今後ともインフラ整備や人材育成を中心に協力を継続する方針であると述べました。またアバーディー首相からは、イスラム過激派の伸長に伴うテロとの闘い及び石油価格下落の2つの外的ショックに対応するため、財政支援を含むJICAからの支援に対する期待が述べられました。

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北岡理事長(左)とアバーディ—首相

そのほか、北岡理事長は、フアード・マアスーム大統領、サリーム・アル・ジュブーリー国会議長、イブラヒーム・アル・ジャアファリー外務大臣、ホーシャヤール・ズィーバーリー財務大臣、サルマン・アリ・ハサン・アル・ジュマイリ計画大臣らと面談し、不安定な地域情勢の中で公共サービスを改善することがイラクの一体性の保持に資すること、実施中の協力事業の着実な進捗を図ること、などを確認しました。北岡理事長は、各国外交団や国連関係者とも面談して、国際的なイラク支援の方針について意見を交換しました。

また、北岡理事長は、JICAの研修員受入事業の同窓会メンバーと意見交換を行いました。イラクでは、様々な制約の下、研修参加者が終了後に定期的に勉強会を開催する等、同窓会活動が活発です。2015年12月には、研修員同窓会が主催団体の一つとなって、イラクのバスラにおいて日本・イラクの学術交流シンポジウムが開催されました。北岡理事長は、イラクのJICA研修参加者が日本・イラクの継続的な友好関係の核となることへの期待を表明しました。

2.ヨルダン訪問:難民受入国のヨルダンが中東地域の安定のために果たす役割の重要性を確認。

北岡理事長は、1月27日から29日にかけてヨルダンを訪問しました。アブドッラー2世ビン・アル=フセイン国王への謁見をはじめ、政府要人との面談や、JICA事業の視察等を行いました。

北岡理事長(中央)とアブドッラー国王

1月28日、北岡理事長は、首都アンマンでアブドッラー国王に謁見しました。北岡理事長は、パレスチナ、イラク、シリア等に囲まれたヨルダンが、中東地域の安定のために果たす役割の重要性に触れ、JICAによるヨルダンへの協力について意見交換を行いました。JICAは、人口の1割以上に相当するシリア難民を受け入れているヨルダン政府とホストコミュニティの負担軽減のために、開発政策借款や上水道分野の無償資金協力を実施しているほか、難民障害者の支援や青年海外協力隊の派遣を通じ、草の根レベルまで引き続き包括的な協力を展開しています。

北岡理事長は、様々な分野の協力を通じて、ヨルダンと日本との友好関係を継続して行きたい旨、表明しました。これに対し、アブドッラー国王からは、これまでの日本およびJICAからの支援に対する謝意と共に、中東地域における日本の存在感の発揮に対する期待が示されました。

パレスチナ難民キャンプ女性宅訪問(香水作りを実演する女性)

また、北岡理事長は、ヨルダン国内のパレスチナ難民キャンプ(バカア)を訪問しました。ヨルダンでは、第一次(1948年)、第三次(1967年)中東戦争を契機にパレスチナ難民キャンプが形成され、現在も国内10ヶ所(注)の難民キャンプ内に37万人以上のパレスチナ難民が居住しています。北岡理事長は、難民キャンプ内でJICAが実施する難民女性の生計向上を目指すプロジェクトを視察し、家庭内で作った香水販売で収入向上を実現している女性宅を訪問しました。難民キャンプで作られた香水のうち、品質の高いものは販路を海外にも伸ばしており、難民キャンプでの女性の生計を助けています。

1月29日には、シリア難民キャンプで活動する青年海外協力隊3名と面会しました。難民キャンプという閉鎖的な環境により心身共にストレスを抱えたシリア難民の子供たちに対して、隊員たちは図工や音楽、遊び、学習、スポーツ等の活動を行い、心を開いて楽しめる時間を提供しつつ、こうした活動を通じて協調性やルールを守ることの大切さを伝えています。北岡理事長は、難民キャンプで生活するシリア難民の現状や、キャンプ内で精力的に飛び回る青年海外協力隊の活動状況を確認しました。

(注)UNRWA(国連パレスチナ難民救済事業機関)が認定しているキャンプが10か所、その他にヨルダン政府認定のキャンプが3か所