北岡理事長が「東京サステナブル会議」に登壇:SDGsはビジネスチャンス、日本の企業に開拓進取を呼びかけ

2016年7月19日

会場の様子

北岡伸一JICA理事長は、2016年6月29日、日経BP社主催の東京サステナブル会議に登壇し、基調講演を行いました。同会議では、COP21 で合意されたパリ協定と国連の2030アジェンダで掲げられた「持続可能な開発目標(SDGs)」の目指すサステナブルな社会の実現に向けて、日本企業はどのように貢献できるのかについて活発な議論が行われ、冒頭に行われた北岡理事長の講演には、企業等からの参加者400名以上が熱心に耳を傾けました。

多くの事例を紹介、開発途上国に眠るビジネスチャンスを掴んでほしい

講演を行う北岡理事長

北岡理事長は、講演のなかでミレニアム開発目標(MDGs)で達成したゴールもあるが、達成度に地域差があり、同一国内での格差も拡大している、SDGsで掲げられている17ゴール(注1)の中でも、特に貧困や健康、教育、女性の就学の機会等が依然として主要な課題であり、JICAも重視していると発言しました。また、SDGs達成のためには、政府に加え、企業、市民、研究機関等との連携が必要であり、特に日本企業の持つ技術がSDGs達成に果たす役割は大きいと強調しました。そして、JICAと日本企業の連携の具体例として以下を紹介し、日本の技術はSDGsの達成に貢献でき、また企業にとって新たなチャンスになっていると述べました。

・健康分野として、従来からの課題である栄養改善としてガーナにおける栄養食品(味の素)やザンビアでの食用藻の普及(アライアンス・フォーラム財団)、また既に生活習慣病に起因する脳卒中などが見られるアジアの事例としてカンボジアの救急医療センター(日揮、産業革新機構、Kitahara Medical Strategies International)

・量だけでなく質の高い教育のニーズも高まっているバングラデシュでの公文式の導入

・「持続可能な都市」を実現するための大規模インフラ(地下鉄、車両、沿線開発)整備、きめ細かな配慮のある開発(インドのデリーメトロ事業、フィリピン・マニラでの電動トライシクル(注2)、都市のごみ処理に貢献するインド3R推進)

さらに、開発途上国で想像以上にイノベーションが進んでいる状況に着目し、逆にそういったノウハウが日本の課題解決にもつながる可能性がある点も指摘し、SDGsへの貢献が日本にも役に立つビジネスチャンスとなるだろう、とまとめました。

注1:2015年9月に国連で採択された。貧困削減、気候変動など。詳細は関連リンク参照。
注2:リチウムイオン電池を燃料とした環境負荷の少ない三輪自動車。JICA中小企業海外展開支援事業のひとつで、渦潮電機が実施中。

企業からSDGs貢献に取り組む 

続けて、国際航業代表取締役会長の呉文繍氏が「CSRのみならず本業を通じた企業の貢献をすべく、企業理念や事業方針の中心に社会課題の解決を捉える必要がある」と講演。企業講演では、日産自動車、エイピーピー・ジャパン、富士通、ソニーの4社それぞれが、持続可能な社会への貢献に関する自社の取り組みを発表しました。それぞれ、新しい製品、ビジネスモデルをSDGsと連携づけて紹介し、基準づくりなども政府の指示を待つだけでなく、民間企業から発言していく、といった力強い言葉も聞かれました。パネルディスカッションでは、「長期ビジョンの作り方、使い方」をテーマに、社員の巻き込みを含むビジョン策定のプロセスについて議論し、SDGsはチャンスであるとの意見が多く聞かれました。