北岡理事長がタジキスタン、キルギスをJICA理事長として初訪問:日本の協力の成果と重要性を再確認

2018年7月4日

ラフモン大統領(右)と会談する北岡理事長

北岡伸一理事長は、6月23日から30日にかけてタジキスタン、キルギスを初訪問。各国の政府要人と会談し、ODA事業の現場の視察を行いました。 

最初の訪問地であるタジキスタンは、アジアと欧州、ロシアと中東の結節点にあたる地政学的に重要な地域に位置しています。旧ソ連からの独立後、1997年まで内戦が続きましたが、その後は治安と社会の安定を回復し、着実に復興から経済成長への道を歩み続けてきています(注1)。一方で引き続き旧ソ連諸国の最貧国の一つであることから、老朽化が進む旧ソ連時代の社会インフラ改善や国内産業の育成、雇用促進のためのビジネス環境整備が一層必要とされています。

北岡理事長は、6月25日、コヒル・ラスルゾーダ首相と会談した後、無償資金協力「ドゥシャンベ国際空港整備計画」の竣工式に出席しました。続いて、北部ソグド州を訪問し、内戦後の和平協定締結を記念する「国民統合の日」記念式典に来賓として招待され、エマムアリ・ラフモン大統領と会談を行いました。各要人からは、復興に向けたインフラ整備や国造りのための人材育成をはじめ様々な分野での日本の協力への感謝と、今後の継続的な支援に対する期待が示されました。北岡理事長は、人材育成の重要性への認識を共有しつつ、同国の国家開発戦略の実現に貢献するため、今後も経済社会インフラ等の整備を通じた持続可能な発展に向けた支援を継続すると共に、観光開発や雇用創出に繋がる民間セクターへの協力も検討していきたい旨を表明しました。また北岡理事長は、ウズベキスタンとタジキスタンの間の関係改善を歓迎し、JICAも引き続き中央アジア諸国の地域内連携にも繋がる実践的な協力を進めていくと述べました。

パンジ郡の給水プロジェクトの近隣住民から説明を聞く北岡理事長

翌26日、北岡理事長は南部ハトロン州を訪問し、無償資金協力により建設され、給水管理体制構築の好事例として2017年度JICA理事長賞にも選ばれたパンジ郡(旧ピャンジ行政郡)の給水システムの整備状況や、タジキスタンの首都ドゥシャンベとアフガニスタンを南北に繋ぐ国際幹線道路(ボフタル(旧クルガンチュベ)-ドゥスティ間道路)を視察し、物流の基盤や地域住民の安全な水へのアクセスが改善されていることを確認しました。

また、UNDPとの連携により、タジキスタンとアフガニスタンの両国にまたがる国境地帯で、女性の職業訓練や生計向上に向けた支援を行っている「タジキスタン-アフガニスタン国境地域生活改善計画(LITACA)」の現場も視察し、訓練中の女性たちを激励しました。

次に訪問したキルギスは、タジキスタンと同様に旧ソ連諸国の最貧国の一つですが、中央アジア地域においていち早く民主化と経済自由化を進めてきており、2015年にはユーラシア経済同盟(EEU)(注2)にも加盟しています。JICAは、タジキスタン同様、産業多角化、雇用創出や社会インフラの老朽化等の課題に向けて農業やビジネスの振興、運輸インフラ整備を中心に協力しています。

一村一品ブランド商品生産者の説明を聞く北岡理事長

6月28日、北岡理事長はキルギス東部のイシククリ湖周辺地域を訪問し、現地で実施中の一村一品プロジェクトが地方の女性の雇用促進につながっている様子を視察し、一村一品ブランドを商品生産する女性たちと懇談しました。生産者が得た収入は、子供の教育費、自分の衣服等の購入等に使われており、生産者の女性の意識改革を含め、女性の生計向上や経済的自立に貢献する重要な事業であることを確認しました。また、世界文化遺産であるアクベシム遺跡を視察し、観光開発を検討しているキルギス政府関係者と意見交換を行いました。同地が近隣の遺跡と合わせた観光ルートの一部として、高いポテンシャルがあることを確認しました。

ジェエンベコフ大統領と会談する北岡理事長

翌29日、北岡理事長は、首都ビシュケクで、無償資金協力「人材育成奨学計画」の贈与契約の署名式、無償資金協力「マナス国際空港機材整備計画」の機材供与式に出席するとともに、ソオロンバイ・ジェエンベコフ大統領やムハムメッドカリィ・アブィルガジエフ首相と会談しました。北岡理事長は、キルギスの地方開発、民間産業育成、人材開発に資する協力を継続すると共に、経済成長に伴う格差是正に資するべく、保健セクターの協力についても今後検討していく旨を述べました。特に人材開発に関連して新たな「JICA開発大学院連携」構想も紹介しました。各要人からは、独立後間もない時期からこれまでのJICAによる質の高い協力、特に人材育成に対する協力への謝意とともに、キルギスとの支援強化への期待が表明されました。また同日、北岡理事長はビシュケク市内において政府中枢で働く「人材育成奨学計画」の帰国留学生と懇談し、キルギスでの同事業が世界的にも優良事例である旨言及し、帰国留学生達の活躍を高く称えました。

今回訪問した2カ国は、中央アジア地域の安定と連結性の強化にとって極めて重要な位置を占めています。JICAは、今回の理事長訪問を契機に、今後もタジキスタン、キルギス両国の安定と関係強化に一層貢献していきます。

(注1)和平直後の不安定な治安情勢が続く中、国連タジキスタン監視団の秋野豊国連政務官ら4名が殺害されてから今年7月で20年になる。
(注2)ロシア、カザフスタン、ベラルーシ、アルメニア、キルギスの5か国が加盟する経済同盟。