北岡理事長がザンビア、マラウイを訪問:政府要人との会談やODA事業現場の視察を通じ、日本の協力の成果と各国との信頼関係の重要性を再確認

2018年9月4日

北岡伸一JICA理事長は、8月23日から8月27日にかけて、ザンビア、マラウイを訪れ、各国の政府要人との会談やODA事業の現場視察を行いました。

最初の訪問地であるザンビアは、1964年の独立以降、内戦やクーデターによる政権交代を一度も経験しておらず、サブサハラ・アフリカ地域において民主主義が定着している国と評価されています。他方、銅やコバルトなどの鉱物資源に恵まれている反面、他の輸出産業の育成が遅れており、鉱業に依存した経済構造からの脱却が主要な課題となっています。

チレンジェ第一次レベル病院の視察(緊急外来):右から院長代理、保健省事務次官、北岡理事長

北岡理事長は8月23日、首都ルサカにおいて、日本の無償資金協力により整備されたチレンジェ第一次レベル病院(2016年7月に完工)、及び関西ペイント株式会社の現地法人(Kansai Plascon)の工場を訪問しました。北岡理事長は同病院の整備が、地域住民の医療サービスへのアクセス向上に大きな役割を果たしていることを確認しました。また、関西ペイントでは、JICAの民間技術普及促進事業を通じて感染症対策塗料を普及することにより、マラリア等の感染症の予防につながることが期待されており、現地の人々の生活を変える高いポテンシャルがあることを確認しました。

北岡理事長は同日、マーガレット・ムワナカトウェ財務大臣と会談。ザンビアが天然資源への依存から脱却し、農業を含む産業の多角的開発や、保健や教育といった社会サービスの充実に注力していることを支持する旨発言しました。同財務大臣からは、債務管理を含めたマクロ経済の動向についての説明のほか、JICAからの引き続きの支援に対する期待が表明されました。 

大統領との面談:右からルング大統領、北岡理事長、花井ザンビア事務所長

翌24日には、エドガー・ルング大統領と会談し、ザンビアの長期に亘る政治的安定に敬意を表するとともに、対等な立場での対話や人間の安全保障の重視というJICAの開発協力のアプローチの特徴を紹介し、保健や教育、農業セクターなどに協力していきたい旨を述べました。大統領からはJICAの協力に対する謝意とともに、ザンビアの更なる発展に向けた支援への期待が表明されました。

その後、教育省傘下の国立科学センター、および1980年代以降継続して日本が協力しているザンビア大学獣医学部を訪問しました。前者はアフリカ全体の理数科教育の拠点として、後者は南部アフリカ域内のエボラ出血熱等の人獣共通感染症対策研究拠点としての役割を担い、その効果を域内で発揮しており、北岡理事長は両機関の一層の発展の重要性を確認しました。

北岡理事長による物故隊員慰霊碑への献花

次に、北岡理事長は、JICAの歴代理事長としては初めてとなるマラウイを訪問。マラウイは、一人当たりのGNIが320ドルと、世界の最貧国の一つです。開発から誰も取り残されず、マラウイが平和で安定的な成長を続けていくために、JICAはマラウイ政府の取り組みに協力しています。

26日、北岡理事長は首都リロングウェ市内の青年海外協力隊の隊員連絡所に設置されている慰霊碑に献花を行いました。マラウイには1971年から累計1,853名の青年海外協力隊員が派遣され、世界一の派遣人数ですが、任期中に亡くなった隊員も12名に上り、JICAマラウイ事務所では慰霊会を継続しています。交通事情・医療事情が悪いマラウイにおいて、今後も関係者の安全を最優先に事業展開する必要性を改めて確認しました。

財務・経済計画・開発大臣との面談。右からゴンドウェ大臣、北岡理事長

翌27日、エドワード・ゴンドウェ財務・経済計画・開発大臣と会談しました。会談で北岡理事長は、1971年の青年海外協力隊の派遣に始まる日本の協力の歴史と成果に触れるとともに、帰国した隊員などがマラウイとの繋がりを維持していることが、両国の友好と信頼構築の基礎となっていることを共有しました。また、国全体の1割程度に留まる電化率や電力不足の改善のための協力や、農業分野における灌漑開発の重要性について意見交換を行いました。

また、ブライト・ムサカ教育・科学技術大臣及び日本からの帰国留学生等との懇談を行い、教育の質の向上のため、現場の教員の育成と能力強化が重要であることについて認識を共有しました。

カムズ国際空港で日本が支援した航空管制システムを視察する北岡理事長

最後に、マラウイの重要な玄関口であるカムズ国際空港を訪問しました。JICAは1980年代の開港から現在に至るまで、無償資金協力や技術協力を通じて空港全体の安全性や利便性の向上、及び航空管制官育成の支援を行っており、内陸国マラウイの貿易促進のために同空港が果たす役割の重要性を改めて確認しました。

2019年8月末には日本でTICAD7が開催され、アフリカにおける質の高い成長に向けた取り組みについて議論される予定です。JICAは、今回の理事長訪問を契機に、今後もザンビア、マラウイ両国の経済発展と関係強化に一層貢献していきます。