北岡理事長が「持続可能な観光」国際シンポジウム2019に登壇(奈良県)

2019年2月4日

2019年2月4日、北岡伸一JICA理事長は、観光庁、奈良県が主催する「持続可能な観光」国際シンポジウムにおいて基調講演を行いました。

本シンポジウムは、国連が2017年を「持続可能な観光国際年」に定めたことを踏まえ、「持続可能な開発目標(SDGs)」達成のために観光が果たす役割やその重要性についての理解を促進するため、持続可能な観光に関する国内外の先進事例を共有・発信することを目的として開催されました。

同シンポジウムは2日間かけて開催され、初日には開会式と3つの基調講演、2日目には、国内外の関係者によるパネルディスカッションが行われました。

開会式では、高科淳観光庁審議官、荒井正吾奈良県知事、本保芳明国連世界観光機関(UNWTO)駐日事務所代表が登壇し、それぞれの立場から本シンポジウムのテーマである「地域に根差した産業を観光素材として活用した未来の観光」について、意見が述べられました。

基調講演では、サンドラ・カルバオUNWTO市場動向・競争力部長は、観光はSDGsの17ゴールすべてに貢献する効果的なツールであり、貢献度を向上させるためには、グローバルな共創の場を構築することが重要であると述べられました。また、観光によるネガティブなインパクトを最小限にする努力を継続して実施していくことが、持続可能な観光の発展に欠かせないことが強調されました。

伊藤忠道奈良県立大学副理事長/学長は、奈良は全国有数の観光地でありながら、価値ある観光資源を十分活用できていないと言及。持続可能な観光の実現には、観光をつうじた「地域づくり」という視点が肝要であり、地域に立地する大学として、観光地域づくりに貢献する人材の育成を目標としていることが述べられました。

続いて登壇した北岡理事長は、観光産業は世界のGDPの10.4%を占め、世界の雇用の約10人に1人が観光関連産業に就いていることなどから、世界の経済社会の持続的な発展にとって重要な分野であり、特に開発途上国では、経済成長・雇用の源泉として、近年、観光をより重視していると述べました。

JICAの協力事例の紹介をつうじて、JICAは、日本の開発経験を踏まえて、伝統的な地場産業等も貴重な観光資源であることを伝えながら観光開発協力を行っており、その際、観光資源の活用と保護を両立させ、観光による裨益を適切に地域に還元する「持続可能な観光開発」を重視していることを伝えました。
さらに、観光は女性の自立促進・地位向上、平和構築など、多様な効果をもたらすことも勘案し、SDGsにおける観光の貢献を測定可能とする指標づくりについても、現在作業を進めていると示されました。

シンポジウム2日目のパネルディスカッションでは、官・民出身のパネリストによって、地場産業を活用した持続可能な観光の在り方が議論されました。観光は、あらゆる産業とリンクするものであり、日本各地の伝統産業・技術を守るためにも、観光の振興は重要な役割を果たすことが再認識されました。

JICAは今後も引き続き、日本における観光開発の経験・知見をもとに、地方自治体、大学などの研究機関、民間企業の皆様からの協力を得ながら、また、UNWTOや他ドナーとの連携を密に取りながら、開発途上国に対する持続可能な観光開発協力を効果的に実施し、「誰一人取り残さない」明るい未来創りに貢献していきます。

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