ブラジル日系社会研修50周年記念式典におけるビデオメッセージ【於:オンライン】

皆さん、こんばんは。本日は「日系社会研修50周年記念式典」にお集まり頂き、誠にありがとうございます。
今年は、1971年にJICAの前身である海外移住事業団がブラジルで移住研修事業を開始してから50周年であり、本式典の開催を大変喜ばしく思います。

日本は、古くから人材育成を重視してきました。
ちょうど150年前、1871年には明治政府は岩倉使節団を派遣しましたが、その中に多くの留学生を連れて行きました。
西洋の知見を学んだ人材は、その後の近代化の大きな原動力となりました。

国家建設における人材育成の重視はですね、JICAの伝統となっており「国づくりは人づくり」というのがJICAのモットーになっております。
中南米への移住者に対する戦後の海外移住事業は、日本の重要な政策として移住先国での定着と生活の安定を図るための支援でしたが、現在は、日系社会を移住先国と日本との「架け橋」とするための日系人支援に取り組んでいます。
2014年、2016年には安倍元総理が中南米を歴訪され、日系社会との連携強化を強く打ち出しました。
しかし、2015年に私がJICA理事長に就任した際、中南米地域の事業はやや減少傾向にありました。
これではいけないと思い、2017年、当時外務大臣であった岸田文雄総理の下に「中南米日系社会との連携に関する有識者懇談会」を設置していただきました。
私自身も委員を務め、日系社会との連携を軸に中南米地域への協力を拡充するべきだとの提言をまとめました。
これらを踏まえ、JICAは日系社会との絆を一層深めるための協力を推進しています。
日伯関係で最も重要な要素は人材育成にあります。
中でも、2018年に創設されたサンパウロ大学の「フジタ・ニノミヤチェア」は、人材育成を通じて日伯関係をさらに深めることに貢献するでしょう。
本事業は、40年以上前にブラジルから日本に留学され、それ以来私の友人である故フジタ・エジムンド氏、ニノミヤ・マサト氏の功績を称え、後に続く人材を育てるために構想したものであります。

今回50周年を迎えた日系研修事業は、2020年度までに中南米地域15ヵ国から約5,000名の研修員を日本で受入れ、その半数以上がブラジルからの研修員です。
医療福祉、農業、IT、民間連携、継承日本語教育、伝統文化等、幅広い分野で研修を行っており、日本国民に幅広くこれらの事業へ関与することを促しています。
日系研修事業は日系社会支援の柱であり、これら帰国研修員が、日系社会の発展と母国の国造りに貢献することを期待しています。

JICA横浜にある海外移住資料館は、来年で開館20周年になります。
現在リニューアルを実施しており、4月に再開予定です。
今後は、日系社会の歴史や現在に加えて、海外移民の多文化共生への貢献に関して学べる場として、より多様な方々に訪れていただきたいと思います。
最後になりましたが、日系社会研修事業が今後も多くの方々に支えられ、帰国研修員の活躍により、今後も日伯両国が固く信頼の絆で結ばれ、世界を繋いでいくことを心より願っております。
ありがとうございました。