第187回海洋フォーラム「トンガ復興アピール」【於:オンライン】

テヴィタ・スカ・マンギシ駐日トンガ王国大使
角南篤 笹川平和財団理事長
本日ご登壇される皆様並びにセミナー参加の皆様

トンガにおける海底火山の噴火及び津波による災害からの復興をテーマとする「第187回海洋フォーラム」が開催されるにあたり、一言ご挨拶申し上げます。

まず初めに、このたびの災害によりお亡くなりになられた方、住居を失うなどの被害を受けられた方に心からお見舞いを申し上げます。

トンガは、ニュージーランドの北2,000キロメートルの南太平洋に位置する、古くからの王国です。2020年には、外交関係樹立50周年を迎えるなど、トンガと日本は長い間大変友好的な関係にあります。

また、トンガ王室は日本の皇室との関係も深く、2015年の現国王トゥポウ6世の戴冠式には、当時皇太子殿下及び皇太子妃殿下であらせられた天皇皇后両陛下がご参列されました。
2006年まで40年にわたり国王を務められたトゥポウ4世は親日家として知られ、トンガの学校教育におけるそろばんや日本語の導入、スポーツ交流の基礎を築かれました。トンガは、日本ではラグビー選手の出身地としても有名ですが、このきっかけは、トゥポウ4世からの依頼による「そろばん留学生」にあると聞いています。初期の留学生の一人が、のちにラグビー日本代表として活躍するラトゥー選手です。この後、ご登壇予定とお聞きしています。ラトゥー選手の後にも、多くのトンガ人ラグビー選手が、日本の大学や企業、そして日本代表として活躍されています。

日本の政府開発援助の実施機関であるJICAは、これまで長年にわたりトンガへの開発協力を実施してきました。特に、1973年に開始された青年海外協力隊は、これまでに500名以上が派遣されています。隊員たちは、小学校の正規科目となっているそろばんや、高校の選択科目となっている日本語の指導はもちろん、栄養・生活改善、スポーツ、芸術、水産分野などでも幅広く活躍しています。まさにトンガにおける日本の顔として、トンガ国内でもよく知られる存在となっています。災害後には、小説家の湊かなえさんや、同じ時期に派遣されていた仲間と共にトンガの絵本を製作し、現在はJICA熊本デスクの尾上香織さんのように、トンガの友人を思って日本で支援活動に取り組んでいる元隊員の方々もいます。

また、JICAは、離島間における連絡船の整備、幹線道路、護岸のほか、バイオラ病院や、国際空港、国内船用の埠頭、太陽光発電所、風力発電所などの整備に協力しております。また、今回の災害発生時にはまだ準備中でしたが、防災のための早期警報システムの整備も現在進めています。

今回の火山噴火と、それに伴う津波による災害では、住居をすべて流され、全島避難を余儀なくされた島や、壊滅的被害を受けた島が、複数あると聞いています。また、首都を擁するトンガタプ島でも、海岸線の護岸施設、船着き場、船舶、住居などに甚大な被害が出たほか、噴火による火山灰の堆積により、電線などの公共施設、水タンクや、農作物、植物にも大きな被害が出ていると、JICAトンガ支所より報告を受け、心を痛めております。

さらに、復旧活動の最中に、これまで厳格な入国規制によりコロナウイルスの市中感染をゼロに抑えてきたトンガで、初の市中感染事例が報告されました。これにより、社会経済活動の再開に大きな影を落とすことになったのは大変残念です。

災害発生後、日本政府は直ちにJICAの緊急援助物資の供与を決定しました。自衛隊と緊密に連携することによって、自衛隊の航空機、輸送艦を使用し、水、食糧、火山灰除去用具、高圧洗浄機等を、迅速にトンガに届けることができました。

トンガが一日も早く復旧し、自由で平和で安定した国家として繁栄することは、日本にとっても極めて重要です。早期復旧に向け、JICAは環境分野やエネルギー分野等で実施中の技術協力プロジェクトを活用し、できる限りの協力をしたいと考えています。災害に強い社会を形成していくために、「より良い復興、Build Back Better」のための提言を取りまとめ、中長期の復興に向けた新たな協力の実施についても、トンガ政府と密に協議していきたいと考えています。

本日は、トンガの現地事情に詳しい専門家や関係者の皆さまの講演、議論を通じて、現在、そして未来のトンガと日本の関係について理解を深める貴重な機会だと思います。本日のフォーラムが、両国の更なる関係強化や、相互理解の促進につながる機会となることを祈念しております。

ご清聴ありがとうございました。