田中理事長がパレスチナ自治政府のアッバース大統領と会談

2012年4月18日

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握手を交わす田中理事長、アッバース大統領、緒方特別顧問(左から)

4月15日、田中明彦JICA理事長は、東京都内でマフムード・アッバース・パレスチナ自治政府大統領と会談した。

冒頭、アッバース大統領は、新理事長の就任を歓迎し、これまでJICAが行ってきた中小企業振興、農業、観光などの幅広い分野での継続的な支援に謝意を表明するとともに、田中理事長に「ぜひ、早い時期にパレスチナを訪問し、JICAによる支援の成果を見ていただきたい」と述べた。

和平を進展させるプロジェクト

パレスチナでは、日本が2006年に提案した「平和と繁栄の回廊構想(注)」に関連する事業が具体化されつつある。JICAは、それらの事業を通じてパレスチナの発展に引き続き貢献していく予定だ。アッバース大統領は、「平和と繁栄の回廊構想」について、「和平を進展させるプロジェクトの基になる非常に重要なイニシアチブであり、日本のさらなる働きかけを期待する」と述べた。また、「中東和平を取り巻く状況は常に変化しており、日本の意見は自治政府にとっても重要な意味を持っている」と続けた。

パレスチナによる国際協力構想

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「これまでと同様に継続的な支援をしていく」と語る田中理事長(左)と、アッバース大統領(右)

同席したリヤード・マーリキ外務庁長官は、今後、パレスチナ外務庁内に国際協力を行う組織を設立し、エチオピア、コンゴ民主共和国、モザンビークなど、アフリカの国々に対し、医療人材の派遣や農業の技術支援を行う構想を紹介。組織を立ち上げる際には、世界的にも豊富な開発援助の経験を有しているJICAの協力を得たいと付け加えた。田中理事長は「これまでも、援助を受けてきた国々が援助をする側に回る際、JICAは協力を行ってきており、大変素晴らしい構想だ」と評した。

会談に同席した緒方貞子JICA特別顧問が「パレスチナは緊急支援のノウハウを持っていると理解している」と述べると、マーリキ外務庁長官は「ハイチの震災の際には、キューバで活動していたパレスチナ医療班をハイチに派遣し、世界でどの国よりも早く出動した。また、パキスタンの台風被害や、リビアの革命後の混乱期においても、いち早く緊急支援を行った経験とノウハウがある。これらの支援を通じて、パレスチナの新しいイメージづくりにも貢献し、これまで世界各国から受けた支援への恩返しをしていきたい」と応じた。

選挙支援への期待

JICAは、アラブの春以後、エジプト、チュニジア、モロッコで選挙支援を実施し、国家基盤を支える公正な選挙の実施に協力している。会談の最後に、アッバース大統領は年内に予定されているパレスチナ自治政府の選挙について、JICAからの支援に期待を寄せていると述べた。

JICAは、これまでと同様、パレスチナを継続的に支援していく。

(注)イスラエル・パレスチナ間の持続的な和平には「二国家構想」の実現が重要との前提に立ち、イスラエル、ヨルダンなどの近隣諸国との協力により、持続的な経済開発を伴う健全なパレスチナ国家を樹立しようという構想。