田中理事長がカンボジア、ベトナム、ラオスの首相と会談

2012年4月25日

田中明彦JICA理事長は、4月20日、第4回日本・メコン地域諸国首脳会議(日・メコン首脳会議)のため来日した、カンボジアのフンセン首相、ベトナムのグエン・タン・ズン首相、ラオスのトンシン・タンマヴォン首相と相次いで会談した。

ASEAN議長国としてのカンボジアに期待

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「東日本大震災後も、日本の支援はこれまでの規模が維持されており、感謝している」と述べるフンセン首相(右)

会談の冒頭、フンセン首相は、今年が日本のカンボジア支援再開20周年であることに触れ、「日本は、カンボジアに対する無償資金協力の最大のドナーであり、最近では有償資金協力も本格的に始まりつつある。東日本大震災後も、無償資金協力の規模が維持されており、感謝している」と述べた。

これに対し、田中理事長は、東日本大震災に対するカンボジアの支援に感謝の意を表明。また、2012年のASEAN議長国としてのカンボジアの役割に期待を表し、「日本企業の進出が進む中、JICAは、経済インフラや投資環境の整備のほか、上下水道をはじめとする社会インフラ整備、法整備など、幅広い協力を実施している。中でも、幹線道路の整備については、カンボジアの発展のみならず、ASEAN全体の連結性に裨益するプロジェクトであり、それに貢献できることは日本にとっても望ましいことだ」と述べた。

JICAの経済インフラ整備支援の一つであるシハヌークビル港経済特区が、5月1日にオープンの予定。フンセン首相は、「日本企業のカンボジア進出に対する関心は非常に高いと考えている。日本企業のさらなる進出に期待する」と述べた。

また、フンセン首相は、2015年のASEAN統合に向け、一層の支援を必要としていることに触れ、先発ASEAN6ヵ国(インドネシア、シンガポール、タイ、フィリピン、ブルネイ、マレーシア)と後発ASEAN4ヵ国(カンボジア、ベトナム、ミャンマー、ラオス)とのギャップを埋める必要があると述べた。さらに、日本企業が進出先としてミャンマーとカンボジアを比較しているとの認識を示し、「企業の判断を尊重せざるを得ないが、カンボジアとしては、より一層、ハード、ソフト両面のインフラ整備と人材育成に努めたい」という考えを明らかにした。

さまざまな協力で最大限の効果を

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ズン首相(左)と握手を交わす田中理事長。ズン首相は「日本のODAをより効果的に活用したい」と述べた

続いて行われたズン首相との会談で、ズン首相は、ODAを通じたJICAの協力が社会・経済の発展に実質的に寄与してきたとした上で、昨年度は、東日本大震災からの復興に注力する中、日本がベトナムに対して、過去最高額の円借款供与を決定したことに対する感謝を述べた。

また、ベトナム政府として、今後も改革を推進し、日本のODAをより効果的に活用していきたいと考えていること、社会・経済の発展に寄与するインフラ整備が優先分野であるが、同時に貧困削減や気候変動対策に対するさらなる協力にも期待していることなどを述べた。

これに対し田中理事長は、ベトナム開発の将来性の高さに触れつつ、今後もベトナム政府とJICAが協力して良い案件を形成し、さまざまな協力スキームを有機的に組み合わせて最大限の効果を得られるよう検討していきたいと応じた。

インフラ整備とマスタープランの具現化に向けて

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「ラオスは日本の援助をいつでも受け入れる準備ができている」と述べるトンシン首相(右)

最後に行われたラオスのトンシン首相との会談で、田中理事長は、3月に円借款貸付契約が調印されたプロジェクト型円借款(注1)の再開について、「非常に喜ばしいことだ」と述べた。これに対して、トンシン首相は橋梁(きょうりょう)や発電所、空港の整備のほか、JICAが策定したビエンチャン都市開発マスタープランの具現化などに対するJICAの協力に期待を示した。

また、トンシン首相は、中長期的な貧困削減のための農業分野の重要な取り組みとして、灌漑(かんがい)整備を挙げ、「山岳部で焼き畑農業を続ける農民に対し、コメを中心とした食料増産のための農業への転換を進めたい」という考えを表明。さらに、JICAが無償資金協力で実施したワッタイ空港の拡張について、「11月にアジア欧州会合がラオスで開かれるが、各国首脳が利用する大型機が駐機できるようになる」と感謝の意を述べた。

(注1)プロジェクト型円借款には、道路、発電所、灌漑や上下水道施設の建設など、特定のプロジェクトに必要な設備、資機材、サービスの調達や、土木工事などの実施に必要な資金を融資する「プロジェクト借款」があり、円借款の大半を占める。そのほか、「開発金融借款」「セクターローン」などがある。