田中理事長がペルーのウマラ大統領と会談

2012年5月11日

田中明彦JICA理事長は、5月10日、東京都内で、ペルーのオリャンタ・ウマラ・タッソ大統領と会談した。

二つの大災害と両国の絆

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ペルーは日系人が多く、自らも日系人学校に通った経験があるウマラ大統領。日本に対する親愛の情は強い

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日本の主要な国際協力を担う機関として、できる限りの協力を行っていきたいと述べる田中理事長

冒頭、ウマラ大統領は、5月9日の野田佳彦首相との会談で、首相から、「リマ首都圏北部上下水道最適化事業(II)」「固形廃棄物処理事業」「アマソナス州地域開発事業」「エネルギー効率化インフラ支援プログラム」の4件について、円借款供与に向けた準備を進めていく旨が表明されたことを報告。「これらの案件は、ペルーの社会開発に大きく貢献するものと考えている」と感謝の意を述べた。

これに対し、田中理事長は「ペルー国民の皆さんのお役に立つ仕事をすることができ、大変光栄に思っている」と応じた。また、「昨年3月の東日本大震災後、ペルーを含め、世界各国からさまざまな支援をいただいたことに対し、国民全体が大変感謝している。JICAも日本の国際協力の一端を担う機関として、ペルーに対しできる限りの協力を行っていきたい」と述べた。

また、上述の4件の新規円借款案件について、「いずれもペルーの優先開発課題の解決につながるものであり、JICAとしても、ペルー側の実施促進を鋭意支援し、開発効果の早期発現を目指していきたい」と述べた。とりわけ、「アマソナス州地域開発事業」は、ペルー政府が政策スローガンとして掲げている「社会的包摂(Social Inclusion)」に資する案件だとした上で、「最貧困州の一つであるアマソナス州に対して、観光促進と貧困削減を組み合わせて地域開発を図る、クリエイティブかつ野心的な事業と理解している」と述べた。

その上で、現在、ユネスコの世界遺産登録に向け手続きが進められている、同州の観光資源の目玉の一つ「クエラップ遺跡」について、田中理事長は、「世界遺産登録の実現には、ペルー政府の強いイニシアチブが必要だ」とし、大統領のリーダーシップに対する期待を表明。ウマラ大統領は「クエラップ遺跡の観光価値の向上と、世界遺産の登録に向け、JICAの支援を得ながら取り組んでいきたい」と応じた。

山積する開発ニーズの解決へ

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会談の終わりに握手を交わす田中理事長(左)とウマラ大統領

また、ウマラ大統領は、山積するペルーの開発ニーズについても言及。「統計上は、貧困層の割合は順調に減少してきているが、逆に社会格差は広がっている」とし、地方・農村部や山岳地域の開発をいかに進めていくかが課題だと述べた。その解決策として、特に地方・農村部や山岳地域における交通、水、医療・保健、教育などへのアクセス改善が必要だと強調した。

これに対し、田中理事長は「いずれも、ペルーにとって極めて重要な開発課題と理解している。JICAは、『すべての人々が恩恵を受ける、ダイナミックな開発(Inclusive and Dynamic Development)』を援助の理念として掲げており、この理念は、ペルー政府の開発政策と重なる部分が大きいと考えている。これらの開発課題の解決に向け、JICAとしても可能な限り協力したいと考えている」と応じた。