田中理事長が愛知大学の開校式に出席-深まる地域との連携・協力関係-

2012年5月25日

田中明彦JICA理事長は、5月19日、JICA中部のある名古屋市中村区の「ささしまライブ24地区」(注1)に新校舎を開設した愛知大学(注2)の開校式典・祝賀会に出席した。

グローバル人材の育成と地域の発展

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開校式典であいさつをする佐藤理事長・学長

愛知大学の佐藤元彦理事長・学長は、式典の冒頭あいさつで、3月に締結した同大学とJICA中部との連携・協力に関する覚書に触れ、国際交流、国際協力に一層力を入れていく考えを示し、今後の連携の進展に対する期待を表した。

また、来賓の大村秀章愛知県知事、河村たかし名古屋市長、清家篤日本私立大学連盟会長(慶應義塾長)、中村捷二中部経済連合会副会長らは、祝辞の中で、グローバル化が進む社会で世界的に活躍できる人材の育成、大学と連携した地域社会の発展など、同大学への期待を述べた。

国際交流の拠点形成に向けて

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田中理事長は、JICAと愛知大学の連携による地域の国際化に期待を表した

クリスチャン・マセ駐日フランス大使、張立国駐名古屋中国総領事、李均東駐名古屋韓国総領事の祝辞に続き、田中理事長があいさつ。隣人として愛知大学を迎える喜びとともに、一足先の2009年に「ささしまライブ24地区」に開設したJICA中部の事業を紹介しつつ、同地区の開発コンセプトである「国際交流の拠点形成」にJICAとしても貢献していく考えを示した。

また、JICAのボランティア事業を通じて、累計4万人近い青年を開発途上国に派遣している中、愛知県は全国で5番目に多い青年海外協力隊員を送り出していること、JICA中部には世界70ヵ国以上の開発途上国から年間約500人の研修員を受け入れていることを紹介。「JICAの国際センターが身近にあることで、学生が途上国の人々と直に接する機会が増え、世界をより身近に感じてもらえるようになれば」と期待を込めた。

さらに、開発援助(二国間協力)は途上国に対して一方的に行うものではなく、両国の相互学習の場であり、援助によって途上国を元気にするとともに、日本も元気にすることを目指していく考えを示した。さらに、3月に締結した愛知大学との覚書を通じ、連携講座の実施や施設の相互利用、学生と研修員との相互交流がますます進んでいくことへの期待を示した。

地域のステークホルダーの結節点に

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覚書に署名した後、握手を交わす佐藤学長・理事長(左)と黒川恒男JICA理事

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中小企業支援やグローバル人材育成などについて意見を交換した地域有識者懇談会の第2回会合

JICAはこれまで、全国の大学とさまざまな形での連携を推進しており、中部地域における連携協定・覚書の締結は、名古屋大学との連携協定(2010年12月)に次いで愛知大学が2校目となる(注3)。

愛知大学とJICA中部との間では、これまでも連携講座の実施やセミナー・シンポジウムなどへの講師派遣、オープンキャンパスへの協力など、良好な関係が築かれてきている。3月に、「グローバル化時代における名古屋の国際化、特に『ささしまライブ24地区』における国際協力の拠点形成とそのための人材育成に寄与すること」を目的に覚書が締結されたことにより、包括的な連携・協力の深化が一層進むことが期待されている。

既に、4月にJICA中部で実施した「震災復興支援コンサート」(主催:国境なき楽団、共催:JICA中部)に同大学のサークルが参加したり、5月に開催された「グローバル人材シンポジウム」(主催:朝日新聞、特別協賛:JICA中部)のパネリストとして佐藤理事長・学長が登壇したりするなど、具体的な連携活動が着実に進展している。

また、JICA中部は、「地域の課題に向き合う国際協力」を目指し、「地域有識者懇談会」(注4)を開催し、各分野の課題について定期的に情報・意見交換の場を設けている。4月に実施した第2回会合では、「中小企業支援」「フェアトレード」「グローバル人材育成」など、六つの取り組むべき課題について意見を交換した。さらに、地域のNGOなどと共に各種事業を行ったり協議会を定期的に開催したりして、一層の連携強化に取り組んでいる。

JICA中部は、国際交流の拠点形成に向け、地域のステークホルダーの結節点としての役割を果たしていく。

(注1)旧国鉄笹島貨物駅跡地と中川運河船だまり周辺を含む地区。2005年に開催された「愛・地球博」のサテライト会場。2009年6月にJICA中部が移転、新センターを開設。「国際歓迎・交流拠点」を基本コンセプトとして開発が進む地区。
(注2)4月に開校。5学部7,000人の学生が通う。
(注3)現在、約80の大学と連携を推進。そのうち、25大学とはJICA本部、または国内機関との間で包括的連携協定・覚書を締結済み。
(注4)中部地域の課題に国際協力を通じて貢献するという観点から、地域との連携・協働を促進することを目的に2011年10月に設置。委員は、経済、行政、大学、NGO、メディアの各関係者6人に委嘱。