田中理事長がコソボのサチ首相と会談

2012年6月11日

田中明彦JICA理事長は、6月7日、東京都内で、コソボのハシム・サチ首相と会談した。2008年の独立後、同国の首相が来日するのは初めてで、今後の協力について意見を交換した。

復旧、復興から二国間協力へ

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今後の支援の方向性について意見を交わす田中理事長(左)とサチ首相

日本は、コソボがセルビアからの独立を求める紛争を経て国連暫定統治下にあった1999年から、国際機関を通じて学校や病院の建設などに協力してきた。2009年10月に開催された二国間経済協力政策協議を機に、対コソボ二国間協力を正式に開始。JICAは、保健システムの向上や鉱山の環境対策のための研修員を受け入れているほか、技術協力プロジェクトや無償資金協力を通じて、3R(Reduce:発生抑制、Reuse:再利用、Recycle:再資源化)の促進を中心に廃棄物管理能力の向上を図っている。また、今年度からは、国のグランドデザインの要となる地図作成のための技術協力プロジェクトを開始する予定だ。会談冒頭、サチ首相は、日本のこれまでの支援に感謝の意を表明。田中理事長は「JICAを代表して初来日を歓迎する。今回の訪日が大きな成果となることを期待する」と述べた。

若い国の可能性を発揮するために

コソボは、この数年間で経済状況が改善されてきているが、首都では依然、上水道や電力の供給などに課題がある。さらなる発展に向けて、コソボ政府は、これらの課題解決に加えて、保健・医療、教育、運輸、環境の各分野で開発を進めたい考えだ。これに対して、田中理事長は「すでに廃棄物分野では積極的に事業を実施しているが、継続的な協議を通じて協力案件を検討していきたい。JICAとしては、EUをはじめとした各ドナーと連携、協調しながら支援を実施していく方針であり、その中で効果的、効率的な協力を進めていきたい」と述べた。サチ首相は「コソボは若い国であるが、大きな可能性を秘めている。鉱物資源開発は特に重要な分野で、投資家の訪問を期待したい。リグナイト(褐炭)による効率的な火力発電や農業への支援のほか、観光開発にも協力をお願いしたい」と期待を込めた。これに対し、田中理事長は、コソボの経済政策を推進するために欠かせない投資環境の整備に向け、技術協力などを通じて支援していく考えを示した。