田中理事長がUNDPのクラーク総裁、AFDのゼラ総裁らと会談

2012年10月17日

田中明彦JICA理事長は、東京で開催された国際通貨基金(IMF)・世界銀行年次総会(10月9〜14日)の会期前後にわたり、国連開発計画(UNDP)のヘレン・クラーク総裁、ドイツ国際協力公社(GIZ)のタニャ・ゲッンナー・マネジメントボード議長、フランス開発庁(AFD)のドブ・ゼラ総裁、リベリアのエレン・ジョンソン=サーリーフ大統領らと会談した。

ミャンマー支援で協力を

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ミャンマー支援での連携の可能性などについて意見を交換した田中理事長(右)とクラーク総裁(写真提供:UNDP)

クラーク総裁との会談では、冒頭、5月に田中理事長がUNDPの人間開発報告書(Human Development Report: HDR)のアドバイザリー・パネルのメンバーに就任したことが話題に上り、クラーク総裁が謝意を表明。田中理事長は「日本語版のHDRは、日本国内の開発支援に対する意識向上に貢献している」と述べ、アドバイザリー・パネルのメンバーとして全力を尽くしていく意向を示した。

続いて、クラーク総裁は、UNDPの執行理事会でミャンマーに対する国別支援計画が承認されたことを報告。今後、JICAとUNDPがミャンマーに対する支援でも協働する機会があるだろうとしつつ、UNDPがミャンマーを支援するには、法整備や政府の能力強化が欠かせないことを強調した。

これに対し、田中理事長は「少数民族問題など、平和や秩序の回復も重要」と述べるとともに、政府の能力強化も不可欠だとし、ミャンマーがASEAN議長国を務める2014年までに政治・制度面での進展が期待されており、また、ミャンマーの変革推進に対し、ASEANが調整能力を発揮できるかどうかも注目されているとした。

エネルギー分野での連携を目指して

JICAとGIZは近年、アフリカ5ヵ国に対する水分野の協力で連携を進めているが、田中理事長とゲッンナー議長は、今回の会談では、エネルギー、気候変動対策分野について意見を交換した。

田中理事長は、JICAは、多くの省エネルギー、再生可能エネルギー分野の事業を実施しており、特に水力発電に関する協力の経験が豊富であること、そのほか、地熱、太陽光、風力発電の各事業に対し、円借款を供与していることを紹介した。また、ドイツがアフリカの電化事業に力を入れているというゲッンナー議長に対し、田中理事長は、今回のIMF・世界銀行年次総会では、アフリカのエネルギー問題に関する公式イベントを世界銀行、外務省と共催したことを報告。今後のこの分野でのJICAとGIZの連携の可能性を示唆した。

新たな開発課題に関する連携強化に向けて

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連携強化の可能性を探る田中理事長(右)とAFDのゼラ総裁(左手前)

JICAとAFDは業務協力協定を締結し、かねてから気候変動対策やアフリカ地域への支援を中心に連携している。ゼラ総裁と田中理事長は、会談の中で、12月にパリで開催予定の第3回AFD−JICA定期連携協議について、その重要性を確認。また、インドネシアやベトナムでJICAとAFDが連携して支援している気候変動分野について、フィリピンでも連携の可能性を検討していくことを確認した。

さらに、G20、国際開発金融クラブ(IDFC)などの国際的な開発課題に関する議論の場でも、気候変動や、新興ドナーとの関係構築といった分野で協力していくことを確認した。

ポスト2015に向けて

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会談後、握手を交わす田中理事長(右)とジョンソン=サーリーフ大統領

ジョンソン=サーリーフ大統領は、15日に東京大学で行われた講演の後、田中理事長と会談。リベリア側は「都市の人口増加に伴い、インフラ開発のニーズが高まっている」としつつ、内戦によって破壊されたインフラ復旧の一環で、現在調査段階にある、首都モロンビア市内の基幹道路の拡張と、発電施設の整備に対するJICAの支援に謝意を表した。これに対し、田中理事長は「両案件について、早期実施できるよう、努めていきたい」と応じた。

また、田中理事長はポスト2015(注)について、「2013年6月に横浜で開催される第5回アフリカ開発会議(TICAD V)に向けたプロセスも、ポスト2015のコンセンサス形成の場として活用し、アフリカの視点をポスト2015のハイレベルパネルでの取りまとめ作業に生かすべき」と指摘。大統領は、アフリカでは、今後、国連アフリカ経済委員会(UNECA)やアフリカ連合(AU)などの地域経済開発機関によるものをはじめ、さまざまな会合が予定されているとした上で、これらの会合がポスト2015のコンセンサス形成のための活発な議論の場になることへの期待を示した。

(注)ミレニアム開発目標(MDGs)の目標達成期限(2015年)後の国際的な開発枠組み。