田中理事長がグテーレス国連難民高等弁務官と会談

2013年2月8日

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新しい連携の可能性について話し合った田中理事長(左)とグテーレス高等弁務官(右)

田中明彦JICA理事長は2月5日、JICA本部(東京都千代田区)で国連難民高等弁務官(United Nations High Commissioner for Refugees: UNHCR)のアントニオ・グテーレス氏と会談した。

冒頭、グテーレス高等弁務官は、ここ数年、世界中で緊急事態が続発しUNHCRの負荷が高まっていると述べ、「人道支援と開発協力とのギャップ、人間の安全保障、平和構築などに対するJICAの取り組みは、UNHCRの任務に合致する」とし、難民問題の解決にはJICAのような開発援助機関との連携が不可欠であることを強調した。

田中理事長は、「6月に横浜で開催予定の第5回アフリカ開発会議(TICAD V)の議題の一つに『平和と安定』があるが、サヘル地域(注)の状況などについて必要な取り組みをUNHCRも含め議論し、連携の可能性を検討したい」と提案した。

グテーレス高等弁務官は同地域の状況について、「マリの問題は一国だけのものではなく、リビアの旧体制の崩壊により、武器や兵士がマリを含むサヘル地域全体に流れるなど地域的視点で捉えるべき課題だ。最近起こっている各国の危機は相互に関連しており、その地域だけでなく世界全体の脅威となる恐れがある」とした上で、中立的な立場にある日本の役割の重要性を説き、「日本だからこそ果たせる役割がある。この点がTICADを成功に導くだろう」と日本への期待を述べた。

新たな連携に向けて

会談ではシリア、ヨルダンの状況についても話し合われた。グテーレス高等弁務官は、「ヨルダンでは、昨年、円借款が再開されてJICAの活動の幅が広がったと理解している。シリア難民支援と難民受け入れコミュニティー支援の面で、ヨルダンでUNHCRとJICAの新しい連携が検討されていることは評価できる。加えて、ミャンマーでも連携が可能と考えている」と語った。

これを受け、田中理事長は、ヨルダンには洪水対策として難民キャンプに緊急物資を供与したことを報告し、「シリア情勢には注意を払っており、難民や受け入れ国の負担の軽減に協力したい」と述べた。ミャンマーへの支援は、少数民族支援を含む生活の向上、人材育成、インフラ開発の三つの分野を主な対象としていることを紹介。「円借款の再開により、JICAの協力は本格化する。少数民族問題などでUNHCRと協力できるだろう」とミャンマーにおける開発協力での連携可能性について述べた。

また、ソマリアに対する開発協力が本格化する際にUNHCRの協力を田中理事長が求めると、グテーレス高等弁務官は、「ソマリアでは難民・国内避難民の帰還も念頭に置きながら、JICAとの協力を進めたい」と応じた。

(注)サヘル地域:セネガル、モーリタニア、マリ、ブルキナファソ、ニジェール、チャドなどサハラ砂漠南縁部に広がる地域。