田中理事長がバン国連事務総長、クラークUNDP総裁と米国で会談

−人間の安全保障、アフリカの包摂的な成長への取り組みの重要性を強調−

2013年3月11日

田中明彦JICA理事長は、2013年3月6日から8日までの3日間、理事長に就任してから初めて米国ニューヨークを訪問しました。

UNDPクラーク総裁(右)と会談

理事長は、6日午後と7日午前、国連開発計画(UNDP)(注1)本部で開催された『人間開発報告書』有識者諮問委員会に委員として出席しました(昨年5月に委員に就任)。同委員会は世界中の学識者が集まり、人間開発報告書のコンセプトや論理構成を議論するなど、報告書が目指す方向性に示唆を与える重要な会合です。会合では2014年3月ごろに発行を予定している『人間開発報告書』のテーマや内容について意見交換が行われました。

7日にはUNDPのクラーク総裁と会談し、2015年のMDGs目標達成年限後の開発目標枠組みのあり方(ポスト2015)(注2)について意見交換しました。田中理事長は、「貧困削減や弱者支援は引き続き重要な取り組みであり、新しい枠組みには指導理念の一つとして人間の安全保障を組み込むべき。また指標については全般的に、簡潔かつ測定可能なものの検討が必要である」と述べ、クラーク総裁は開発関係者による議論継続の必要性を訴えました。

基調スピーチを行う田中理事長(右端)

パネルディスカッションに参加した田中理事長(右端)

8日、第5回東京アフリカ開発会議(注3)(TICAD V、2013年6月横浜市で開催予定)の開催を目前に、アフリカの成長と課題について広く議論を行うため、JICAは国連日本政府代表部(注4)、UNDP、国連アフリカ担当特別顧問室(UN-OSAA)(注5)、アフリカ連合(AU)(注6)の協力を得て、TICAD特別セミナーを国連本部で開催しました。日本政府国連代表部西田大使、UNDPクラーク総裁、OSAAアブデルアジィズ事務次長、AUアントニオ大使、コロンビア大学のスティグリッツ教授が列席の下、アフリカの国連大使など約100人が集まり、聴衆も交え、活発な意見交換が行われました。田中理事長は基調スピーチで、現在アフリカが直面する課題として、平和と安定を脅かす動きと、インフラの未整備を挙げた上で、「アフリカ開発には人間の安全保障の実現を念頭に、包摂的成長に資する取り組みが必要。そのためには開発に携わる者が共に解決策を模索し、共同作業を通じた学びが必要である」と指摘しました。

バン国連事務総長(右)と会談

また同日、バン国連事務総長を表敬しました。事務総長からは日本のTICADを通じたアフリカ支援への評価と期待、日本のODA増額による世界の開発へのさらなる貢献への期待が寄せられました。

(注1)国際連合開発計画(United Nations Development Programme)。国連システムにおける技術協力活動の中核的資金供与機関として、1966年1月1日に設立された。「持続可能な人間開発」を開発の基本理念に掲げ、貧困削減、民主的ガバナンス、エネルギーと環境、危機予防・復興、HIV/エイズの五つ分野に活動の重点を置いている。また、ミレニアム開発目標(MDGs)を開発戦略の最重点課題と位置づけ開発協力事業を実施。親善大使が6人任命されている(紺野美沙子氏:日本、女優、マリア・シャラポワ氏:ロシア、テニス選手、ロナウド・ルイス・ナザリオ氏:ブラジル、サッカー選手他)。
(注2)ミレニアム開発目標(MDGs)の達成期限である2015年が迫る中、2015年より先の国際開発目標(ポストMDGs)の策定に向けた国際社会での議論が始まっている。国連では2012年7月、バン国連事務総長がポスト2015年開発目標に関するハイレベルパネルを立ち上げている。メンバーは、英首相、インドネシア大統領、リベリア大統領を3共同議長とし、バランスに適切な配慮をして27人が選ばれている。UNDPでも新しい開発目標には市民の声を取り入れるべきとの考えから、NGOや民間団体を含めたさまざまなステークホルダーを入れて国別やテーマ別の協議を始めている。
(注3)Tokyo International Conference on African Development(アフリカ開発会議)の略で、アフリカの開発をテーマとする国際会議。1993年以降、日本政府が主導し、国連や国連開発計画(UNDP)、世界銀行等と共同で開催している。2013年6月には、横浜で5回目となるTICAD V(第5回アフリカ開発会議)を開催予定。
(注4)国際連合日本政府代表部は、日本政府を代表して国連での任務を遂行している。
(注5)United Nations Office of the Special Advisor on Africa。国連において、UNDPとともにTICADを担当。
(注6)African Union。アフリカ54ヵ国・地域が加盟する世界最大級の地域機関。本部はエチオピアの首都アディス・アベバ。