田中理事長がフランスとベルギーを訪問

−パリとブリュッセルで講演−

2015年1月30日

田中明彦理事長がパリで「質の高い成長」に関するセミナーに参加し、続いてブリュッセルで欧州連合(EU)および世界税関機構(WCO)の関係者と面談するとともに、ポスト2015年開発アジェンダに関するJICAのポジションについて講演しました。

「質の高い成長」に関するセミナーで基調講演

JICAにおける「質の高い成長」の考え方を発表する田中理事長(左から2人目)

1月26日、田中理事長はフランスのパリを訪問し、JICAとフランス開発庁(AFD)および英国サセックス大学の開発学研究所(IDS:Institute of Development Studies)が共催した「質の高い成長」をテーマとした公開セミナーに基調講演者の一人として出席しました。

望ましい開発と成長とは何か。また、その実現をどのように促すのか。JICA研究所は、2012年からAFDとIDSとともに、「質の高い成長」に関する共同研究を行ってきました。今回の公開セミナーは、この研究成果をまとめたレポートが発刊される機会をとらえ、AFDのパリ本部内の会場において開催されたものです。イベントには、AFDからの出席者に加え、フランス外務省やパリに本部があるOECDなどから約70名が参加し、活発な意見交換が行われました。

田中理事長は、本セミナーの冒頭に行われたセッションにアン・ポガムAFD総裁やメリッサ・リーチIDS所長らとともに登壇し、JICAにおける成長の質に関する考え方について触れました。その中で田中理事長は、ミレニアム開発目標(MDGs)の枠組みのもと、各国や国際機関などの努力により貧困削減に大きな進展が見られた一方、依然として経済格差や都市−地方の格差が続いていること、世界は気候変動など新たな課題に直面していることを指摘しました。その上で、21世紀に目指すべき成長の方向性を今一度考える必要があり、「包摂性」「強靭(じん)性」「環境の持続可能性」の3要素に配慮した「質の高い成長」を重視する立場を表明しました。田中理事長は具体的なこれまでのJICAの取り組みを紹介しつつ、包摂的な成長を実現するためにはキャパシティ・ディベロップメント(人々の能力の強化)や、防災などのリスクに対応するレジリエンス(強靭性)を高めていくことが重要であり、JICAは人間の安全保障の考えに基づき、これら「成長の質」に一層配慮した支援に取り組んでいくことを述べました。

続いて「質の高い成長を実現するための道筋」と題したセッションでは、加藤宏理事が司会をつとめました。この中では、本共同研究に参加した他の研究者とともにJICA研究所の細野昭雄シニア・リサーチ・アドバイザーがパネリストとして登壇し、「質の高い成長」を実現するためには、「包摂性」や「持続性」という視点を重視しつつ産業構造転換を図るべきと強調しました。

今回のイベントを通じて、「質の高い成長」の定義は各国が直面する課題やコンテクストに併せて国ごとに違ってくること、分野や組織の壁を超えた包括的なアプローチが重要であること、「質の高い成長」に向けた各国政府による政策的な取り組みが不可欠であることが確認されました。

ブリュッセルでEU関係者と面談、欧州開発関係者の催しで講演

ゲオルギエバ欧州委員会副委員長(右)と田中理事長

田中理事長は、27日、28日にはブリュッセルでEU関係者との面談およびイベント登壇を行いました。

27 日にはゲオルギエバ欧州委員会副委員長と面談し、災害レジリエンス強化に関するJICAとEUの連携等について意見交換を行いました。また、3月に仙台で開催される第3回国連世界防災会議に向けた防災主流化における協力、また現在ケニアで進むコミュニティーベースでの防災(干ばつ対策)に関するJICAとEUの連携の推進を確認しました。

28日に行われたミミツァ欧州委員(開発担当)との面談では、ポスト2015年開発アジェンダ等の国際援助潮流に関する連携に加えて、TICAD枠組みとEUのアフリカ支援枠組における連携のさらなる推進を確認しました。

また、27日の夜には欧州シンクタンク「Friends of Europe」が主催した「ポスト2015年開発アジェンダへの見解」と題するイベントにおいて、EUのデメロ開発協力総局長とともに基調講演を行いました。田中理事長は、集まった欧州開発関係者を前に、ポスト2015年開発アジェンダにおいて、包摂性、強靭性、環境持続可能性を兼ね備えた「質の高い成長」が重要であることについてJICAの取り組みを紹介しながら述べました。また、質の高い持続的な経済成長の実現のために、欧州のさまざまなアクターと連携していきたい旨述べました。

世界税関機構との業務協力協定に署名

1月27日、田中理事長は世界税関機構(WCO)本部を訪問し、新たなパートナーシップ構築のための業務協力協定(MOC)を締結しました。