田中理事長が「アジアの平和構築と国民和解、民主化に関するハイレベル・セミナー」に参加−アジアの平和構築支援におけるJICAの実績、役割について発信−

−アジアの平和構築支援におけるJICAの実績、役割について発信−

2015年6月25日

発言する田中理事長

田中明彦JICA理事長は6月20日、東京の国連大学にて外務省が主催した「アジアの平和構築と国民和解、民主化に関するハイレベル・セミナー」に出席しました。

このセミナーでは、岸田外務大臣の基調講演に続き、ジョゼ・ラモス=ホルタ国連平和活動ハイレベルパネル議長・前東ティモール大統領、マンガラ・サマラウィーラ・スリランカ外相、アル・ハジ・ムラド・イブラヒム モロ・イスラム解放戦線(MILF)議長、笹川陽平 ミャンマー国民和解担当日本政府代表が講演しました。各スピーカーからは、それぞれの国で、平和な社会の構築に向けた取組から得られた、数々の貴重な知見が紹介されました。

田中理事長は、その後行われた「対話セッション」に登壇しました。デイビッド・マローン国連大学学長による議事のもと、スリン・ピッスワン 前ASEAN事務総長、ノエリーン・ヘイザ— 元国連事務次長・元東ティモール担当国連事務総長特別アドバイザー、白石隆 政策研究大学院大学学長、山中燁子 平和構築対外発信特別大使と共に、活発な議論を行いました。理事長はこの中で、特に紛争後の社会においては、再び紛争に戻ることを防ぐ上で和平プロセスへの政治的対応は欠かせないことに加え、人々が将来への明るい期待を持てる社会の構築を開発機関が支援することが和平プロセスの促進にも資するのではないかと述べました。そのためには、JICAでも取り組んでいる、早期に人々が実感でき、生活に密着した小規模インフラ整備等が重要であること、またその際には「包摂的(inclusive)」なアプローチにより公平性を保つべきであること、さらに「長期的なコミットメント」により継続的に支援していくことなども重要であることを指摘しました。その他の登壇者からは、各紛争は固有の事情を持つため支援のあり方も個別に判断すべきといった点や、民主化に関し、公正で自由な選挙は重要だが政治システムの設計自体も重要で、地方分権化等も慎重に行うべきといった点が言及されました。また、暴力的過激主義の伸張がより困難な局面をもたらしていること、ミャンマーのロヒンギャを巡る問題等、多岐にわたる議論が展開され、会場の一般参加者からも平和構築の主体者をどう選ぶか、市民教育の重要性など、多くの質問・意見が寄せられました。

田中理事長は本イベントに先立ち、18日にサマラウィーラ・スリランカ外相と、19日にミンダナオのムラドMILF議長と、個別に面談しました。

サマラウィーラ外務大臣からは、これまでの60年に及ぶ主要な開発パートナーとしての日本及びJICAへの謝意が表明されました。また今後、同国が中進国入りを目指す中で課題と位置づけている、海外からの投資促進、質の高いインフラ整備(都市交通等)、開発の基盤として重要な平和の定着、国民和解の促進等について意見交換を行いました。

ムラドMILF議長との面談は、昨年6月に広島で開催された「ミンダナオ平和構築セミナー」以来1年ぶりのものとなりました。面談では、バンサモロ自治政府設立に向けたスケジュールや、MILF兵士の武装解除等について、意見交換を行いました。田中理事長からは、JICAとしても常に和平プロセスに寄り添いながら支援を行っていきたい旨を述べました。