田中理事長が「開発のための教育に関するオスロサミット」で「教育の質」の重要性を発信

2015年7月9日

パネリストとして発言する田中理事長

田中明彦JICA理事長は7月7日、ノルウェーのオスロを訪問し、「開発のための教育に関するオスロサミット」に出席しました。

本会合は今年5月に開催された世界教育フォーラム仁川会議での議論を踏まえ、7月に予定されているエチオピア・アジスアベバでの開発資金会合(Financing for Development)及び9月の国連サミットに向けて、教育への投資の必要性を訴えることを目的として開催されました。潘基文国連事務総長をはじめ国連機関のトップ、2014年ノーベル平和賞受賞者マララ・ユサフザイ氏、さらに約40か国の首脳、閣僚が参加しました。サミットでは、2030年に向けた今後の国際教育開発の重要なトピックとして、「教育への投資(Investment in Education)」、「女子教育(Girl’s education)」、「質と学習(Quality and Learning)」、「緊急時における教育(Education in Emergencies)」、という4つのパネルセッションが実施されました。また、会議後にはホスト国であるノルウェーより議長声明が発表されました。

田中理事長は「質と学習(Quality and Learning)」のパネルディスカッションにブリジ・
ラフィニ首相(ニジェール)、イリナ・ボコバ国連教育科学文化機関(ユネスコ)事務局長、ガイ・ライダー国際労働機関(ILO)事務局長、エリック・ポステル米国国際開発庁(USAID)長官補らと登壇しました。理事長は、これまでのJICAの教育協力の経験を踏まえ、教育と学習の質の向上の鍵として、1)授業研究(注)に代表される「教員の学びあい」、2)教育制度全体の課題である「カリキュラム・授業・アセスメントの一貫性」、3)学校と地域社会の間に構築される「信頼」、という3つのつながりが重要であると強調しました。さらに、JICAが支援してきた授業研究が世界27か国に拡大されていること、学校と地域社会が共に取り組む学校運営改善の支援をニジェールなど16か国で展開してきたこと、今後もグローバルな学び合いをより一層支援していくこと述べました。

質疑応答セッションでは、教育の質の定義、社会・経済のニーズに合致した学校教育、雇用につながる教育、地域社会の参画、アセスメント等の重要性について議論がなされました。田中理事長からは、これまでのJICAによる支援の経験に基づき、教員自身が学び続けることが教育と学習の質の向上のために不可欠であること、試験の標準化などアセスメントのみを過度に重視して議論するのではなく、カリキュラム、授業との整合性を踏まえた全体のバランスが必要であることを訴えました。

(注)教員たちが自ら授業の課題を見つけ、その課題を克服するために授業を計画・実践し、互いに助言・批評し学び合うという日本を発祥とする教員研修の取組み。