開発途上国におけるサステイナブル・カカオ・プラットフォーム 第1回総会を実施しました

2023年3月17日

概要

  • 会議名:開発途上国におけるサステイナブル・カカオ・プラットフォーム 第1回総会
  • 日時:2023年3月17日(金)10:30~15:00
  • 会場:JICA本部&Zoom(ハイブリッド形式)
  • 参加者:(対面)32名、(オンライン)12名

内容

「開発途上国におけるサステイナブル・カカオ・プラットフォーム」は、経済的・社会的・環境的に持続可能なカカオ産業(サステイナブル・カカオ)の実現を目標に、多様な関係者が、カカオ産業の抱える課題の解決に向けて共創・協働するための「場」として2020年1月に設立されました。
今回、コロナ禍等のために実現できていなかった総会を初めて開催しました。2022年度の活動を振り返り、サステイナブル・カカオを取り巻く最新の情報について意見交換を行い、2023年度のプラットフォーム活動と運営方針につき議論、児童労働、生計向上、トレーサビリティ等にむけた活動の強化につき意見を交換しました。

(1)2022年度活動振り返り

成果として、「児童労働の撤廃に向けたセクター別アクション」(注1)が完成し、会員間の議論が深まりアクションを後押ししていることがハイライトされました。他、第5回児童労働撤廃世界会議サイドイベント(注2)や第7回サステナブル・ブランド国際会議(注3)などの多数イベントでの登壇に加え、各種メディアによる取材なども進みました。会員数は国内の4大チョコレートメーカーを含む52団体、102個人(昨年度比+38)(注4)まで拡大し、これまでになかった繋がりを生む場となっています。

(2)2023年度のプラットフォーム活動と運営方針

  • 2023年度は、サステイナブル・カカオの実現に向けた会員のアクションを更に加速させるための3つの側面、つまり経済(農家の生計向上、フェアトレード)、社会(児童労働撤廃)、環境(森林/自然環境保全)、に加えて、横断的事項(トレーサビリティ)のテーマを設定し、活動を押し進めます。また、それぞれのテーマについて具体的にどのような活動が必要か、プラットフォーム内での検討を進めます。
    (注)「児童労働撤廃」「フェアトレード」については、現在分科会が設置され、会員間の情報共有と協働が進んでいます。

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  • また、プラットフォームのPRは、プラットフォーム自体の活動強化に加え、サステイナブル・カカオに対する日本の社会一般の理解や取り組みを進めるためにも重要です。今後は、JICA他会員がイベントや学校での講義等を行う際、他の会員にも積極的に参画頂くなどして、共創的なPR・啓蒙活動に取り組むことを確認しました。また、プラットフォーム内のカバレッジが少ないセクター(例:小売業、環境保全等に取り組む団体、公的機関)などへのアプローチを強化し、協働を目指します(会員登録については、下方をご参照ください)。

(3)意見交換セッション(児童労働撤廃、生計向上、トレーサビリティ)

サステイナブル・カカオの実現に向けたアクションを更に強化するため、以下の3つのテーマについて意見交換を行い、各団体の好事例や課題を共有し、今後の取り組みについて議論しました。

児童労働撤廃:

2022年9月末に公表した「児童労働の撤廃に向けたセクター別アクション」(注1)の実践を進めるべく、賛同団体の実績取りまとめと情報公開に取り組みます。
また、バリーカレボージャパン株式会社様(注5)より、セクター別アクションに沿った取り組み事例が紹介されました。カカオ生産者コミュニティの児童保護委員会や人権委員会と協働してのトレーニングや啓発活動、子どもの就学支援等を推進しています(詳細はForever Chocolate Progress Report 2021/22(注6)参照)。
今後は情報共有のみならず、ガーナの児童労働フリーゾーン整備を端緒とした現場レベルでの協働を開始するべく期待が高まっています。

生計向上:

現在、ある特定の場所に住む世帯が、すべての世帯員に適切な生活水準を確保するために必要な純年収として「リビングインカム」の概念が確立していますが、例えば、ガーナ、コートジボワールの現収入はその40~60%程度といった状況が共有されました。
レインフォレスト・アライアンス様より、Living Incomeモニタリングツール開発や企業との協働事例(注7)の紹介、株式会社立花商店様(注8)より、目標・インパクトと連動させたカカオ豆のプレミアム支払い事例の共有がありました。
会員の議論を通じて、Living Incomeと実際の収入のギャップを埋めるには、カカオ豆生産からの収入向上のみならず、生産国の政府による社会保障制度の強化やカカオ豆以外の収入源の充実など、様々なアクターによる努力が必要であることが改めて共有されました。
生産者にとっては、サステイナブル・カカオ豆の生産における認証取得や維持などが多大な負担となっている上、買取価格の向上に必ずしも繋がっていない現状も指摘されており、各アクターがどのようなアクションを起こせば生産者側にとって有意義なのか、プラットフォームとしても検討を進める方向性が確認されました。

トレーサビリティ:

カカオ豆の生産状況に関するトレーサビリティは、サステイナブル・カカオへの取り組みを進めるためにも不可欠であり、欧州を中心に政府による義務化等の動きも進んでいます。同時に、関係企業の対応に係るコスト増や、生産現場においても、多岐にわたる報告内容や社によって異なる報告フォーマット等、農家への負担増が指摘されています。
総会では、株式会社ロッテ様より、ブロックチェーンを用いたカカオ豆のトレーサビリティと児童労働リスク情報に関する実証実験(注9)について紹介。同実験は、ブロックチェーン技術を用いて、調達したカカオ豆のトレーサビリティ情報と児童労働リスク情報を紐づけ、自社のサプライチェーン上の児童労働リスクの可視化を目指すものですが、このようなシステム構築については各企業がそれぞれのカカオ豆調達地域で進めており、その進捗状況については濃淡があることが共有さました。
今後は、会員間の事例共有から各社システム間のデータ連携といった様々なレベルでの取り組みが進むよう、活動を進めていきます。

意見交換の様子

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カカオ産業を取り巻く問題は様々で、社会的・経済的・環境的要素が複雑に絡みあっています。ゆえにいずれの活動も、団体や個人による個別の取り組みも大事ですが、例えば消費者啓発など、互いに連携し、相乗効果を生むことが求められたり、児童労働撤廃やカカオ豆農家の生計向上のように解決には連携が必須である課題も多数あります。事務局として、様々な立場の方々が集まるプラットフォームの場を活用し、各会員の活動を後押しするとともに、現場レベルでの会員間の協働を促進していきます。

プラットフォームへの参加にご関心のある方は、こちらの「4.会員登録」をご参照ください。