6月12日は児童労働反対世界デー ~日本のカカオ産業関係機関が連携してガーナの児童労働問題に取り組む~
2024.06.12
2002年、国際労働機関(ILO)は、児童労働の撤廃に向けた取り組みの必要性を訴えるため、6月12日を「児童労働反対世界デー」と定めました。
本日は、児童労働の現状と、撤廃に向けたJICAや関連機関との取り組みをご紹介します。
国際条約の定義では、児童労働とは、義務教育を妨げる労働や法律で禁止されている18歳未満の危険・有害な労働のことです。
*危険・有害な労働:
国際条約では、以下を児童労働の中でも「最悪の形態の児童労働」と定めています。
・人身売買、徴兵を含む強制労働、債務労働などの奴隷労働
・売春、ポルノ製造、わいせつな演技に使用、斡旋、提供
・薬物の生産・取引など不正な活動に使用、斡旋、提供
・児童の健康、安全、道徳を害するおそれのある労働
ガーナでは、カカオ産業や水産業を中心に、子ども全体の21.8%に当たる189万人が児童労働に従事、その中でも123万人は危険有害労働に従事していると指摘されており、深刻な開発課題となっています。そのような現状を受け、ガーナ政府は「National Plan of Action (NPA) Phase Ⅲ for Ghana Accelerated Action Against Child Labour 2023-2027」を策定し、国際社会と協力して、児童労働撤廃に向けて取り組んでおり、その一環として、児童労働フリーゾーン(以下「CLFZ」)の認定にかかる制度設計を進めてきました。CLFZは、児童労働撤廃に向けた環境や条件が整っている地域と定義されています。児童労働撤廃に寄与する各種条件を、統一された基準(指標)として設定し、児童労働をなくす仕組みを整えていこうとしています。ガーナ政府が自治体単位でCLFZを認定し、そのような地域(ゾーン)を国全体に広げることで、児童労働のない国を目指す取り組みです。
2020年3月、ガーナ政府は、Establishing Child Labour Free Zones in Ghana –Protocols and Guidelines(以下「CLFZガイドライン」)を策定しました。JICAは、2020年10月からCLFZガイドラインの現場での試行を支援し、その結果を踏まえてガイドラインの改定が行われました。
2024年2月、ガーナ政府とJICAは「児童労働フリーゾーンを通じた子どもの保護主流化プロジェクト」を開始しました。今後3年間で、実効的で持続可能なCLFZ制度の確立と、CLFZの普及に取り組みます。
2024年3月、ガーナの首都アクラで、ガーナ雇用労働調整大臣の出席の下、このプロジェクトの開始式典が盛大に開催されました。式典は、ILO(国際労働機関)やUNICEF(国連児童基金)などと合同で実施され、それぞれが実施する児童労働撤廃を目指すプロジェクトの開始が同時に宣言されました。
これまで多くのプロジェクトが実施されてきたにもかかわらず、児童労働がなくならない理由の一つとして、関係者の連携不足が指摘されています。合同開始式典では、それぞれの取組内容が具体的に紹介され、児童労働撤廃の実現に向けて関係者が互いに連携していくことが確認されました。
JICAが事務局を務める開発途上国におけるサステイナブル・カカオ・プラットフォームは、幅広いパートナーと児童労働を含むさまざまな開発課題の解決に向けて協働することを目的として、2020年1月に立ち上げました。カカオ産業において、児童労働は、解決すべき大きな社会的課題として、企業や関係団体の危機意識が高まっています。
2022年9月、プラットフォームの中で、特に児童労働の問題の解決を目指す企業やNGOが中心となり、それぞれの立場から期待される具体的な行動を示した「児童労働の撤廃に向けたセクター別アクション」を策定しました。2024年2月、同アクションに支持を表明した17企業/団体による児童労働撤廃に向けたアクションの実施状況をまとめたレポートを発表しました。レポートの内容としては、以下のような事例を取り上げています。
・児童労働の撤廃を目指す取り組みが実施されている地域で生産された原料や認証原料の優先的な調達
・サプライチェーン上における児童労働リスクに対しての措置
・カカオ生産国での教育支援・学校環境改善
本レポートが責任ある企業行動・調達の実現に資する活動の具体的な事例集として活用され、カカオ産業に関わる企業の人権デュー・ディリジェンスの実現につながることを期待しています。また、今後も取り組みを定期的に発信することで、「あらゆる形態の児童労働撤廃」を目指すSDG8.7の達成に貢献していきます。
JICAは、2023年1月に国際労働機関(以下、ILO)と連携協定を結び、「ビジネスと人権」の分野において、連携を強化することを合意しています。2023年11月、プラットフォーム会員を対象に、ILOが、特にサプライチェーンにフォーカスし、官民連携でアフリカにおける児童労働について取り組んでいる事例として、アクセルアフリカプロジェクトに関する 勉強会 を行いました。
プラットフォームでは、2024年3月に、カカオの主要生産国であるガーナにおいて約1週間の スタディツアー を開催しました。今回参加したのは、カカオ業界団体、商社、チョコレートメーカー、小売業、NGO、メディア等、多様なバックグラウンドの会員14名。カカオ農園にて農家の方からの聞き取りや、チョコレート工場やカカオ豆の品質検査機関、カカオ豆を保管する倉庫、市場など関連施設の訪問を通じて、カカオのサプライチェーンへの理解を深めるとともに、ガーナ政府やJICAを含む開発パートナー、企業、NGOによるカカオのサステナビリティ実現に向けた取組みについて学びました。また特定非営利活動法人ACEが支援活動を実施する村で学校の給食プログラムや学校の授業を見学しました。児童労働をモニタリングするコミュニティ子ども保護委員会(CCPC)や、児童労働を経験した親子との面談も行いました。
カカオ農園の視察の様子 NGOのプロジェクト活動地でのヒアリングの様子
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