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【対談企画】ウズベキスタン&ジョージア観光隊員 似て非なる両国  

2025.02.14

今回は以前インタビューに協力頂いた伊藤さんと山下さんの対談インタビューを実現させていただきました!お二人に個別インタビューをさせていただく中で、両国ともシルクロードの通過点であったり旧ソ連の一部であったりと、その背景は似ていても国内の様子や人々の性格の違いを知り、ぜひお二方に今後の二か国の観光の展望について意見交換をしたいと思いこの機会をいただきました。両国における現状、そして今後のビジョンを伺いました。
お二人の個別インタビュー記事はページ最後のURLから是非チェックしてみてください。

【対談者】◆伊藤卓巳氏(ウズベキスタン/サマルカンド経済サービス大学/観光/2022年11月~2024年11月)

【対談者】◆山下真生氏(ジョージア/ボルジョミ・ハラガウリ国立公園/観光/2023年7月~2025年7月)

(インタビュアー:大久保)今回は対談形式でウズベキスタン、ジョージアの観光を比較しつつ2カ国の今後の展望、そして日本との関わり方について意見を交換することができたらと思います。よろしくお願いいたします。

THEME  2 か国の観光客に対する接し方の相違点

サマルカンド レギスタン広場をガイドする学生

ボルジョミ・ハラガウリ国立公園を視察するチェコからの訪問者

(大久保) お二方に個別でインタビューさせていただいた際、2か国の観光客への接し方に違いを感じました。その点について国民性も踏まえて、詳しく教えていただきたいです。

(伊藤) ウズベキスタン人は観光客に対してホスピタリティがありすぎるほどかなと思います。10年前もウズベキスタンを訪れたことがあるのですが、機内で隣に座っていた女性が空港到着後、私をホテルまで送ってくれたことがとても印象的でした。とにかく見知らぬ人には興味津々で、とことん話しかけるというのが彼らの姿勢のように思います。様々な民族や帝国などからの侵略や被支配の歴史であることや、シルクロードの要所であることから、他民族に対して寛容になったのかなと感じます。

(山下) ジョージアもウズベキスタン同様にとても親切な国で、観光客とのコミュニケーションの距離が非常に近いと感じることが多いです。それに対して外国人観光客は、時に面食らう様子も見かけます。かく言う私も、初対面なのに盛大なもてなしをジョージア人から受けることもあり、未だに驚く事もあります。
一方で、ジョージアもウズベキスタンと同じく数多くの侵略を受けた歴史がありますが、その歴史の中でジョージア正教会を心の拠り所とし、また、同朋意識を育んできたため、外へ視野を向ける意識が薄い傾向があることも否めません。観光業において“サービスの受け手(観光客)の気持ちを慮る事”、つまり、ホスピタリティが非常に大切になってくるものの、非常に近い距離感や、同胞意識の強さ故に受け手の気持ちに立ったホスピタリティが出来ていないと感じることがあります。
また、昨今の世界的な慣習の中ではばかれるような話題(例えば、結婚の有無や子供の有無など、「家族は神からの贈り物」とするジョージア正教会の教えから派生するような話題)を、無意識に観光客や外国人に投げかけたりする様子をよく見ますし、実際に生活していると私もそのような問いかけをよく受けたりします。そうした質問は、人・性別によっては非常にセンシティブな話題であるという事への理解や認識が不足しているところもある気がしています。

(伊藤)同様の質問はウズベキスタンでもよく耳にする気がします。

(大久保)歴史的背景が似ていても、文化的・社会的背景、信仰などの要素によってその国の人たちに異なる影響を与えることが良く分かりました。

サマルカンド レギスタン広場にある建築群の一つティラカリ・マドラサ

ジョージアのツミンダ・サメバ教会 世界の正教会でも最大の教会の一つ

THEME  今後の観光を延ばすためのターゲット

(大久保)ウズベキスタンにもジョージアにも知られざる魅力がたくさんあると思います。その中でも推しポイントがあれば教えてください。

(山下)ジョージアが自然豊かである点をもっとアピールして、ハイキングやサイクリスト、キャンパーなどアウトドアに興味のある観光客の誘致ができればと思いますが、それに加えて、ジョージアには温泉や温泉を活用したスパも多くあります。首都のトビリシのトビリは、ジョージア語で「温かい」という意味で、街で温泉が発掘された時の温かさが由来していると言われています。ジョージアの首都で温泉に入れることは、日本人観光客へのアピールポイントの一つです。またジョージア人は色彩感覚やデザインセンスに非常に富んでいて、古着屋、カフェも本当におしゃれな店が溢れています。日本と比較すると物価も安いので、若者だけでなく女性のおひとり様旅にも良いデスティネーションかと思います。

(大久保)日本の若者において、デザイン性や独自性の高いカフェを訪問しSNSにアップしたり、古着屋巡りを通じてビンテージ風な恰好を楽しむ人も多いので、そのような世代にジョージアの魅力がはまりそうだなと感じました。私も行ってみたくなりました!!

(伊藤)ジョージアにはそんなに素敵な大衆文化があるんですね。ウズベクの人たちは色々頑張って観光の目玉を作り出そうとするのですが、それがターゲットとすべき観光客層に訴求しないこともあるような気がしています。ウズベキスタンというと観光都市部(サマルカンド、ブハラ、タシュケント、ヒヴァ等)にあるモスクや「青の都」に代表される青色のタイルなどが注目されがちなのですが、私はサマルカンド旧市街にも魅力を感じています。これからは旧市街のウォーキングツアーなども積極的に計画・実施して、都市部だけの訪問に終わらない旅行客のリピーターを増やすような観光開発を進められればと思います。

トビリシにある公衆浴場

トビリシにあるデザイナーズホテル

サマルカンドのタイル職人

サマルカンドにある民族楽器工房

THEME③ 発展の定義とは

(大久保)これまでお二方に二か国での今後の成長への期待についてお伺いしました。一方、発展することが必ずしも正しいとも限らないと考えています。お二人が「ここは変わらずに残しておいて欲しい」と考える部分を教えてください。

(山下)人々同士の温かい「繋がり」は残して欲しいと思います。例えば、私が風邪引いたらアパートの誰かが助けてくれるように、困っている人に対して誰かが手を差し伸べてくれたり、地域全体で子供を見守る環境があったりと、社会が相互扶助で成り立っている部分があります。今後、観光振興が進み国の経済が発展して行ってもこうした助け合いの精神は変わらないでいて欲しいと思います。

(伊藤)私も全く同じです。人との付き合い方、繋がりは変わらないでいて欲しいです。
階段を登っている高齢の方がいたら手を差し伸べる、観光客にもイヤというほど話しかけるなど、人の「温かみ」はいつまでも残ることを祈ります。今後も先進国的な発展を目指して国内は変わり続けると思いますが、上手く近代化と調和できる発展モデルを期待します。

サマルカンドのバザールにてガイドを行う学生

ジョージアの世界無形文化遺産のジョージアポリフォニーを歌う

THEME④ 今後のビジョン

(大久保)長い間ありがとうございます。最後になりましたが、今後のお二方のビジョンをお聞かせください。

(伊藤)「地球の歩き方」のサイトにも寄稿していますが、個人でウズベキスタンの魅力を伝える活動に尽力していきたいです。またウズベキスタンは本当に料理が美味しく、特に私のお気に入りがピラフのような米料理の「プロフ」です。「食から世界を」を目指し、ウズベク料理とのコラボイベントやフェスなどがいずれは日本で開催できるように頑張りたいと思います!

(山下)私は残りの任期でジョージアの観光業の発展に少しでも貢献出来ればと考えています。観光産業に携わる人々や地域の人々が観光客目線に立つという意識を持ち、地域の魅力を最大限に引き出すことで、この産業はいかにも発展出来る可能性があるということを、この国の観光業に従事する一人でも多くの方に伝えていきたいと思います。その為には、まず、国全体のみんなの力で観光が成り立っているという意識づくりをしたいです。例えば、おもてなし研修を観光従事者や他産業従事者を対象に行ったり、観光業のトレンドを常にブラッシュアップしてもらう為に、最新情報を伝えていくなど思い描くことはたくさんあります。「皆でジョージアの観光をつくる」という意識づくりに貢献できればと考えています!

伊藤さんの活動の様子 学生とツアー企画について議論

ウズベキスタンを代表する料理 プロフ

山下隊員の活動風景

どれも美味しそうなジョージア料理

本記事は2025年1月に作成・公開されました

インタビュアー:  経済開発部民間セクター開発グループ インターン 大久保 桃花 
2024年8月から3か月間JICA経済開発部にてインターン。大学では途上国における民主化がもたらす国際協調をテーマに勉強。中央アジアやアフリカなど未知なる世界に挑戦し、そこで得た感動を共有することが好き。そのため、広報を通じた国際協力の在り方を模索中。

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