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- JICA留学生の自治体インターンをレポート!「日本一チャレンジするまち」埼玉県横瀬町を体感した3日間
横瀬町のシンボル 武甲山を背景に、JICAチームで集合写真
日本の大学院に留学中の長期研修員(以下、JICA留学生)4名が、2024年7月5日(金)~7日(日)の2泊3日、埼玉県横瀬町でインターンに参加しました。
JICA留学生のインターンシップ・プログラムとは?
JICAは、開発途上国の未来を担う若手行政官等に対し、日本の大学院に留学し専門的知見を深め、母国の将来に活かしてもらうための日本留学プログラムを展開しています。一部の留学プログラムでは、実践的な知見を得る機会として、大学院に在籍中または卒業後にインターンシップを提供しています。今回、初の試みとして地方自治体インターンシップを実施し、埼玉県横瀬町に受入れていただきました。
埼玉県横瀬町は、「日本一チャレンジするまち」を標榜するユニークな自治体です。JICAともさまざまな連携を行っており、出向者の受け入れも現在の福井康専門員が3代目となります。今年度からは「JICA海外協力隊グローカルプログラム(派遣前型)」を受入れています。
今回のインターン参加者は、太平洋・インド洋の島嶼国(パプアニューギニア、キリバス、モーリシャス、セーシェル)出身の4名、自国でまちづくりを担う方々(行政官や学校教師)です。前述のJICA海外協力隊グローカルプログラムで約2カ月半、横瀬町に住み、町民の一員として活動している日本人の研修生3名も交えて、横瀬町での3日間がはじまりました。彼らの目に、横瀬のまちはどのように映るのでしょうか?
横瀬町で活動するグローカルプログラム実習生3名とともに、チームを結成!お祭りの準備を行いました。 太平洋島嶼国のメンバーが多いパシフィックアイランド・チーム。
アフリカに縁のあるメンバーが多いアフリカ・チーム(「A」の文字で集合写真)。
埼玉県横瀬町ってどんなまち?
初日は、農協の直売所跡地を利活用したコミュニティ・スペース「エリア898」から始まりました。まちの人やまちに関係する方々が自由に出入りするオープンなこの場所で、役場職員の田端将伸さんから、横瀬町の取り組みについてお話をいただきました。
横瀬町は人口約7,600人の小さなまちで、都心から約70km圏内と近くにも関わらず豊かな自然が広がります。主要産業は武甲山から産出される石灰で、周辺秩父地域も含めて年に365以上のお祭りがあることでも有名です。「日本一チャレンジするまち」、「日本一チャレンジする人を応援するまち」を掲げる横瀬町は、小さな町ならではの意思決定の速さを活かし、官民連携のプロジェクトを次々と生み出すプラットフォーム「よこらぼ」を展開しています。お米を加工して新しい特産品を開発、ビジネス化した「どぶろく特区プロジェクト」、不登校の生徒に向けた「好奇心の種まきプロジェクト」など、横瀬町独自の取り組みも紹介いただきました。
横瀬生まれ、横瀬育ちの田端さん(連携推進室長)は、まちづくりを牽引するキーパーソンです。田端さんのエネルギッシュさに触発されて、参加留学生からは積極的に質問が挙がりました。「企業を巻き込んだ地域振興、学校に行けない子どもたちへの支援が特に興味深かった。」「田端さんのまちづくりに対する熱いお話を聞けただけでも、今回のインターンシップは期待以上だった。コミュニティづくりや民間連携の取り組みにおける葛藤も伺え、大変新鮮だった。」という声も聞かれました。カラフルタウン、多文化共生を掲げ、まちの活性化のために活き活きと取り組んでおられる役場職員の姿をみることは、参加留学生にも刺激になったのではないでしょうか。
コミュニティ・スペース「エリア898」にて、田端将伸さんから熱心にお話を聞く
グローカル生と横瀬町の自然を体感
快晴となった2日目の朝、横瀬町の観光農園を視察しました。山が多い横瀬町では、農業に適したエリアが限られます。少ない農地で高付加価値の作物を栽培し、体験を提供する観光農園は、まちを支える一つの産業となっています。
訪問先となった小松沢レジャー農園は、しいたけ、ぶどう、イチゴなど、四季折々の農作物の収穫を楽しめる他、溶岩バーベキュー、マス釣りなど、家族で楽しむのにもってこいの関東随一の観光農園です。一行は、しいたけ狩り、マスのつかみ取りを楽しんだ後、野菜お肉たっぷりのBBQで親交を深めました。
こちらの観光農園は、一代前までは普通の農家さんだったそうです。しかし、観光農園に発展させたことで、これまで一家族しか養えなかったところ、50人もの従業員を雇えるようになったとのこと。季節ごとの果物や野菜を植え、年中レジャーを楽しむことができる工夫がされています。参加留学生たちは感心している様子でした。
初めてのしいたけ狩り。
JICA海外協力隊グローカルプログラム実習生と一緒に溶岩BBQにも舌鼓をうちました。
いよいよ、寺坂棚田ホタルかがり火祭り
午後はいよいよこの日のメインイベント、寺坂棚田ホタルかがり火祭りです。地元の方々の指揮のもと、約600個のかがり火を設置していきます。留学生は、グローカル研修生とチームを組み、かがり火の台を田んぼの畦道に設置していきました。
午前中は晴天だった空も、お昼過ぎにはだんだん雲行きが怪しくなっていき、途中、はげしい雨にも降られてしまいましたが、留学生とグローカル研修生は、カッパや雨傘をさして、どうにか準備を終えることができました。夕方、暗くなってきたら、明かりを灯していよいよ本番を迎えます。どうか雨が止みますように…
竹の廃材とペットボトルでつくったかがり火の台
かがり火を点灯する頃には雨もやみ、武甲山をすっぽり包んでいた雲もどこかへ消えていきました。日が落ちて、あたたかな光の粒が棚田に広がっていきます。
いつの間にか、まちの中と外から多くの人が集まり、地元の方の出店も賑わっています。田んぼの真ん中では演奏会が行われ、道を行く人々は、思い思いに歩き、立ち止まって写真を撮っていました。幻想的な風景の中、日中の暑さと雨の中の苦労も、報われたような気がしました。
寺坂棚田のホタルのかがり火の風景
3日間を振り返って
最終日は、横瀬町の隣にある秩父市内を散策しました。昭和の景観が残る道を歩きながら、参加留学生4人に、この3日間の感想を聞いてみました。
徳島県の鳴門教育大学に留学しているロリーンさん(セーシェル)は、「現在住んでいる徳島、そして今回の横瀬町など、日本の地方でさまざまな取り組みをされていることを知ることができた」とのこと。セーシェルも小さな国であるため、小さいなりの強みや工夫について考えることができたそうです。
東洋大学に留学中のウォルターさん(パプアニューギニア)は、横瀬町の民間連携の取り組みがとても印象に残ったようでした。「パプアニューギニアでも、官民連携は重要なトピックです。スタートアップ支援やパイロットプロジェクト誘致など、横瀬町から新しいアイデアをもらいました。」特に日本の地方自治体が町内外の民間企業等の事業者と密に連携して地域創生を推進している点に大きな感銘を受けたようです。
広島大学のニルバーンさん(モーリシャス)は、横瀬町から学ぶだけでなく、まちに提案できるようなアウトプットの機会が欲しい、とフィードバックをしてくださいました。モーリシャスでは観光庁に勤務していたため、いろいろなアイデアを思いついたそうです。後日、横瀬町への報告会の機会を設けますので、提案を楽しみにしたいと思います。
関西学院大学に留学しているキマエレさん(キリバス)は、この3日間をのびのびと過ごされたようでした。グローカル実習生1名が、これからキリバスに派遣予定の隊員であり、互いに貴重な交流になったのではと思います。
初の試みとなった地方自治体でのインターンでしたが、日本の大学院で地方行政、地方創生について研究している留学生にとって、現場を体感できる貴重な機会となりました。
今後より留学生と地方自治体、お互い学びの多いプログラムとなるよう、引き続き、企画していきたいと思います。
改めまして、横瀬町の町役場はじめ、JICA留学生と交流いただいた皆様、ありがとうございました!!
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