【開催報告】未来の市場はここにある!都市環境課題をビジネスに変える旅~バングラデシュ都市環境ビジネス・スタディツアー~
2025.09.19
Savar-Keraniganj Well Field浄水場事務所
著しい経済成長を遂げ、近年では有望な新興国として注目されているバングラデシュ。約1億7千万人の国民の多くが、日本の本州よりも狭いデルタ地帯に居住しており、特に首都ダッカの人口密度は東京23区の人口密度の2倍を超えます。
ライフスタイルの変化と急激な人口増加に環境整備が追いつかず、大気汚染、上下水道の整備、廃棄物処理などの分野で多くの課題を抱えており、課題解決のため、さまざまな製品やサービスの導入が求められています。
そのようなバングラデシュの首都ダッカにて、2025年7月、社会課題をビジネスの力で解決しようとする企業9社が参加し、「バングラデシュ都市環境ビジネス・スタディツアー」を実施しました。
ここでは参加企業による視察内容の一部を、開催報告としてご紹介します。
イベント:バングラデシュ都市環境ビジネス・スタディツアー
開催日:2025年7月19日(土)~2025年7月23日(水)
場所:バングラデシュ国ダッカ市
主催:国際協力機構(JICA)民間連携事業部 企業連携第一課
本邦企業にバングラデシュ市場や現地人材の可能性、ニーズ、都市環境に関する課題への理解を深めていただき、JICAの中小企業・SDGsビジネス支援事業(JICA Biz)の活用につなげることを目的に開催しました。
<バングラデシュ環境分野基本情報のブリーフィング>
ツアー初日には、JICAバングラデシュ事務所およびJETROダッカ事務所にて、都市環境関連ビジネスを展開する上で必要な基本情報について講義を受けました。50年以上にわたる日本の支援を背景に、良好な二国間関係が維持されていること、現在進行中のJICA事業、同国の政治・経済動向、日本企業の進出状況や直面する課題などについて学び、質疑応答も行いました。
また、バングラデシュ国内の工業排水や廃棄物処理等、環境行政を担当する環境局を訪問し、河川の水質改善に繋がる技術・プラスチック再生関連の技術等に活用の可能性があること等につき、同局から説明を受けました。
基本情報ブリーフィングの様子
<上下水関連>
ダッカの水道普及率は約70%。急増する人口と水需要に対応するため、新たな水源開発に加えて、既存の給水システムを効率的に活用するための無収水対策やDX(デジタルトランスフォーメーション)の推進が、当局の重要な関心事項となっています。
ツアーでは、地下水(深井戸)を水源とする Savar-Keraniganj Well Field浄水場を視察し、取水から配水までの工程について説明を受けました。
下水分野では、最新設備を備えた Dasherkandi下水処理場 を訪問しました。処理場は稼働しているものの、対応エリアはダッカ市の約20%にとどまっています。ダッカ市内を歩くと至るところで川の汚れが目につき、下水処理施設と排水ネットワークの拡充が重要となっています。
2023年に環境保全規制が改定され、産業排水に対する排出規制が大幅に強化されました。ツアー視察先のArk Washing Ltd.(縫製品洗浄工場)では、建物内に設置された処理設備を使って、その場で排水処理(オンサイト処理)が行われていました。一方で、適切な処理設備が設置されていなかったり、故障したりしている事例も存在し、当該規制の執行・モニタリングには課題があると言われています。
ダッカ市内の川の様子
縫製洗浄工場の排水処理設備
<廃棄物関連>
ダッカ市の廃棄物処理の流れを知るため、一般住宅、廃棄物の中継施設(STS(Secondary Transfer Station))、そして最終処分場であるMatuail Sanitary Landfillを視察しました。
ダッカ市では、家庭から出るごみの多くが分別されないまま袋に入れられ、一次収集業者などが荷車などを使って回収します。その際、ペットボトルや缶・ビンなどの有価物が収集され、残りがSTSへと運ばれます。現在、ダッカ市には焼却施設などの中間処理施設が存在しないため、STSに集められたごみは毎日そのまま最終処分場(埋立地)へと搬送されています。
最終処分場では、翌日の搬入に備えてスペースを確保する必要があるため、複数台のショベルカーがゴミ山の上でフル稼働し、整頓作業を行っていました。
ごみ収集率は改善しているものの、こうした公式の収集ルートに未だ乗らないごみも市内の至る所に散乱しており、川辺や空き地には堆積したごみが目立ちます。
医療現場での環境保全取組の事例として、Ship International Hospitalで排水のオンサイト処理を視察するとともに、医療廃棄物の分別廃棄の流れの説明を受け、また、Matuail Sanitary Landfill(最終処分場)では処分場内にある医療廃棄物の集中処理の現場も視察しました。
視察を通じ、ごみの発生抑制や中間処理による減容化、安全な医療廃棄物処理、電子廃棄物の適切な処理など、日本の廃棄物関連技術が貢献できる可能性のある分野が多く存在すると感じられました。
市内のあちこちでゴミが散乱しています
最終処分場の様子
<現地企業等の視察>
参加企業からの要望を受け、バングラデシュの現地企業の雰囲気を体感していただくため、現地のエンジニアリング企業を訪問しました。
訪問先の CADSON社 は、オーダーメイドで産業機械を製造している企業です。顧客から相談があると、社長自らがインターネットや書籍を活用して関連情報を収集し、設計ソフトを使って図面を作成。必要な材料を調達し、製造まで一貫して対応しているとのことでした。
限られた資源の中で工夫を凝らしながら製造プロセスを完結させる姿勢に、現地企業の実践的な対応力や柔軟性を感じることができました。
CADSON社オフィスでのヒアリング
<参加企業の声>
・通常民間企業だけでは訪問できない場所を訪問でき、貴重なネットワーク構築の一助となった
・バングラデシュの人々の人柄や同国市場の可能性を肌で感じることができた
・今回の訪問を通じ、バングラデシュで事業展開を検討するための具体的な情報を得ることができた
・実際に現場を見ることで、技術がどこに活用できるかをより明確に理解することができた
・政府関係者や民間企業の方々と直接対話でき非常に有意義だった
エンヴィックス有限会社
興亜商事株式会社
GOMIソリューションズ株式会社
株式会社トーケミ
日揮ホールディングス株式会社
日本電計株式会社
日本ベーシック株式会社
BALIISM Japan株式会社
株式会社LIXIL
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