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- JICA事業後を念頭においたアクションとは?
途上国ビジネスの世界にようこそ。魅力的な市場が広がり、活力のある人材が溢れる途上国。第十一回目となる本コラムでは、「JICA事業後を念頭において取り組むべきアクション」について解説していきます。JICA事業後のアクションプランが明確になっていない場合、必要なアクションを必要なタイミングで実行することができず、JICA事業期間中に醸成したビジネス機会を逸してしまう恐れがあります。JICAの民間連携事業を活用した企業を対象に行った事後モニタリング調査の分析からも、JICA事業後のアクションプランの有無とビジネスの成否に関係性 が見られることが分かっています。(図1)。
(図1)JICA事業後のアクションプラン有無とビジネス成否の関係性
実際にJICA事業後のビジネス化に成功したある企業では、事業計画を明確に作成し、計画に従いアクションを実行しました。その結果、現地での普及に向けた公共調達採択のために行うべき手続きを着実に行い、国家標準研究機関による型式承認試験に合格という成功を収めました。
では、どのようなアクションプランを立てるべきなのでしょうか。適切なアクションプランは、JICA事業の状況や、事業計画の内容に応じて変わってきます。自社がどのようなアクションを取るべきかを整理するためには、まずビジネスモデル・収支計画・事業計画が作成されていることが大切です。実現可能な事業計画があってこそ、適切なアクションを決めることができます(収支計画については、第十回コラム「海外進出時におさえるべき収支計画のポイントとは?」でご紹介しています)。また、アクションを実行した結果、ビジネスモデル・収支計画・事業計画に変更が必要な場合は、当初の計画に固執せずに、柔軟に変更していくようにしましょう。JICA事業後に実現したいことを明確にした上で、アクションプランを整理するにあたって押さえるべきポイントがありますので、ぜひ自社の状況を振り返る一助となれば幸いです!
製品・サービスの現地化を実践する方法を検討できていますか?
JICA事業中に行った製品・サービスの現地化検証・実証活動の結果を踏まえ、製品・サービスをどのように現地化すべきか、方法は明確になっているでしょうか。現地のニーズに適合させるための製品改良や現地仕様向けの製品開発、現地の想定顧客が支払可能な価格設定等、現地適合化のための様々なアクションを洗い出し、JICA事業後いつまでに取り組むべきか整理するようにしましょう。
効果的な販売促進方法を検討できていますか?
ターゲットとなる顧客層に応じたプロモーション、デモンストレーションを通じた効果的な販売促進は、現地で売上を実現するために欠かせない要素です。現地の状況に合わせて、どのような販売促進方法が効果的か、誰がその方法を実行するのか、調査できているでしょうか。JICA事業が終了したのちは現地活動拠点が存在する場合を除いて、日本を拠点に販売活動をリードしていく必要があります。この販売促進を現地の誰に委託するのか、どのように委託するのかといった有効な販売促進方法を明確にしましょう。
流通・サプライチェーンを構築できていますか?
製品・サービスを安定的に供給できるかどうかもビジネス展開には欠かせない要素であり、そのためには適切なサプライチェーンの整備も必要です。日本でのやり方を踏襲するのではなく、現地の事情や慣習を踏まえて、誰と、どのようなサプライチェーンを構築すべきか、調査・検討を行っていますか。適切なサプライチェーンが構築されているか否かを検証するツールとして、サプライチェーンに関与しているステークホルダーが有している「価値」に着目したバリューチェーン分析が挙げられます。バリューチェーン分析を通じてサプライチェーンの強み、弱みを客観的に分析し、弱みを自社で補填するのかもしくは、第三者と協働することで補強するのか、強みを他社との差別化要因としてどのように伸ばすかといったアクション項目の洗い出しが可能となります。適切な流通方法を特定し、これを分析できているか確認していきます。この分析を通じて、JICA事業後のオペレーションを誰がどのように行うかを明確にしていきましょう。
最後に:継続してアクションを起こすために
策定したアクションプランを確実に実行し、必要に応じて柔軟にプランを変更し再実行していくためには、社内の持続的な事業推進体制を構築すること、また社外パートナーと継続的な関係性を構築していることが重要です。
JICA事業中は、適切なメンバーを配置して社内のプロジェクト体制を整えていると思います。しかし、社内事情や各メンバーの状況によっては、その体制をJICA事業後に継続できるとは限りません。現地でのビジネス展開を見据えた時に、同じ体制を継続できるでしょうか。JICA事業後もビジネス化に向けたアクションを継続していくためには、社内体制も持続的なものでなくてはなりません。人事異動の問題、予算の問題、経営方針の転換の問題等により事業推進体制の維持は事業化のボトルネックとなりうると思いますが、継続してビジネス化を推進するアクションを取るには小さな成果を出し続ける事業体制の構築が必要となります。仮に、体制の再構築が必要な場合は、JICA事業後に途切れなく社内体制を整えるためにどのような手を打つ必要があるかを検討しましょう。
また、現地でのビジネス展開を促進するためには、社外パートナーの存在が欠かせません。JICA事業中に適切な社外パートナーを確保し、JICA事業後も社外パートナーと良好な関係を継続できている例もありますが、一般的に、JICA事業を通じて得た関係性は、経年に伴い弱くなる傾向があります。この希薄化の要因としては、やはり社外パートナーとの物理的な距離よりも心情的な距離が挙げられます。では、なぜ心情的な距離が発生してしまうかについて考えてみると、事後モニタリング調査においてインタビューさせていただいた企業の回答から興味深い傾向が浮かび上がりました。それは共通の達成すべきゴールとそのゴールまでの道筋を描いたアクションプランが共有されていない点でした。共通の利害関係にない他社と時間の経過とともに疎遠になるのはある意味必然のように思われます。このことからもわかるように、JICA事業中に社外パートナーとの関係性を強めておき、JICA事業後に一緒に取り組むことを明確にしておくと良いでしょう。(社外パートナーについては、第九回コラム「海外進出成功の鍵 “社外パートナー” とは?」でご紹介しています)
いかがでしたでしょうか?自社の状況に応じてJICA事業後にどのようなアクションが必要かを検討する際に、参考になれば幸いです。実行可能なビジネスモデル・収支計画・事業計画を策定した上で、明確なアクションプランを整理し、ビジネス化実現に近づいていきましょう。
次回のテーマは、「ビジネスモデル策定時のポイントとは?」です!お楽しみに!
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