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第五回JICA海外移住「論文」および「エッセイ・評論」授賞者インタビュー第2弾

2025.02.17

大島正裕さん(「エッセイ・評論」部門 最優秀賞受賞)と小迫孝乃さん(「エッセイ・評論」部門 優秀賞受賞)へのインタビューシリーズ、第2弾。今回は、小迫さんのインタビューです。皆さんもインタビューを読んで、ぜひ第六回にご応募ください!

【募集要項】

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「時間と好奇心が原動力でした。」

大野裕枝館長(以下、大野):小迫さんは、アメリカに渡ったおじい様のことを調べてほしいというお母様の一言から、アメリカにいるご親戚にたどり着くというドラマのようなお話をエッセイにしていただきましたが、そこまでたどり着く原動力は何でしたか?

小迫孝乃さん(以下、小迫):暇だったんです(笑)。もともと短大の時に日本文化史科で近現代ゼミに属していたので、戦前戦後の大衆文化が好きでした。40代で大学の現代社会学部に編入しました。今回の調査は、これまで学んできたことがすべて役に立ちました。今見ていることが将来の歴史になるというのがすごく面白いです。曽祖父である和助(いつも和助と呼んでいます。)の生きた時代が自分の好きな時代でもありました。とにかく好奇心です。時間と好奇心が調査の原動力でした。

大野:家族の物語から日露戦争や第二次世界大戦との関係など、どんどん広がっていく様子が感じられました。

小迫:歴史の中で戦争というのは、私たちにとって遠い昔のことですよね。教科書だけでは分からない部分もあって。和助の人生を見ると、実に3つの大戦全てに関係していました。日清戦争の時は、おそらく徴兵の抽選に漏れて戦争に行かなくて、日露戦争の時は海外移民には徴兵猶予があったので、そのまま日本に帰国しませんでした。そして、太平洋戦争が起こります。歴史上の大きな出来事が和助の人生に絡んでいて、調査を通じてその延長線上に私がいることを自覚しました。

日本にある和助の名前を全部調べるという意気込みで、戸籍謄本はもちろん、旅券や移民会社の台帳、アメリカの資料も調べました。アメリカはデジタルコレクションが充実していましたし、ネット上でいろいろなものが見つかりました。英語の筆記体で書かれた和助の手紙も見つかって、本当にきれいな文字で書いてありました。「現地に溶け込む努力をしたんだな。がんばったんだな、じいちゃん。」と思いました。結局、太平洋戦争が始まり、和助は収容所に入れられ、家族と離れて一人で亡くなりますが、当時の写真も出てきて、本当に和助はアメリカに存在していたんだと思いました。

最終的に日本やアメリカにいる親戚と繋がることができました。ちょうど、和助の150回目の誕生日の年で、それで盛り上がってアメリカで誕生祭やろうとなって、母と娘がアメリカへ行きました。そこで出会った人たちは和助を大切に思う親戚で、すべてにご縁を感じました。

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「エッセイ・評論」部門 優秀賞受賞 小迫孝乃さん

「もっと学びたい。隙間を埋めたい。」

大野:授賞式の際、さらに学んでいきたいとおっしゃっていましたね。

小迫:実は、もっと和助の人生の隙間を埋めたくなってきて、どうやって和助は船に乗ったのか、船に乗ってからどうしたのかを調べ始めました。海外移住資料館の閲覧室はもちろん、日本郵船博物館などにも問い合わせました。全国の図書館のレファレンスの方にも協力していただいて、資料を集めることができました。ただ、最後に横浜を出航したというのは分かりましたが、いつ出発したかまでは分からなくて。関東大震災で書類が焼失してしまった可能性もあるでしょう。こんな形で震災の影響を受けるなんてと思いました。

大島正裕さん:私も同じようなことしてますけど、ここまで徹底して調査するのはすごいですよ。

小迫:本当ですか!褒められるのが好きなので、嬉しいです。和助マニアって言われています(笑)。和助をテーマにそこから歴史を紐解くという作業をして、知られていないことを調べるという役割が自分にはあると思いました。かつて移民に出たたくさんの日本人たちが戦争を生き抜いて、頑張って働いて、現地で信頼を得たということが、今の私たち日本の幸せにつながっているということを伝えていかなければいけません。

大野:お子様や親戚の方の反応はいかがでしたか?

小迫:娘が非常に興味を持ってくれて、特派員としていろいろと助けてくれました。ネットなどの写真の裏付け調査をしていたんですが、和助の息子さんの写真が一枚でてきて、娘に調査を頼みました。写真に「ワールドチャンピョン」って書いてあるんです。期待しますよね。そうしたら、なんと村の何かの大会の金すくいチャンピョンだったんです。優勝するために夫婦でたくさん練習したらしいです。実はこのネタがルーツ探しにとても役に立ちました。(このネタ、昨日娘から譲ってもらいました!)

大野:金すくいチャンピョンのおかげでいろいろと広がっていったんですね。話が尽きない!

(第3弾につづく)

受賞作品はこちらから

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アメリカで行われた生誕祭の様子は、ディスカバー・ニッケイでお読みいただけます。
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