阪神・淡路大震災から31年。関西から未来へ、世界へ
2026.03.23
JICAは日本と途上国をつなぐ次世代の親日派・知日派リーダーとなりうる人材を戦略的にJICA留学生(以下、留学生)として受け入れています。留学生は母国の将来を担う意欲と能力を持った行政官や研究者等で、帰国後は母国の国づくりを担い活躍することが期待されています。
「JICA開発大学院連携プログラム(JICA-DSP)」ではプログラムの一環として、日本各地で培われてきた地域特有の開発事例を学ぶ「地域理解プログラム」を提供しています。
JICA関西センターではこの度、3月2日から4日の3日間にわたり「阪神・淡路大震災からの復興」と題して、地域理解プログラムを実施しました。震災から31年目を迎えた今、防災教育をテーマに人づくりによる防災の重要性を学びました。18名の留学生が参加し、最終日には、3日間の学びを参加者同士で共有し、学んだことを世界へ、未来に伝えるメッセージとして、「防災キャッチコピー」を作成しました。
【FASTによるワークショップ】
京都学生FAST(Fire And Safety Team)(注1) による防災ワークショップでは、新聞紙で防災スリッパを作成した後、防災ボードゲーム “Choice” の実践を行いました。新聞紙スリッパの製作では、身近な材料を使って安全を確保する工夫を体験し、防災を日常の延長線上にあるものとして捉えるきっかけとなりました。ボードゲームでは、災害発生時・避難所生活・復興期などの場面を想定し、クイズを交えながら留学生同士が意見交換を行い、自分たちなりの判断を導き出す姿が見られました。
留学生からは、「ゲームを通して災害が起きたときの行動を考えられた」「クイズの回答には日本特有のものもあり、自国ではどうなのか考える良い機会になった」といった声が寄せられました。また、ボードゲームについては「教育現場でも使える魅力的な教材なので、ぜひ自分の国にも持ち帰りたい」といった意見もあり、学びと交流の両面で充実した内容となりました。
(注1) 京都府内の大学生消防防災サークルで構成された京都府公認の学生ネットワーク
【DRLC講義と「防災」を考えるグループワーク】
午後の部では、DRLC(国際防災研修センター)(注2)による講義と、防災をテーマにしたグループワークが行われました。最初に、DRLCの担当者から、国内外でJICAが取り組む防災事業について紹介があり、各国の災害リスクに応じた支援の仕組みや、防災力向上に向けた協働の重要性などが紹介されました。講義中には、留学生から自国でのJICAの具体的な活動内容について多くの質問が寄せられ、活発な意見交換が行われました。
続くワークショップでは、各国で発生している災害の特徴や現在進められている対策について情報を共有しました。その後、「自国の言葉に“防災”にあたるものがあるのか」「防災を広める上で、どのような考え方を大切にしたいか」といったテーマで議論を行いました。特に、“防災”という概念を自分の文化や言語にどう落とし込むかについて、他国の留学生と話し合いながら考えました。
多くの留学生が「完全に同じ意味をもつ言葉は自国には存在しない」と回答する中、ガーナの留学生が「ガーナではポジティブな事柄のみを表現する文化があるため、災害や震災にあたる語が存在しない」と語ったことは、会場の関心を惹きつけました。また、同じ地域の国同士で共通点を見つけて盛り上がる姿や、国や文化による防災観の違いを新しい学びとして受け止める留学生の姿も見られ、多様な国や地域の視点から防災を考える貴重な場となりました。
(注2)2007年4月にJICAと兵庫県が協力し設立した開発途上国の防災野の人材育成を行うセンター。阪神・淡路大震災をはじめとする日本の過去の大災害から得た防災の経験と教訓を発信し、開発途上国の防災力向上を目的とした研修を企画・実施している。
【EARTH員 前川先生の講義】
兵庫県の教職員等で構成される震災・学校支援チーム「EARTH」から、味間小学校勤務の前川先生を講師に迎え、教育現場における防災教育の取り組みについて講義を行いました。授業づくりの工夫や、日頃から子どもたちと向き合いながら進めている実践例など、防災教育の概要から実践まで幅広い視点でお話しいただきました。前川先生は学校における防災教育で重要なことは「子どもたちが自分で考え、発災時に自分自身で決断できる力をつけること」だと言います。留学生からは「現場で防災教育を実践している先生から直接お話を聞くことができ、とてもリアルだった」という声も聞かれ、教育の最前線に触れる貴重な機会となりました。
質疑応答では、「AIの発達により子どもの思考力に課題が見られる今、防災で求められる自己判断力をどのように育成しているのか」「防災教育に取り組む上で、教師として苦労していることはあるか」など、実際に学校で働く先生にだからこそ質問できる内容が多く挙がりました。留学生は、教育現場の実態を知ることで、防災教育が抱える課題や可能性をより深く理解している様子が見られました。
【人と防災未来センターの見学】
人と防災未来センターでは、阪神・淡路大震災発生時の状況を再現したシアターや、震災後の復興の日々を記録した展示を見学しました。留学生は、震災の記憶をたどりながら、「備えることが命を守ることにつながる」という防災・減災の視点を体験的に学びました。展示の中でも、当時の復興過程を伝える資料や写真・映像は特に強い印象を与えたようで、ある留学生は「自国では1年前の地震からの復興活動がまだ十分に進んでおらず、多くの課題が残っている。この記録には、自国の復興に役立つヒントがたくさんある」と語っていました。
今回の見学を通して、過去の経験を次世代へとつないでいくことの大切さ、そしてその経験をもとに“自ら判断できる子どもを育てる”ことを目指す防災教育の重要性を改めて認識する機会となりました。
【防災キャッチコピーの作成・発表】
最終日は、これまでの二日間の学びをもとに、各グループで「防災キャッチコピー」を考案し、発表を行いました。留学生は、防災という概念にはどのような意味や要素が含まれているのかを議論し、誰にとっても伝わりやすい表現とは何かを丁寧に検討していました。発表では、キャッチコピーの紹介だけでなく、三日間を振り返りながら、防災教育の重要性について自分の言葉で語りました。
各グループが提示したキャッチコピーはいずれも魅力的で工夫に富んだものでしたが、どのグループも共通して「備えの大切さ」を強調していたことが印象的でした。また、「次の世代へ伝えること」や「防災教育が未来をつくる」という視点を大切にする姿勢が随所に見られ、教育者や政府関係者として、それぞれの立場から防災教育の価値を深く受け止めていました。
最優秀作品に選ばれたのは、“Be alert, Be safe”。「備えることが自分を、家族を、そして大切な人を守る」という防災の本質が端的に込められたキャッチコピーであり、そのメッセージ性が高く評価されました。この“Be alert, Be safe”は、今後JICA関西における防災教育のキャッチコピーとして活用される予定です。
イベントに参加した留学生からは以下のような様々な声が寄せられました。
【3日間で学んだこと】
「発育の早い段階から子どもに対して『防災教育』する重要性を学んだ。」
「『防災』は、特別なものではなく、日常生活に根付いたものであると感じた。」
【自身の専門分野と関連して考えたこと】
「ICT・教育・防災は深く関連しあっており、デジタルスキルと防災意識を高めプログラムを学校教育に取り入れることで、より強固な社会をつくることができると考える。」
「『防災』に取り組むことで人の命もまちも守ることができ、復興にかかる困難を減らすことができると考える。」
【この経験をどう活かしていきたいか】
「教育者としてプログラムでの学びを自国の子どもたちに伝える授業を行いたい。」
「避難訓練やCPR(心肺蘇生法)トレーニングのような実践的な防災教育を将来的には自分の国でも導入していきたい。」