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- JICA留学生が感じた「こども食堂」の魅力!(※1)「わたしの第二のホーム(家)」~ガーナのマリアムさん~
【こども食堂前の公園で】
研修コース名:ABEイニシアティブ・2024年度・第11バッチ・神戸情報大学院大学情報技術研究科(修士課程)(※2)
研修期間:2024年9月18日から 2027年3月31日まで
ガーナ出身のマリアムさんは、現在、神戸情報大学院大学の修士課程で、ICT技術を駆使して社会の課題を解決する方法を探究しています。彼女は、ガーナで高校のIT教師として勤務した経験を持ち、母国の教育課題解決に情熱を注いでいます。特に、都市部と農村部の教育レベルの格差を解消するために、ICT技術を活用した革新的なアプローチを模索しています。
2024年12月から4か月間、兵庫県神戸市灘区にある地域共生拠点・あすパーク「つなぐおにぎり食堂」に通い、「こども食堂」の魅力を深く感じ取ったマリアムさん。その経験を大阪国際交流センターや大阪・関西万博会場でのイベントで熱く語りました。彼女が得たヒントやこれからの展望、そして世界の子どもたちへの思いを伺ってみましょう。(※3)
【大阪・関西万博での登壇の様子】
【最初はとても緊張したことを振り返る】
【JICA留学生たちとこども食堂・むすびえ・JICA関西のスタッフ】
なぜ「こども食堂」へ行ってみようと思ったのですか?
【つなぐおにぎり食堂のスタッフたちと】
【おにぎりを作るマリアムさん】
こども食堂のプロジェクトに参加することを決めたのは、子どもたちに無料で食事を提供し、食事を楽しみながら交流する場があることを知ったからです。私は、日本の街中や電車内で、子どもたちが私の肌の色を不思議そうに眺めているのをよく感じていました。こども食堂に参加することで、日本の子どもたちにアフリカの豊かな文化や私の肌の色について知ってもらう素晴らしい機会となりました。ボランティアをしたいという気持ちは強かったものの、日本語があまり得意ではないため、どのように受け入れられるか心配していましたが、驚くことに、皆さんはとても親切で、おにぎりとみそ汁の作り方を丁寧に教えてくれました。
実際に通ってみて、「こども食堂」ってどんなところだと感じましたか?
【ガーナはどこ?】
【子どもたちとの会話を楽しむマリアムさん】
最初は緊張していましたが、スタッフや子どもたちの温かい歓迎を受け、心がほぐれて楽しい気持ちになりました。特に印象的だったのは、子どもたちが「どこから来たの?」と尋ねてきた時です。「ガーナよ!」と答えると、彼らはすぐにスマホで検索して、「わあー!ガーナ・チョコレート!」と大興奮。みんなで大笑いした瞬間、心の距離が一気に縮まるのを実感しました。また、私の手をさすって感触を確かめる子どももいて、普段あまり見ることのない自分とは違う存在を少しずつ受け入れようとしている様子が伝わり、とても嬉しく思いました。
そんな素晴らしい体験をさせてくれた「こども食堂」は、私にとって「第二のホーム」。ホーム(家)とは、愛されていると感じ、自分の居場所があると感じられる場所だと思います。
ガーナにも「こども食堂」のような場所はありますか?
ガーナには「ドゥドゥフグ(DUDUHUGU)」と呼ばれる素晴らしい行事があります。このイベントは、近代化や都市化によって忘れ去られつつある郷土料理を守るために行われており、この点で「こども食堂」とは異なります。ダゴンバ族の伝統的な料理をたくさん作り、コミュニティの子どもたちと分かち合うことで、地域の伝統や先祖を大切にする心を育み、文化の継承とコミュニティの絆を深める貴重な機会となっています。
【ガーナの料理】
【大量に作って子どもたちとシェアします!】
今後の計画、夢について聞かせてください!
「こども食堂」での経験は、私に新たなひらめきを与えてくれました。ガーナ北部のタマレ地域では、食べ物を手に入れることが難しい状況にあります。ガーナに戻ったら、私が創設したNGO団体「MASUNG(=良き母)」を通じて、SDGsの目標2「飢餓をゼロに」に向けた取組みとして、「こども食堂」のようなプロジェクトを立ち上げたいと考えています。このプロジェクトを通じて、子どもたちに安心して食事を楽しめる場を提供し、地域の未来をより明るくする手助けをしたいと思っています。
未来を担う子どもたちに何を一番伝えたいですか?
(世界の子どもたちへ)
どこで生まれても、あなたは世界をより良くする特別な能力と才能があります。好奇心を持ち、規律を守り、自分にも他人にも優しくしてください。互いを受け入れ、公平であることを心がけ、世界をより良い場所にしましょう。世界はひとつ。あなたは未来を担う人たちです。良い人になり、世界をより良い場所にしてください。
(ガーナの子どもたちへ)
私はガーナから遠く離れた場所で、国際的な立場からガーナの発展に貢献するJICA留学生になりました。生まれた場所が、あなたを決めるわけではありません。最高の自分になるために努力を続けてください。自分の文化を受け入れ、年長者を尊敬し、学校で一生懸命勉強してください。世界はチャンスに満ち溢れており、皆さんは未来のリーダーです。チャンスを逃さないよう、つかみに行きましょう。
(日本の子どもたちへ)
好奇心を持って真剣に取り組めば、課題の解決策を見つけられます。規律を守り、年長者を敬うことはあなたたちの強みです。悩むことがあれば、口に出してみてください。問題を共有することは、解決への第一歩です。世界中のすべての子どもたちは未来のリーダーです!
お話を伺って、マリアムさんが体験した「こども食堂」の魅力の一端に触れることができました。普段の研究生活とは異なる、地域コミュニティの人々との心温まる交流と深いつながり。自分の生活圏に、自分を理解し、ありのままを受け入れてくれる人々がいるという安心感から生まれる心の平安・安定は、何にも代えがたいものだと思います。異国の地で頑張る日々に、自分の「居場所」と思える場所を見つけることで、より心豊かな日本での生活を送ることができているのかもしれません。当たり前のことかもしれませんが、改めてその大切さに気づかせてくれる貴重な機会となりました。
また、マリアムさんのメッセージも世界中の子どもたちに向けた深い愛と希望にあふれていましたね。彼女の笑顔と優しさに触れた皆さん、どうかその翼を広げて、世界へと羽ばたいてください!
※1:JICA留学生とは、JICAの人材育成プログラムで来日し、日本の大学院(修士課程あるいは博士課程)を通じ、母国の開発に寄与するために総合的かつ高度な技術や知識の習得を行っている、開発途上国の行政官、研究者、民間企業出身者などです。JICA留学生は、将来国の発展を支えるリーダーとなることが期待されており、また、自身の専門の研究とともに、日本の近代化の歴史を学ぶことで、日本と途上国をつなぐ架け橋となることも期待されています。
※2:「ABEイニシアティブ」(アフリカの若者のための産業人材育成イニシアティブAfrican Business Education Initiative for Youth)は、アフリカの産業人材育成と、日本とアフリカのビジネスをつなぐ架け橋となる人材の育成を目的として、アフリカの若者を日本に招き、日本の大学での修士号取得と日本企業などでのインターンシップの機会を提供するプログラムです。
※3:JICA関西は、認定NPO法人全国こども食堂支援センター・むすびえ(むすびえ)と連携し、関西地域の大学院に通う開発途上国からのJICA留学生9名がこども食堂を通じた多文化共生社会の実現を目指すプログラムを実施しました。
開発大学院連携課 花木仁奈
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