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高専生が挑むアフリカ課題解決 ~JICA×長岡技術科学大学:高専オープンイノベーション(KOI)がキックオフ!~

2024.06.04

 2024年6月4日、全国の高等専門学校と地元の企業が連携してアフリカの課題解決をめざす取り組みである「高専オープンイノベーション(KOI)(以下高専OI)– Challenges from Africa - キックオフイベント 」が新潟県長岡市の国立大学法人長岡技術科学大学(以下長岡技科大) で開かれ、参加する学生の募集が始まりました。

「高専OIのキックオフイベント」(2024.4 長岡技術科学大学)

 高専OIは、2019年5月に JICAと高専のコラボ企画「KOSEN Open Innovation Challenge(KOIC)」としてはじめて開催されました。私(筆者)は、当時、宇部高専と徳山高専の特別任命准教授をしており、北九州、有明、佐世保、都城、宇部、長岡の6高専が集まったこのイベントに宇部高専の引率として参加していました(写真参照)。現在、長岡市でJICA国際協力推進員(外国人材・共生)、通称「長岡デスク」をしていますが、このイベントがきっかけでJICAとつながり、長岡に来ることになったのです。私にとっても、まさに人生を変えたイベントでした。

「KOSEN Open Innovation Challenge」(2019.5 北九州高専)前列左から3人目が筆者

 このイベントの第一回目開催時に、長岡高専の学生が開発しケニアの課題に取り組んだ試作品は、現地で高い評価を受けました。これが縁となり、「JICA-高専イノベーションプラットフォーム」が設置され、2019年10月にJICA並びに長岡高専及びNPO法人長岡産業活性化協会NAZEとの間で、同プラットフォーム設置のための連携協定が締結されました(JICAと高専の連携協定覚書の締結及びアイデアソン発表・審査会の開催 | セミナー・シンポジウム報告 | ニュース - JICA)。続いて、同年12月には、JICAと北九州高専、佐世保高専及び徳山高専との間で連携協定の覚書が締結され、JICAと高専の距離がさらに近づきました。
 一方で困難もありました。KOICは担当教員の負担が大きいことと、多忙な高専生を集めるのに苦労したのです。それでもアフリカの課題を解決したい、という思いからトータル4回実施され、全国13の高専から延べ203人が参加するイベントとなりました。こうしたチャレンジが評価され、2023年2月の内閣府主催「第5回日本オープンイノベーション大賞」でKOICが最高賞である内閣総理大臣賞を受賞することになったのです(「JICA-高専オープンイノベーションチャレンジ」の取り組みが「第5回日本オープンイノベーション大賞」内閣総理大臣賞を受賞 | 2022年度 | ニュースリリース | ニュース - JICA)。
 その後、KOICは、新体制として高専から長岡技科大学へと運営母体が引継がれることになりました(長岡技術科学大学とアフリカ地域のソーシャルイノベーションに関する教育研究の覚書を締結 | アフリカひろば - JICA)。長岡技科大は高専の大学院にあたるため、これまで以上に全国の高専生を募りやすくなることが見込まれます。長岡技科大は、「科学技術」ではなく「技術科学」と名乗っています。高専同様、「技術」に重きを置き、アカデミックよりも社会実装を重視した大学院であると私は思っています。JICAと長岡技科大が共同で全国の高専生に呼びかけ、アフリカの課題を地元の企業と連携して解決を目指します。

「第5回日本オープンイノベーション大賞表彰式」(2023.2 内閣府合同庁舎8号館1階講堂)

 6月4日のキックオフイベントには、長岡技科大の鎌土重晴学長、JICAから中村俊之理事長特別補佐らが顔を揃えたほか、駐マダガスカル・コモロ日本国大使の阿部康次氏が参列しました。今回の高専OI課題には、マダガスカルの食料生産の仕組みを生み出すためのアイデアを出し合う企画も含まれています。
 イベント冒頭に鎌土学長は、「長岡技科大は『地域まるごとプロデュース』に取り組んでいる。自治体から地球規模までの課題を解決するために、大学の人材やリソースを活用し、今回の事業を推進したい」と挨拶されました。また、過去参加者の体験談として、アメリカミズアブの幼虫を生ごみの肥料・飼料化に役立てる装置を考案しケニアで実証実験を行った斎藤祐功さん(長岡高専から長岡技科大へ進学)から、同プロジェクトが長岡市、企業と連携し、内閣総理大臣賞受賞に至るまでの軌跡が紹介されました。長岡技科大の高専OI担当で水処理の専門家でもある同大の山口教授からは、マダガスカルの水の浄化についての事例が紹介されました。留学生も多数参加しており、セネガルから来ているJICAの長期研修生MANGONE SAMBEさんは、「私は環境都市について学んでいるので、このような取り組みにとても興味がある。日本とアフリカの国々が一緒になって課題解決できたら本当に嬉しい」と語ってくれました。
 これから始まる高専OIに大きな期待が寄せられています。

報告者:JICA長岡デスク 国際協力推進員 原 洋介

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