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【千葉県】教師海外研修 授業実践レポート④ 松戸市立横須賀小学校

2024.12.17

教師海外研修は、教員の方々が実際に開発途上国を訪問することにより、途上国が置かれている現状や国際協力の現場、途上国と日本との関係に対する理解を深め、帰国後は学校現場での授業実践等を通じて、児童生徒の教育に役立てていただくことを目的として毎年実施しています。

今年はJICA東京・JICA北陸の合同開催。1都7県(東京・埼玉・千葉・群馬・新潟・長野・福井・富山)から地域・校種・教科の異なる21名の先生達が、パラグアイ(7/26~8/10)、バングラデシュ(国内代替プログラムに変更、8/9~8/11)のコースに分かれて参加しました。

教師海外研修について詳しくはコチラ
教師海外研修 | 日本国内での取り組み - JICA

9月からは、それぞれが学んだことを児童生徒に還元すべく、続々と授業実践が始まっています。

今回は松戸市立横須賀小学校学校の鬼山彩緒利先生の授業を訪問しましたので、レポートします!

学生デモはいいこと?悪いこと?松戸市立横須賀小学校の6年生が考える!

今年8月、教師海外研修のプログラムでバングラデシュに渡航予定だった鬼山先生。しかし、ちょうどその時期に公務員の採用制度を巡った学生デモが頻発し、渡航が難しい事態に。そこで、自身が現地渡航できなかった原因となった「学生デモ」を題材として、総合的な学習の時間で授業実践を行いました。

「学生デモはいいこと?悪いこと?」という、答えのない疑問に対して考える学習。資料やインタビュー映像から得た情報、そしてグループでの話し合いを通して挙がった友達の考えをもとに、子どもたちは、

「デモのせいで町が壊れたり人が殺されたりしたら、未来を守っていることにはならない。デモをしなくても未来を守る方法もあったと思う。」
「一生懸命勉強している人にとって、フリーダムファイターの制度は腹が立つ。正義の戦いという点は納得できる。」
「フリーダムファイターは独立には必要だったかもしれないけど、子どもたちが楽をして就職できるのはおかしいと思う。」

など、様々な立場から見た正義を想像しながら自分の考えを表現していました。

「一面的に見れば、『怖い』『暴力的』とも捉えられる今回の政変を、様々な人の立場から多面的に捉え、話し合いの中で自分の考えを持ってほしい」と、鬼山先生は授業に込めた思いを綴りました。

この授業で子どもたちが得た学びは、グローバル化が進み多文化共生が求められる現代社会において、SNS等ネット上の偏った情報に翻弄されず様々な立場の人を尊重しながら生きていく上で、とても重要なものではないでしょうか。

バングラデシュで起こった学生デモについて、さまざまな立場で考えます。

対話を円滑にするためのキーワードを提示する鬼山先生

授業を終えて

今年度の教師海外研修では、現地に行くことができないからこそ、子ども達と同じ目線に立って考えられる授業を創りたいと思いました。そこでバングラデシュの政変を題材に、その是非を考え、語り合い、そしてまた考えました。授業を創っていく中で、自分の無力感や不平等な世界に対する憤りなど様々な思いを感じました。結局、人は、世界は、そう簡単には変わらないとも思いました。しかし、子ども達と話し合い、質問しあい、同じ事象に対して共に悩むことを通して、人を変えるのもまた人であるのかもしれないと感じました。
最後の授業の感想に「バングラの人みんなが幸せになってほしいと思った。」と書いた子がいます。その子はもちろん、バングラデシュに行ったこともなければ、バングラデシュの方を見たこともありません。それでも、遠く離れた人の幸せを願う思いに、世界を変える希望が見えた気がします。人の幸せを願うことの温かさと尊さを改めて学ぶことができた授業になりました。

校長先生より

松戸市ではことばの教育として言語活用科を実施しています。その中で本校においては英語分野の主任を務め、英語教育を積極的に推進しています。国際理解についても興味関心が強く意欲的に研究に努めています。今回の研修から、授業を通してバングラデシュの事象を児童に考えさせました。答えのない課題を、話し合いからお互いの考えを深め、人としての幸せを考えるきっかけを今回の授業で展開できたのではないかと考えています。今回培った実験を自校の児童はもちろん、市内の学校の教員に伝え、これからのグローバル化していく世界に主体的に対応できる児童の育成を推進していくことを期待しています。

常世田校長先生(左)と鬼山先生(右)

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