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【千葉県】教師海外研修 授業実践レポート⑤ 千葉市立宮崎小学校

2025.01.16

教師海外研修は、教員の方々が実際に開発途上国を訪問することにより、途上国が置かれている現状や国際協力の現場、途上国と日本との関係に対する理解を深め、帰国後は学校現場での授業実践等を通じて、児童生徒の教育に役立てていただくことを目的として毎年実施しています。
今年はJICA東京・JICA北陸の合同開催。1都7県(東京・埼玉・千葉・群馬・新潟・長野・福井・富山)から地域・校種・教科の異なる21名の先生達が、パラグアイ(7/26~8/10)、バングラデシュ(国内代替プログラムに変更、8/9~8/11)のコースに分かれて参加しました。

教師海外研修について詳しくは コチラ

9月からは、それぞれが学んだことを児童生徒に還元すべく、続々と授業実践が始まっています。
今回は千葉市立宮崎小学校の夏堀隼也先生の授業を訪問しましたので、レポートします!

批判的レンズ・つながりレンズで深める、深まる

千葉市立宮崎小学校では、4年生の総合的な学習の時間で30時間かけてSDGsについて学んでいます。20時間目となる今回の授業は、一人ひとりがこれまでの学習のなかで抱いた問いについて、友達と話し合う時間でした。
ただ話し合うだけではなく、夏堀先生が最初に子ども達に伝えたのは「批判的レンズ・つながりレンズで見てみよう!」でした。意識して物事を批判的に見てみる、これまでの学習や生活につなげて見てみることで、お互いの考えを深め合えるように、と願ったものです。
3人ずつのグループに分かれての活動でしたが、どのグループも時間が足りない!というくらいに話し合いが盛り上がっていました。その中からいくつか紹介します。

〇なぜ命を失う・失わせてはいけないのか?
 -でもさ、人には権利があるよね。家族を殺された人が、その相手を殺したいって思うの  
  も権利なのかもしれない。
 -原爆も悪いことだけど、なかったら戦争も終わっていなかったのかもしれない。
 -人の命を失わせてはいけないんだけど、うまく理由が出てこない…。

〇なぜ戦争は終わらないの?
 -攻撃している国を、別の国が協力しているってニュースで見たことがある。
  でもさ、だったら、戦争を止めるようとする国も協力し合ったら良いんじゃない?
-でも、戦争って戦わないと負けちゃうし、戦っても死んでしまう人がいるよね…。
-始まったら止められないと思う。とにかく始めないことが大事。

批判的に見た意見を言い合えるのも、クラスの雰囲気の良さがあってこそ。「批判的レンズ・つながりレンズ」を通して、お互いの考えを深め合う濃い時間となりました。これからの学習では、それぞれの問について探究し、まとめ、発表していく予定とのことです。今回の授業で深まった考えが、どのように発展していくのか楽しみです!

友達との対話の前に、大事なポイントを説明します。

友達の問いに、批判的レンズ・つながりレンズを通して話が盛り上がります!

授業を終えて

パラグアイでの自分自身の学びは、実際に見て聞いたからこそ生まれたもので、子どもたちにとっては「知らない国の知らない出来事」です。すごろくづくりという活動を入れることで、楽しみながら知る、という経験ができました。戸田さん(※)という世界を広く回った方のお話を聞くことで、本気になり「自分ごと」に近づいた瞬間が分岐点となりました。
授業を進める上で一番の悩みは、「一人一人が答えのない問いをつくれるのか」「友達の問いに対して真剣に話し合えるのか」でした。すごろくで積み重ねた知識と、戸田さんから揺さぶりがあったためか、子供たちなりの問いを立て、対話が深まっていたように思います。 夏堀 隼也

特定非営利活動法人Forum2050 代表の戸田さんにお話を聞く時間を設けました。

校長先生より

「最高の教師は、子どもの心に火をつける。」アメリカの教育学者ウィリアム・ウォードの有名な言葉です。自分ごとに捉え、全員が発言し、それを真剣に聞いている様子は、まさに子どもの心が熱く燃え、一人一人が輝いている瞬間でもありました。自分の体験に基づいた話、戸田さんとのコラボなど、教師のプロデュース力、日頃からの学級経営の重要性を改めて感じたと同時に、夏堀教諭自身の宝にもなった授業であったかと思います。
これも、JICAの皆様、関係者の皆様方が機会をくださり、ご支援いただけたからこそのことです。この場をお借りし、厚く御礼申し上げます。 校長 渡辺 基博

(左)渡辺校長先生、(中央)夏堀先生、(右)安武教頭先生

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