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【世界結核デー】次なるパンデミックへ向けた研修の挑戦

2025.03.24

3月24日は世界結核デーです。
結核は現在も世界で猛威を振るう感染症の1つで、WHOによると2023年には125万人が亡くなっています。世界ではThe End TB Strategy(結核終息戦略)が推進され、2030年までの結核制圧が進められています。そのような中、日本はどのような取組をしているのでしょうか?
JICAが実施する結核対策の研修について、ご紹介します。

日本の結核対策からの学びを大切にしてきた研修

結核対策に関するJICAの研修は、長い歴史を誇ります。結核対策担当官向けの研修は1963年に、検査担当官向けの研修は1975年に開始されました。これまでの研修では、戦後の結核高蔓延状態から罹患率を年10%減少させた日本の結核対策からの学びや、最新の国際的ガイドラインに基づく結核対策の知識・技術など、個別疾患対策を中心に取り扱ってきました。また、疫学統計などのエビデンスに基づく対策や、他の疾患にも応用可能な知識・技術の習得にも力を入れ、時代のニーズに応じて内容を更新してきました。

しかし、COVID-19のパンデミックは、各国の検査体制、サーベイランスシステム、医療提供などの課題を浮き彫りにし、私たちに感染症対策強化の重要性を再認識させました。

実験室で検査結果について議論する研修員達 「写真提供:結核研究所」

新たなパンデミックに対応する研修として大幅リニューアル

JICAは、新型コロナウイルス感染症などへの対応能力を強化し、人々の生活の基盤となる健康を守る体制作りを推進するため、「JICA世界保健医療イニシアティブ」に重点的に取り組んでいます。その柱の1つである「感染症対策・検査拠点強化クラスター」では、1)感染症検査・研究拠点の新設・拡充や専門人材の育成、2)COVID-19の検査体制の整備を通じた感染者の早期発見や接触者追跡の強化、3)国境水際対策の強化などに取り組んできました。

結核対策の研修は2025年度より「感染症対策・検査拠点強化クラスター」事業戦略 に合わせて以下の内容とタイトルで実施されます。

■最前線の防衛:アウトブレイクと検査室ネットワークの管理
対象:州レベル以上の感染症対策に関わる基幹検査室に勤務する上級検査技師あるいは検査担当医師向け

■感染症対策のための技術革新:パンデミックの予防、備えおよび対応(PPPR)
対象:中央もしくは中間レベルの感染症対策責任機関に勤務する医師向け

両研修は、新たな呼吸器感染症によるパンデミックが発生した際、人の命・生活を脅かす感染症の拡大を最小限に制御することを目指しています。

感染症の早期発見・早期対応には質の高い検査と報告が不可欠 「写真提供:結核研究所」

2025年度研修実施にむけて着々と準備中

現在、2025年度の「最前線の防衛:アウトブレイクと検査室ネットワークの管理」実施へ向けた準備を進めています。

新しい研修では、対象疾患を結核から呼吸器感染症へと広げ、感染症のアウトブレイクを早期に探知するための質の高い検査と迅速かつ適切な報告体制の整備について理解を深め、自国の課題を改善するための対応策を策定します。「感染症対策・検査拠点強化クラスター」事業戦略において、疾病横断的なサーベイランスループのサイクルの中で取り組むべき課題である「探知」「報告」「分析・解釈」「対応・評価」のうち、「探知(検査室における検査能力の強化)」、「報告(感染症情報の迅速かつ適切な報告)」、「分析・解釈(感染症情報の適切な解釈)」の強化に寄与することが期待されています。

もともと当研修の特徴である、主体的な研修への参画を促す取り組みや、他者とアイデアを共有する機会を提供するといった共創の仕掛け(アクティブ・ラーニング)に加え、研修が実施される清瀬市や市民との関わりを大切にすることを目指して準備を進めています。

新しく生まれ変わる研修の今後の報告を、ぜひご期待ください!

2024年度研修では清瀬国際交流会のご協力により、研修員が日本語教室に参加した。「写真提供:結核研究所」

※これらの研修は公益財団法人結核予防会結核研究所の協力で実施しています。
公益財団法人結核予防会結核研究所

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