(続) ~子どもたちの心に緑の種を~ モンゴル・東ゴビ砂漠で新しい緑化手法を開発し、「学校の森づくり」を進めています!
2025.05.08
(特活)新潟県対外科学技術交流協会がモンゴル・東ゴビ砂漠で取り組んでいる緑化支援事業のその後をお届けします。
前回の記事では「深穴式植栽方法」で植栽された苗の100%が植栽後365日間水をあげなくとも枯死せずに生き残ったことが証明された」と報告しましたが、その後も現在まで100%の苗木が生長を続けており、植栽後2年間無潅水で苗木が生存することが確認されています。
この緑化技術にはプロジェクトを実施している東ゴビ砂漠のサインシャンドの住民のみならず、県外の緑化関係者からも注目されています。
◇関連リンク・・・案件概要表
(特活)新潟県対外科学技術交流協会
無潅水で生長を続けるノニレ
プロジェクトで育てている長根苗
2024年9月にはサインシャンドでプロジェクトメンバーによる「市民向け研修」を実施しました。学校関係者、県内の緑化担当職員、サインシャンドの野菜農家、一般の方々など総勢50名以上が集まり、草の根技術協力事業で実証した「深穴式植栽手法」について熱心に学びました。質疑応答の時間には、「深穴を掘って埋め戻すときに肥料は混ぜますか」「苗のポットはどのようなものが適していますか」など具体的な質問や、「この植栽方法で鉄道沿いに防風林を作れると良い」「川沿いにノニレを植栽したい」などの前向きな意見がたくさん出され、参加者の関心の高さが表れていました。
50名以上の関係者が集まった市民研修
研修後も熱心に質問を続ける参加者たち
木が育ち森になるには何十年、何百年という年月が必要です。「地域に緑を根付かせるためには子どもたちへの緑化教育が大切」とのプロジェクトメンバーの考えから、サインシャンドの第1学校にて緑化についてのワークショップや子どもたちとの「学校の森」づくりを進めてきています。
子どもたちに「長根苗」について説明
試験サイトでの「深穴式植栽」を見てもらう
「学校の森」には、深穴方式で植栽した苗木のほか、子どもたちが夏休みの宿題で近くの砂漠から集めてきて撒いた種から、たくさんの新しい草花が芽吹いています。
沢山の草花が生い茂るストーンマルチの区画
定点観測のためのモニタリング調査区の設置
深穴方式で植えたノニレ
ルバーブ:薬用植物
第1学校では、学校長や担当の先生の熱意も後押しし、学校全体で緑化活動を推進する雰囲気が醸成されています。子どもたちからプロジェクトチームに届いた手紙から、取り組みに参加をした感想やメッセージを紹介します。
「学んだことを家族に教えて、家で果物を植えたよ」
「友達にも伝えて広げて行きたい」
「日本人メンバーがとても親切で一緒にできたことが嬉しい」
「深穴式を使えば、グリーンゴビ(※東ゴビ地域を緑でいっぱいにすること)がつくれると思う」
「日本人に、ゴビの植物をどう植えたら良いかを教えてもらった。なんで自分たちが今までこれを発見しなかったんだろう」
「これまで気にとめていなかった植物の名前を覚えることができた」
「今までで時間を一番有意義に使うことができた」
「休憩できる森ができて嬉しい」
「親も一緒に種を集めてくれて嬉しかった」
「学校の森に参加したことは永遠に忘れない」
「とても良いことなので、世界中に紹介してあげてね!」
将来は緑化の専門家になりたいという子どもも出てきている、と担当のドルゴルマー先生がとても嬉しそうに教えてくれました。
いつも熱心で前向きなドルゴルマー先生
子どもたちからの手紙の一部
この事業により、緑化担当者への技術移転のみならず、地域の子どもたちの心に確実に緑の種が撒かれ、大きく生長しています。
第1学校には、周辺の学校からも「学校の森」をつくりたいという問い合わせがきており、ドルノゴビ県の教育科学局長は「県内 21 の学校すべてにこの取り組みを広げたい」という意気込みを語ってくれました。
また、事業で技術移転を行った現地の緑化推進グループメンバーは2024年にNGO「Green Mother Land(緑の母なる大地)」を設立し、深穴式植栽をモンゴルに広めることをミッションに掲げています。
草の根技術協力事業としては2024年12月に事業期間を終えましたが、新潟県対外科学技術交流協会と現地NGOの活動は今も継続しています。
新潟からの緑化技術がゴビ砂漠に根付き、この事業でまかれた「緑の種」が現地の方々によって広がっていくことを、今後も楽しみにしたいと思います。
「市民向け研修後」にプロジェクトメンバーや現地緑化推進メンバーらとともに。
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