【実施報告】課題別研修「投資促進・ビジネス環境整備(準高級)」 ~ビジネス進出で途上国の発展へ 研修員が日本企業や大使館とつながり学んだ2か月間~
2026.01.20
JICA市ヶ谷で開催した「ビジネス・海外進出セミナー」での集合写真。セミナーには海外進出に関心のある日本企業や大使館関係者が参加しました。
JICA東京は、途上国の外国直接投資の促進のための政策策定やビジネス環境整備を目的とした2025年度課題別研修「投資促進・ビジネス環境整備(準高級)」を9月から11月にかけて実施しました。途上国の投資庁など投資促進に関連する機関の管理職レベルの職員が、自国の投資促進やビジネス環境の整備のため、日本政府の取り組みに関する講義や民間企業との意見交換などに参加しました。
【研修概要】
研修名「投資促進・ビジネス環境整備(準高級)」
研修期間
①事前オンライン(土日等を除く7日間)
アジア地域:2025年9月16日~25日、アフリカ地域:2025年10月1日~9日
②来日研修(土日等を除く10日間)アジア・アフリカ合同 2025年10月22日~11月7日
③事後オンライン(5日間)アジア・アフリカ合同 2025年11月18日、19日、20日、27日、28日
参加国
<アジア>バングラデシュ、カンボジア、インドネシア、キルギス共和国、ラオス、マレーシア、モンゴル、パキスタン、パプアニューギニア、フィリピン、東ティモール(11カ国11名)
<アフリカ>コンゴ民主共和国、エジプト、エチオピア、ガボン、ガーナ、ナイジェリア(6カ国6名)(うちナイジェリアは事前オンライン研修のみ参加)
研修委託先:株式会社ワールド・ビジネス・アソシエイツ
株式会社リード技研(川崎市)視察の際の集合写真。実際に海外展開している日本企業との意見交換を行いました。
2024年度研修員とのオンライン交流セッション。帰国後の活動状況の共有や今年度研修員へのアドバイスなどが行われました。
2024年度研修員の中には博士号を取得するためにJICA長期研修員として再来日中の研修員もいます。研修を通じて学べたことや研修後の活動等を対面で聞くことができ、研修員からは「自国で活かせた研修の学び」、「アクションプランを実施する際の困難やアドバイス」等の質問が出ていました。
来日前のオンライン研修では、自国の課題を全員で共有したり、日本における投資促進の取り組みに関する講義を実施したりしました。これにより、来日研修の前にしっかりと基礎的な知識を得て、自国の課題を認識・整理することができました。来日研修では、日本政府や自治体による講義等の他に、関連機関や民間企業の視察も多く実施しました。講義で学んだことを実際に見ることで、理解を深めました。
また、研修の一環として10月30日と31日にJICA市ヶ谷で開催した「ビジネス・海外進出セミナー」では、各研修員が日本企業向けに自国の投資・ビジネス環境について発表し、投資誘致活動を実際に学びました。そこで日本企業から受けたフィードバックも活かし、研修の最終成果として自国の投資促進のためのアクションプランを作成しました。
来日研修の前後にはオンラインで研修を実施しました。来日研修の講義の基礎学習を行うことができ、来日前から研修員のコミュニケーションが生まれ、活発な議論や主体的な研修参加に繋がりました。
来日研修でのグループワークの様子。研修員は地域も自国の状況も様々でしたが、連日活発な議論や意見交換が行われていました。
セミナーにはアジアやアフリカへの進出に関心のある日本企業や大使館関係者が参加しました。各国からの研修員が20分間、自国の投資環境の発表と質疑応答を行いました。
本研修では実践的な投資促進アプローチを理解することを目的にしており、研修の一環として日本企業向けセミナーを実施しています。今年度もJICA市ヶ谷とオンラインのハイブリッドでセミナーを実施し、2日間で会場・オンラインを合わせ計80人が参加し、研修員と日本の企業などを直接つなぎ合わせる個別相談を31回実施しました。研修員は自国の投資環境の発表や日本企業との個別相談を通じて、実践的な投資促進手法を学びました。既にアジアやアフリカに進出している企業の担当者だけでなく、これから海外展開を検討している企業からも参加がありました。
セミナーに参加したエジプトの研修員ヘバ・エルサイエド・アッテヤ・アリ・エルガマルさん(GAFI(投資・フリーゾーン庁)投資促進部門アメリカ地域部長)は、参加者との交流が研修内容の理解と実践に役に立ったといいます。「開催されたセミナーや企業との有意義な議論は非常に有益でした。自分の組織のプロモーションのレベルを向上させ、新たなビジネスチャンスを創出する方法について全体像をつかむことができました。」
また、会場にはジェネヴィーヴ・アパルゥ駐日ガーナ共和国大使やラギィ・モハメド・モハメド・エルエトレビ駐日エジプト大使など大使館関係者も訪れ、研修員の発表を聞き自国の状況についてコメントするなど、在日大使館と日本企業が直接情報交換できる貴重な機会になりました。セミナーでは各国の経済動向や特別経済区・官民連携制度などのテーマが扱われ、セミナー参加者へのアンケートでは97%が「期待していた情報を得られた」と回答しました。
アース製薬株式会社グローバル海外統括本部海外営業推進一部の井川若花子さんは、「GAFI(投資・フリーゾーン庁)の投資促進部門の方から直接お話を聞くことができる貴重な機会でした。また、エジプト大使や公使、参事官の方々にもお会いし、ご挨拶をすることができ、非常に有意義なセミナーでした。」と話しました。
【ビジネス・海外進出セミナー概要】
開催日時:2025年10月30日(13:00~18:30)、31日(13:00~16:40)
場所:JICA市ヶ谷およびオンライン配信
内容:研修員による各国の投資・ビジネス環境の発表、個別ブースでの相談会
参加:無料
各国の個別ブースにはビジネスに関するパンフレットの他、それぞれの国の特産品や手工芸品が展示され、日本企業にとっては現地の様子を知る機会にもなりました。
発表会場の隣には個別相談ブースを用意し、参加企業は関心のある国のブースで具体的な相談を行いました。
11月7日に約2週間の来日研修を終えて各研修員が帰国した後、研修員は研修で学んだことを活かして自国で活動していくための行動計画である「アクションプラン」を作成しました。11月18日からコースリーダーによる個別相談を行い、各研修員は40分間講師と一対一の個別相談で各自のアクションプランについて検討し、実現可能な計画となるように修正しました。
11月27日と28日、作成したアクションプランを発表し、研修員やコースリーダーからフィードバックを受けました。JICAの各国事務所職員も参加し、研修員の発表を傍聴しました。研修員からは帰国後も引き続きJICAと連携してアクションプランを進めていきたいというコメントがありました。
「帰国して終わり」にならないよう、JICAの日本国内機関と在外事務所で引き続き連携し、研修員の「アクションプラン」実現に向けて取り組みが続きます。
今年度の研修を振り返って、本研修委託先である株式会社ワールド・ビジネス・アソシエイツ(WBA)のコースリーダーのお二人にコメントを頂きました。
理事・シニアコンサルタント 元山純一郎
株式会社ワールド・ビジネス・アソシエイツは、海外で活動した経歴を有する中小企業診断士が中心となって2006年に設立された経営コンサルタント企業です。研修開始時には、自国の投資環境や課題を整理する「カントリーレポート」、研修終末には課題に対する解決策を提案する「アクションプラン」を作成してもらいます。その過程では、研修員とコースリーダーが議論する「個別相談」を設け、課題分析と実現可能なアクションプラン策定を支援しました。アジアとアフリカの研修員では、経済発展のレベルが異なる中で研修員が所属する組織形態も多様であり、直面する課題や関心事項も異なります。画一的な知識や実務手法の教唆では研修員が抱える課題の解決には至らないことから、絶えず柔軟な意見交換と個別具体的な対応を行いました。
弊社は一貫して「双方向での議論により、広く学びの機会とする」をモットーに取組んでいます。研修員が講義や視察での学びを議論し共有する「振返り」を多く設けて、アクティブ・ラーニングを啓発しています。弊社にとって課題別研修への取組みは、研修員との「一期一会」の機会であり、「自らも学ぶ機会」と自覚しつつ取り組んでおります。この研修を通じて、研修参加国と日本の産業界にWin-Winの関係が築かれ、お互いが経済的な便益を共有しつつ末長い友好の絆が築かれることを念じています。
シニアコンサルタント 大喜多富美郎
2025年度の研修プログラムには、東南アジアやアフリカ諸国だけでなく、パプアニューギニアやキルギスといった多彩な国々から、優秀かつ個性豊かな研修員たちが集まり、これら16カ国からの参加者がプログラムを通じて知見を得るとともに、活発な交流が生まれました。
研修の締めくくりには、参加者一人ひとりが「アクションプラン」を作成しますが、今年度は、ほとんどの研修員が現実的で具体的な目標を掲げてくれました。彼らが今後どのように行動し、成果を上げていくのか、今から楽しみです。
この研修を通じて感じるのは、東南アジアの参加者たちが年々自信を深め、業務に誇りを持って取り組んでいること。そして、アフリカ諸国の参加者たちからは、成長への強い意欲と、国を超えて協力し合う姿勢が伝わってきます。世界は今、ダイナミックに動いています。その変化を肌で感じ、共に学び合えるこの研修は、私たちにとっても大きな刺激となっています。これからも、国や地域を超えた出会いと学びの場が広がり、未来へとつなげていければと思います。
修了式でアフリカ地域の研修員代表挨拶を行うコンゴ民主共和国の研修員リタ・ムウェンゲ・ヘンリエットさん(投資振興機構投資プロジェクト承認部投資プロジェクトアナリスト)。アジア地域代表としてはマレーシア研修員が挨拶を行いました。2名からは研修に参加できたことへの感謝と、学んだことが自国のビジネス環境の改善に活かせるものばかりであったことなどが述べられました。
9月から2か月間研修員を指導してきたコースリーダーからは、これから自国を変えていこうとする研修員に激励の言葉や「変化を待つのではなく、自分たちが変化そのものだ」というオバマ元米大統領の言葉がかけられました。
JICAから研修員一人一人に修了証書が手渡されました。
アジア・アフリカからの16名の研修員は友情を深め、「私たちは国も文化も異なっているが、お互いの意見を尊重して良い議論ができた。これからも連絡を取り合っていこう」と話していました。
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