「長期研修員の素顔と魅力⑰~」
2026.03.25
JICA東京センター長期研修課では、2025年JICAインターンシップ・プログラムに参加している日本の大学生・大学院生を受け入れています。本記事では、インターン生による開発途上国からの留学生へのインタビューをご紹介します。
インタビューアー:五味颯真(東京外国語大学)
インターン中の五味さん
今回は、フィリピン出身で東洋大学大学院 修士課程に在籍するDe Guzman Unique Kristleさん(以下、クリステルさん)にインタビューしました。
フィリピン農業省で農業技師として働き、農家支援や農村開発に携わってきたクリステルさん。「学び続けることで農家を支えたい」という強い想いを胸に来日し、現在はコーヒー生産を通じた農村開発に関する研究に取り組んでいます。今回は、クリステルさんの日本での生活、研究、そして将来への展望について伺いました。
クリステルさんが JICA の研修に応募した理由は、専門知識を身につけて、その分野のエキスパートとして政策に対する実践的な助言を行うことで、母国の農業課題を解決したいという信念からです。フィリピン農業省で働く中で見えてきた農家の課題や制度の問題点を解決するためには、より専門的で高度な知識が必要だと感じ、大学院進学を決めました。
また、同じ職場の先輩から JICAの研修で学んだ実体験を聞いたことが大きな刺激となりました。
クリステルさんの研究テーマは、「フィリピン農村開発プロジェクト(PRDP)におけるモニタリング強化と、コーヒー生産の改善に関する研究」 です。PRDPとは、ODA(政府開発援助)の枠組みで、フィリピン政府が世界銀行からの融資を受けて実施している、農業プロジェクトのことです。
クリステルさんは、PRDP の4つの主な活動のうちの一つである IREAP プログラムを通じて、担当のソクサージェン地方のコーヒー農家をどうすればもっと支援できるかを研究しています。
特に、農家の実態を正しくつかむための モニタリングの強化、プロジェクトが終わった後も続けられる仕組みづくり、一農家の改善が地域や国全体へ広がる構造のデザインに力を入れています。
この研究には、「知識や技術が行き届かない地方農家を支えたい」という強い想いが込められています。
来日後の生活について、好きな勉強に没頭できるので、毎日が楽しいです。特にお気に入りの授業はプレゼンテーションの授業で、発表を通じて自信をつける機会になっています。その授業において、沖縄とフィリピンのコーヒーの違いをテーマに発表したことが印象に残っています。一方で、海外生活であるがゆえの社会への適合の難しさを感じる場面や、メンタル面で負担が生じてしまう場面もありますが、新しい人との出会いや、旅行などの趣味が日々の助けになっています。
また、市ヶ谷のJICA地球ひろばで開催された「多言語読み聞かせ会」では、JICA研修員が母国語で本の読み聞かせを行いました。 日本の子どもたちが多文化理解を深めるきっかけを作ったとともに、自分の多文化理解にもつながりました。
さらに大学では、国際色豊かな環境の中で学びを深めており、研究室での議論や仲間との意見交換は、とても刺激的で視野を広げるきっかけになっています。
こうした経験は、将来フィリピンで農家を支え、行政に貢献する際に大きな財産になると感じています。
修了後はフィリピンへ戻り、農業省での業務に再び携わる予定です。 目指しているのは、農家を中心に置いた、ボトムアップ型の農村開発です。今回の研究で得た知識を現場のモニタリング強化に活かし、農家の声が政策までしっかり届く体制をつくりたいです。さらに、技術だけでなく、日本で得た丁寧さ・時間管理・仕事への責任感・組織的な姿勢もフィリピンの行政に取り入れたいと考えています。
インタビューを通して、クリステルさんが 自分の将来のビジョンについて、そして 日本での生活の楽しさについて、生き生きと熱を込めて語る姿がとても印象的でした。
学び続けることを大切にする真摯な姿勢と、農家の人々を支えたいという強い想いは、話を聞く私にも力強く伝わってきました。クリステルさんは日本で得た経験や価値観を糧にしてフィリピンの農村開発に新しい風をもたらしてくれるでしょう。クリステルさんの今後の活躍を心から応援しています。