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【草の根技術協力(終了報告)】ピープルズ・ホープ・ジャパンが取り組んだカンボジア農村部のお産を支える仕組みづくり

2026.04.16

特定非営利活動法人ピープルズ・ホープ・ジャパンが2023年4月より実施してきたカンボジアでの母子保健システム強化事業。3年間にわたる本事業は、2026年4月に終了を迎えました。今回はそのプロジェクトの成果をご紹介します!

華やかな観光地のそばにある“お産の不安”

特定非営利活動法人ピープルズ・ホープ・ジャパン(以下、PHJ)は、2023年4月からカンボジアでJICA草の根技術協力事業「シェムリアップ州ソトニクム保健行政区における安心安全なお産のための保健システム強化支援事業」(以下、本事業)を実施しました。本事業の対象地となる「シェムリアップ州」と言えば、世界遺産「アンコールワット遺跡群」で知られ、中心部は多くの観光客で賑わう地域です。その一方で、農村部に少し入ると、安心して出産できる環境が十分に整っておらず、医療のサポートを受けずお産に臨む女性が今も少なくありません。本事業では、こうした状況を改善するため、特に農村地域が多く、医療従事者の立ち会いがない出産が多い「ソトニクム保健行政区」を対象に、母子保健を支える仕組みづくりに取り組んできました。

対象地域の南部にはトンレサップ湖が広がり、人々は船を使って生活します。

遠隔の農村部では、雨季には道路が冠水し、保健センターへのアクセスが物理的に難しくなることも。

雨季の道路状況。

関連リンク
◆特定非営利活動法人ピープルズ・ホープ・ジャパン:ピープルズ・ホープ・ジャパン – アジアの母と子をささえる国際保健医療支援団体
◆(JICA東京 広報記事)未来を担う母と子に安心安全を届けたい~カンボジア農村部で母子保健プロジェクトに取り組むピープルズ・ホープ・ジャパン~ | 日本国内での取り組み - JICA

安心して“いつでも行ける”保健センターへ

本事業が開始したのは2023年4月。世界中で猛威をふるった新型コロナウイルスの大流行を経た後でした。本事業対象地でもその影響は大きく、地域保健の現場は混乱し、感染を恐れての受診控えや住民の保健サービスへの信頼が低下していました。そこで、本事業では地域が抱える課題を整理し、
【保健サービスを提供する側(医療者)】
【保健サービスを利用する側(住民)】
【コミュニティ】
の3つの視点から多様な活動を展開しました。

まず、【保健サービスを提供する側】への取り組みとして、主に保健センターや地域のお産を支える助産師の能力強化・連携強化に力を入れました。特に本事業では、「挨拶・傾聴・丁寧な説明」といった“ホスピタリティ”を重視した助産師研修を継続的に実施。その結果、助産師の態度や説明の仕方が改善され、相手の理解を丁寧に確認する姿勢が身につくなど具体的な行動変化が見られるようになりました。現在では、「安心して相談できるようになった」「質問しやすくなった」といった住民の声も増え、地域保健への信頼回復に大きく寄与しています。

助産師対象の能力強化研修(「人間的なお産」研修)

助産師対象の能力強化研修(「人間的なお産」研修)

妊婦さんへの説明方法をグループワークで復習

助産師間の連携強化に向けたMCAT(※)会議にて
(※)Midwife Coordinator/Midwife Alliance Team

助産師のスキル向上だけでなく、保健センター自体の運営体制の強化にも取り組みました。本事業のカウンターパートである行政担当者が定期的に保健センターを訪問し、
・24時間体制で運営されているか
・利用者にとって適切な環境が整っているか
といった点をチェックし、継続的な改善を促しました。
このような行政主導のスーパービジョン強化は、“安心していつでも利用できる”保健センターづくりの基盤となり、事業終了後の継続性という点でも大きな意義を持つ取り組みとなりました。

行政職員による保健センター利用者へのヒアリングの様子。その結果を改善活動に繋げます。

助産師は能力強化研修で得た知識を最大限生かして、業務に取り組んでいます。

正しい母子保健の知識を届けるために

【保健サービスを利用する側】への取り組みでは、主にコミュニティでの啓発ワークショップを実施しました。ワークショップでは、
・妊婦健診の適切なタイミング
・妊娠中に注意すべき危険な兆候
・出産準備に関する知識
といった内容の定着を目指し、クイズセッションを交えながら住民参加型で学べる工夫を取り入れました。質疑応答の時間では、妊婦にお酒や薬草を飲ませる伝統的な習慣の是非など、多くの質問が寄せられ、こうした文化的・伝統的な背景をもつ疑問に丁寧に答えることで科学的根拠に基づく正しい母子保健知識を伝える貴重な機会となりました。こうした活動を積み重ねて、正しい知識が住民の間に少しずつ浸透していきました。

住民への啓発活動の様子

住民への啓発活動の様子

【コミュニティ側】への取り組みでは、各村の保健ボランティアの能力強化に力を注ぎ、妊婦への戸別訪問を実施してきました。さらに、保健センターと保健ボランティア間で情報共有を活性化するため、「保健ボランティア会議」を定期的に開催。この会議は、
・保健ボランティアが保健知識を復習する場
・コミュニティで見えた課題を共有する場
・保健センターへの住民の声やフィードバックを届ける場
として機能し、双方向のコミュニケーションを生み出しました。こうした取り組みを通じて、保健ボランティアは“住民と保健センターをつなぐ重要な存在”として、住民に安心感を与える大切な役割を果たすようになりました。

保健ボランティアによる戸別訪問では、妊婦さんの状況を丁寧に聞き取ります。

PHJから保健ボランティアに技術的なフィードバックを行うことで能力強化に繋げていきました。

◆本事業概要はこちら:PowerPoint プレゼンテーション 事業提案書要約
◆これまでの活動の様子はこちら: 未来を担う母と子に安心安全を届けたい~カンボジア農村部で母子保健プロジェクトに取り組むピープルズ・ホープ・ジャパン~ | 日本国内での取り組み - JICA

3年間の取り組みが生んだ“確かな変化”

3年間にわたり、目の前の妊婦さんとその家族に正しい保健知識を届けたい、安全に安心してお産してもらいたいという思いで進められてきた本事業。その積み重ねが実を結び、事業対象地では保健センターや病院などの医療施設での出産を選ぶ女性が増えています。地道に取り組んできた人材育成の成果が、地域の変化として少しずつ目に見える形となって現れてきました。また、地域医療を支える保健センターへの信頼も着実に高まっています。本事業を通じて育成された助産師の皆さんは、地域のお産を支える中核人材として今後さらなる活躍が期待されています。

最後に本事業の実施団体・PHJ様からの温かいメッセージをご紹介します。
「私たちは「誰も置き去りにしない」を大きなテーマとして取り組んできました。
保健サービスが行き届きにくい遠隔地域において、新たな仕組みを導入するのではなく、既存の体制を強化し、連携を深めることで、持続可能な環境を整えてきました。事業地は決して容易な環境ではありませんでしたが、現地カウンターパートとの連携のもとに3年間の活動を積み重ね、少しずつ地域住民の意識や行動に変化が現れてきました。今後も現地の人々によって継続され、一人でも多くの女性にとって安心安全な出産、元気な赤ちゃんの誕生が支えられていくことを願います。」(助産専門家 宮副翠子)

◆本事業の終了時報告書はこちらから:事業評価報告 (掲載元:草の根パートナー型 | 事業について - JICA

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