JICA留学生(長期研修員)が新潟県佐渡市で世界遺産が育む農業と島づくりを学びました!
2026.10.06
JICAでは、将来母国の未来を担うリーダーとなる留学生(長期研修員、以下研修員を対象に、日本の大学で専門分野を学ぶだけではなく、日本各地の開発の歴史や文化、課題解決の現場を訪れる「地域理解プログラム」を実施しています。
今回は、2026年5月29日から31日にかけて9か国18名のJICA長期研修員が新潟県佐渡市を訪問し、「世界遺産が育む未来の農業と島づくり」をテーマとしたプログラムに参加しました。
豊かな自然環境と長い歴史・文化を有する佐渡市では、世界文化遺産である佐渡金山をはじめ、環境と調和した農業や地域資源を活かした持続可能な地域づくりが進められています。本プログラムでは、こうした地域の特色や取組みを学びながら、地域の活力を支える人々との交流を通じて、持続可能な開発のあり方について理解を深めることを目的としました。
本プログラムでは、「農業」と(日本国内都市部からの)「移住促進」を主な軸として、佐渡市の歴史や地域特性について学んだほか、金山・棚田・農家民泊・牡蠣養殖等の現地視察、伝統芸能「鬼太鼓」の体験や地域住民との交流を行いました。参加した研修員は、佐渡が抱える人口減少、農業の担い手不足、自然環境との共生といった課題を、母国の地域課題とも重ね合わせながら考える機会を得ました。
初日は、両津地区公民館において、佐渡市による日本国内向けの移住促進と農業政策に関する講義が行われました。移住促進の講義では、金銀鉱山の繁栄期から現在までの人口変化、少子高齢化、インフラ維持などの課題に加え、定住促進に向けたビジネスコンテスト、二地域居住、Uターン・Iターン者への支援制度などが紹介されました。
農業政策に関する講義では、佐渡の歴史・文化と結びついた農業、世界農業遺産(GIAHS)、トキをはじめとする生き物を育む環境に配慮した農法などについて説明がありました。参加した研修員からは、農業技術、人材交流、棚田への水供給など、母国の状況と比較しながら多くの質問や提案が寄せられました。
佐渡市役所による講義
研修員から活発な質問が寄せられました
2日目は、きらりうむ佐渡、佐渡金山を訪問し、佐渡の歴史と金銀鉱山の発展が島の暮らしや産業に与えた影響について理解を深めました。佐渡金山では、江戸時代の手掘り坑道や近代化を支えた機械掘り坑道を見学し、研修員からは日本人の努力や勤勉さ、採掘の技術力に対する驚きの声が上がりました。
佐渡金山「道遊の割戸」
移動中も事前学習した 研修員が佐渡の自然やトキについて説明
歌見棚田では、新潟大学佐渡自然共生科学センターと地域団体UKUUの協力のもと、棚田保全活動について学びました。また、棚田復活への取組み事例として、田んぼの水路を使って発電するジェット水車の超マイクロ小水力発電を見学しました。人手不足により放棄された棚田が増えている現状や、地域の方々が棚田を守り続ける思いに触れながら、研修員は持続可能な農業や地域コミュニティのあり方について考えました。
ぬか釜で炊いた棚田米が振る舞われた交流会では、若者の農業離れ、放棄地の再生、高齢者が元気に働き続ける秘訣などについて活発な意見交換が行われました。地域の方からの「お金や物は人と分けたら無くなる、けれど幸せは人と分けたら増えていく」というメッセージは、研修員に強い印象を残しました。
歌見棚田でぬか釜ご飯を炊く様子
棚田保全に取り組む地域団体UKUUとの交流
地域の方々との意見交換
潟上集落では、地域の皆様の協力のもと、佐渡の伝統芸能である鬼太鼓(おんでこ)を体験しました。研修員は、基本打法の練習を行い、迫力ある鬼の踊りや太鼓の演奏を間近で体感しました。
交流会では、地域の子どもたちやそのご家族も参加し、研修員は日本語で、地域の方々は英語も交えながら互いにコミュニケーションを図りました。言葉の壁を越えて文化を共有し合う時間となり、多くの研修員が特に印象に残った活動として挙げていました。
タイヤを使って鬼太鼓を練習
迫力ある鬼太鼓のパフォーマンス
鬼の面を体験する研修員
交流会で日本語でのお礼の挨拶
最終日は、農家民泊を運営する一般社団法人ミライサト、及び牡蠣養殖・植木業を営む株式会社 佐渡活を訪問しました。ミライサトの講義では、ミライサト代表が佐渡への移住に至った経緯、空き家の活用、地域で事業を継続する上での課題について学び、古民家の活用や農村地域における起業の可能性について理解を深めました。
佐渡活では、Uターン後に地域資源を活かした事業に取り組む実践例として、牡蠣養殖の現場を見学しました。研修員は牡蠣の稚貝付けを体験し、地域の産業を通じて課題解決に取り組む企業の姿勢に触れました。また、この見学を通じて、研修員は、地域の事業者が島の豊かな自然資源を活かしながら新たな経済的機会を創出し、地域課題の解決に貢献していることについてり理解を深めました。
農家民泊「ミライサト」
併設カフェも見学
牡蠣の稚貝付け体験
佐渡活での視察と意見交換
プログラムの最後には、研修員が3日間を通じて感じたことや学んだことを発表し、研修員同士で共有しました。発表では、「日本は地方でそれぞれ特徴的な文化を持っていることをよく理解できた。また、日本人の精神性も感じることができた」、「地域の天然資源の有効活用、起業支援、文化の保全がいかに持続可能な地域開発に寄与し得るかを学ぶことができた」、「地域社会、大学、企業、政府機関が緊密に連携することで、過疎化や商業機会の不足といった地域課題の解決に繋がることが分かった」という声が寄せられました。日本の都市部と地方の暮らしの違い、地域ごとの文化の特性、農業・漁業などの地域産業の可能性、地域社会・大学・企業・行政の連携による持続可能な地域づくりなど、多様な視点からの学びが語られました。
今回の地域理解プログラムでは、世界遺産を背景に育まれてきた佐渡の歴史や、豊かな自然と調和した農業、移住・定住の取組み、地域文化、そして地域の魅力を次世代へつなぐ地域住民の多様な活動について、研修員が現地視察や交流を通じて学びました。こうした経験を通じて、研修員たちは、日本の地域社会に根付く知恵や工夫、そして地域の活力を支える人々の思いに触れ、それぞれの母国における地域づくりや持続可能な発展について考えを深める機会となりました。
特に、佐渡市が取り組む人口減少対策や地域活性化、環境と調和した農業の実践は、多くの研修員にとって自国が抱える課題と重なるものでした。研修員が今回得た気づきや経験が、将来それぞれの国や地域の発展に生かされることが期待されます。
最後に、佐渡市、新潟大学、UKUU、潟上集落「誠心会」、一般社団法人ミライサト、株式会社 佐渡活をはじめ、本プログラムにご協力いただいた皆様に心より御礼申し上げます。