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2.<水力発電プロジェクト>の環境チェックリスト

項目 問題点
(および
主な対策)
左記問題点に
対する
検討状況
1.自然環境問題
(1)水質汚濁
 動植物プランクトンの異常発生、底泥からの重金属の溶出等により水質が悪化し、水生生物へ悪影響を及ぼす恐れはないか。また、富栄養化等に伴う水質汚染により下流での農業用水、飲料水への影響はないか。貯水池の水質は当該国の環境基準を満足するか。
(2)水温変化、濁水長期化
 貯水池の冷水の放流により下流の水生生物、農業へ悪影響を及ぼす恐れはないか。また、濁流長期化により、下流の日光量が減少し、水生生物の成長、生存が阻害される恐れはないか。放流水の水質は当該国の環境基準を満足するか。
(3)基準
 上記の項目にかかわる当該国の基準は国際的に妥当な内容と判断されるか。また、借入国において、現在規制が確立されていない項目については当該国以外(日本における経験も含めて)での実状も踏まえた上で検討しているか。
(4)下流水の流量変化、海水浸入
 下流水の流量の変化により、 あるいは海水浸入により(下流水の流量の変化および土砂流下量の減少のため河床低下が起こることがあり、これにより海水が浸入する。)下流の漁業、農業等 住民の水利用及び河口、海域の生態系に悪影響を及ぼす恐れはないか。また、沃土流下の阻害により下流の農業生産等に悪影響を及ぼす恐れはないか。
(5)漏水、ダム湖岸崩落、誘発地震
 貯水池周辺地山への漏水、湖岸崩落の恐れ、また誘発地震の恐れはないか。
(6)局地的小気候変化
 熱帯乾燥地帯の大ダム等の建設により、局地的な気候変化をもたらし集中豪雨等の被害を及ぼす恐れはないか。
(7)熱帯林の消滅
 熱帯の平坦な地域の貯水池化により大面積の熱帯林を水没、消滅させる恐れはないか。
(8)生態系
 大面積の貯水池化、湖水の富栄養化等により希少動植物の生息域の消滅、ひいては種の減少、その他生態系への悪影響の恐れはないか。
(9)景観
 景観への悪影響は予想されるか。
(10)工事中の影響
 工事中の騒音、振動、濁水、粉塵、排ガス等の低減対策は充分配慮されているか。また、工事により環境へ悪影響を及ぼす恐れはないか。
2.社会環境問題
(1)住民への配慮、NGO
 移転を余儀なくされる住民及び周辺住民への説明がなされ、かつ(女性等を含む)住民の同意は得られているか。また、住民に対する正当な補償、移転後の生活基盤の確保等その影響を最小限とする努力がなされているか。NGO(当該国内、海外)の動向はどうか。
(2)文化遺産
 プロジェクトは歴史的、文化的、宗教的に貴重な遺産、史跡等を損なう可能性があるか。
(3)水関連疾病
 ダム建設によりマラリア等水関連疾病が発生する恐れはないか。
3.モニタリング

具体的にどのようなモニタリング計画を有しているか。当該計画は適切なものと判断されるか。下記ポイントで言及した留意事項につき、十分なモニタリング計画を有しているか。
4.ポイント

水力発電プロジェクトにおいては「1. 自然環境問題の(1)(2)(4)の水質汚濁、水温変化、濁水長期化、下流水の水量変化、海水侵入」は、大きな環境問題を引き起こす可能性がある。また、 「2.社会環境問題の(1)(2)の住民補償、NGO、文化遺産」についても充分な配慮が必要である。山間地のダムについては、林業プロジェクトのポイン トの項を参照のこと。