“スポーツは共通言語” 陸上オリンピックメダリストが東ティモールを訪問しJICA海外協力隊と協働
2025.01.23
-
- 東ティモール事務所 企画調査員(ボランティア事業)石川 陽太
2016 年リオ五輪 男⼦4×100mリレーの銀メダリストで、現役のオリンピアンである飯塚翔太選⼿(ミズノ)が2024年11⽉30⽇から12⽉4⽇にかけて豊⽥裕浩コーチ(中央⼤学)とともに東ティモールを訪問し、JICA海外協⼒隊と共に様々なイベントを開催し、現地の⼦どもたちとスポーツを通じて交流しました。
活動初⽇は観光地クリストレイビーチでゴミ拾いとスポーツを融合させた “スポGOMI”を、JICA海外協⼒隊の環境教育隊員を中心に実施しました。スポGOMIとは各チームが集めたゴミの種類や重さで成績を競い合うものです。地元の⾼校⽣チームに加わり真剣にゴミ拾いを行った飯塚選手は「チームの仲間と⼀緒に楽しくゴミ拾いができた。参加者は競技を楽しみながら、同時に環境に対する意識も高められるのでは」と笑顔で話していました。
制限時間30分で集められたゴミは全チーム合計73.5キロでした。
その後、綺麗になった海岸で⾏われたのはビーチフラッグ。最初の⾃⼰紹介で「バイクくらいの速さで走れます!」と話していた飯塚選⼿。実際に世界レベルの⾜の速さを⽬の当たりにした⼦どもたちは驚きを隠せない様子でした。
2⽇⽬は⽇本の運動会にならった”UNDOKAI”が、東ティモールの首都ディリ市内の国⽴体育館で⾏われました。当国ではこれまで体育教育の向上のために、体育隊員を中心に「UNDOKAI」を過去2回実施してきました。初回は隊員の配属先でもある体育の教員課程で学んでいる大学生に対してUNDOKAIを紹介しつつ実際に体験してもらいました。2回目は隊員の配属先の体育教師に対して、初回のUNDOKAIに参加した学生に運営として参加してもらって実施。そして3回目の今回はこれまでの活動の集大成として隊員たちの活動する配属先4校の中⾼⽣らおよそ 60 ⼈が参加して学校対抗のUNDOKAIを企画しました。運営はこれまでの2回を経験している大学生を中心に JICA 海外協⼒隊がサポートを務めました。
ハチマキを巻きながら障害物競走・玉入れ・綱引き・リレーの4種目を実施し、全種目に飯塚選手に参加していただきました。どの競技も盛り上がりましたが、一番盛り上がりを見せたのは「綱引き」。飯塚選手が参加した学校が綱引きで優勝した時の盛り上がりは、まるで日本のUNDOKAIそのもの。生徒と共に喜びハイタッチをする様子がとても印象的でした。
飯塚選⼿は「何度か対戦を重ねるうちに⾃然と掛け声が上がるようになり、みんなの呼吸が合っていったのが印象的だった」と振り返りました。
障害物競走ではパン作りの活動をしている料理隊員の配属先が作ったパンを使用
綱引きでは飯塚選手が入ったチームが優勝!
パリ五輪と東京五輪に出場したという東ティモール陸上選⼿2⼈も”UNDOKAI”に参加。「来年、東京で⾏われる世界陸上で再会しよう!」と握⼿を交わしました。
3⽇⽬はディリ市内にある⾼校で、飯塚選⼿、豊⽥コーチによる陸上教室が⾏われ、飯塚選⼿が毎⽇⾏っているというストレッチやウォーミングアップメニューを教えてもらいました。
ハードルやコーンを使った練習を行い飯塚選⼿が丁寧に⼀⼈⼀⼈のフォームを確認しながら「重要なのは股関節を柔らかく保つこと。そうすることで⾜をはやく、大きく動かすことができる」と説明。⽣徒らにとっては初めての内容ばかりでしたが、皆、積極的に取り組んでいました。
豊田コーチも手取り足取り指導します
続いて⾏われたのはバトンの受け渡し練習。コツは?の問いに、「渡す相⼿を思いやる気持ちを⼤切に」と精神⾯でのアドバイスを交えながら指導してくれました。
締めくくりは全員参加のリレー。湿度の高い炎天下でしたが、皆、しっかりほぐした体で軽快に走り抜けました。
滞在最終⽇は、JICA 東ティモール事務所と⽇本のメディアとを結び、オンライン会⾒で今回の活動を報告しました。
⾔語や、⽂化の違いなどでやり取りに難しさはなかったのか、との記者の質問に対し飯塚選⼿は、「まったく感じなかった。スポーツは共通⾔語になると実感した。」と述べ、「陸上は誰にでもできる⼀番⾝近なスポーツ。実際に⽬の前で⾃分のパフォーマンスを⾒せれば、その速さや迫⼒に圧倒されて陸上がもっと好きになってもらえると思います。そのためにも⾃分は速く走り続けていかなくてはならないし、競技場から飛び出して、今回のように⼦どもたちと近い活動を続けていきたい。」と意気込みを語りました。
また豊⽥コーチは「このような活動は現役アスリートの飯塚選⼿にとっても競技へのモチベーションアップに繋がる」とし、くわえて「スポーツと教育」のありかたについても多くの気づきがあったと感想を述べ、飯塚選手は会⾒の最後に「今度はリレー⼤会を開催してみたい」と新たな抱負を語りました。
お二人の渡航を通じて、この国、特に子どもたち、また隊員にとっても非常に大きな機会になったと感じるとともに、いかにこのよい流れを止めずに「発展」させることできるかが今後の課題になると思います。引き続き隊員活動をはじめとしたJICAの「スポーツと開発」協力がさらに進んでいくよう努めていきたいと思います。
国⽴競技場を見学した際の1枚。「ここならリレー⼤会ができそう!」とのこと
scroll