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南インドでJICA養蚕技術普及プロジェクトの現地調査

2011.07.25

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(プロジェクト実施前)カイコの餌となる桑。木が生い茂っていた桑園。

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(プロジェクト実施後)管理が行き届き葉の採取が容易になった。

JICAプロジェクトの過去の成果を紹介するシリーズ本「プロジェクト・ヒストリー」執筆に向けた情報収集のため、JICA研究所の山田浩司参事役は、6月13日から7月2日まで南インドで現地調査を実施しました。[関連記事へ] インドは世界有数のシルク生産国の一つです。しかし、そこで生産される生糸の多くは地元の熱帯性カイコの繭から採取される低品質な糸であり、絹織物の器械生産に使われ、強度が必要なたて糸は、中国を含む海外からの輸入に頼っていました。このような状況を改善するため、インド政府は、1980年代後半、高い養蚕技術を誇る日本へ支援を要請しました。JICAは1991年より16年間にわたり、現地の環境に最も適したカイコの品種と飼育技術を開発し、インドの繭生産の90%以上を占める南部の三州(カルナタカ、アンドラ・プラデシュ、タミル・ナドゥ)で新しい養蚕技術を普及させるため、専門家を派遣しました。後にJICAは、これら新技術の導入が養蚕農家の収入増加や繭の品質向上などの効果をもたらしていることを確認しています。

2007年から2010年までJICAインド事務所に駐在した経験を持つ山田参事役は、今回の現地調査で、プロジェクトや蚕糸業に携わる多くの人々へインタビューを実施しました。対象は繊維省中央蚕糸局、州蚕糸局、その他関係部門・組織のプロジェクト担当者、そして5県約40人におよぶ養蚕農家の人々です。プロジェクトが終了してから約4年が経過した現在、新しい養蚕技術はプロジェクトに参加した農家の人々に着実に引き継がれており、「子供を大学へ進学させることができるようになった」という声が聞こえるなど、収入増加の面でもプラスの効果を確認することができたといいます。「注目すべきは、[新技術導入により成功を収めた]大規模農家が他の周辺農家を対象とした養蚕研修を実施したり、そこで働く農場労働者の不測の事態や冠婚葬祭時に経済的な支援を提供したり、さらには地域農民のため無料の眼科検診を実施するといった、地域コミュニティへの社会貢献活動に熱心に取り組んでいることです。」実際に、養蚕の成功により大規模農家は事業を拡大し、結果としてより多くの農村雇用を創出しました。山田参事役は次のように説明します。「土地なし農民であっても [後継者のいない大規模農家から農場施設を借りて使用するなどして]養蚕に従事しているというケースが多くあります。JICAの技術協力プロジェクトはこうしたチャンネルからも貧困削減に貢献していると言えるでしょう。」

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カイコに繭を作らせる道具「回転まぶし」をJICAが導入。

関連研究領域:成長と貧困削減

ムービー・コメンタリー

山田浩司 JICA研究所

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