JICA緒方研究所

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北野所長が連結性についての国際シンポジウムで日本の開発経験について発表

2016年10月18日

アジア太平洋地域におけるコネクティビティ(連結性)についての国際シンポジウムが、太平洋経済協力会議(PECC)の中国側国内機関である、中国太平洋経済合作全国委員会(CNCPEC)の主催で2016年9月27日、中国・揚州で開かれ、JICA研究所の北野尚宏所長が登壇しました。北野所長は、日本国内での連結性志向の開発「太平洋ベルト地帯」構想の教訓や、日本の経験に基づいた我が国の経済協力について紹介しました。

議論する参加者たち
議論する参加者たち

同地域の連結性については、2013年インドネシアのバリで開かれたAPEC首脳会議で「APEC連結性に関する枠組み」が宣言され、2014年の北京での首脳会議で、2025年までに「継ぎ目なくかつ包括的に連結・統合されたアジア太平洋を実現する」ための「連結性青写真」が採択、2015年のマニラでの首脳会議でも再確認されました。多くの地域機構や国が連結性にかかる様々なイニシアティブを展開している中、これらの諸活動をどう連結していくかの模索を主題として開催されました。

北野所長は、リージョナル・サブリージョナルな連結性の関係につき議論する第1セッションに登壇、日本の経験について報告を行いました。

発表する北野所長
発表する北野所長

北野所長は、日本の経験に関しては、太平洋ベルト地帯構想を例に、その経験から学べる教訓として、以下の3つを挙げました。(1) 主要な工業地帯を有機的につなぐ「ベルト」は、民間投資を通じて効率的な産業集積を促進するのに効果的であり、経済成長にも結び付きやすい、(2) 均衡のとれた成長のためには、地域間格差を最小限にすることに注意を払わなければならない、(3) 日本の主要な大都市圏での急速な工業化の深刻な悪影響として、環境悪化や汚染が起こった。マイナスの副作用は適切に管理すべきである。

日本の経験に基づいた経済協力についての発表では、上海経済圏の開発と、タイの東部臨海開発の事例を報告しつつ、日本の経済協力モデルを、援助によるインフラ建設と誘発された民間投資の相乗効果により経済成長を促していくアプローチとして紹介しました。具体的には、日本などの援助により建設された様々なインフラが、民間投資の増大に寄与し、それらが産業集積の形成を促進し、迅速な経済改革を可能とするというものです。また日本は、地域間の均衡ある発展をおおむね達成した自身の経験をもとに、均衡がとれた成長の重要性を強調していることも説明しました。

ベトナム・カンボジア・タイを結ぶ「つばさ橋」(写真:久野真一/JICA)
ベトナム・カンボジア・タイを結ぶ「つばさ橋」(写真:久野真一/JICA)

最後に、ASEANの連結性強化へのJICAの支援を紹介しました。ASEAN連結性マスタープランに基づき、物理的連結性向上のために、「東西・南部経済回廊」の道路、橋梁、港などの整備を支援しているなかで、質の高いインフラの事例としてカンボジアのネアックルン橋(つばさ橋)を紹介。制度的連結性については、継ぎ目のないスムーズな物流を目指す「アジア・カーゴ・ハイウェー」構想のもと、各国の税関や貿易制度の改善を支援していることを説明。また、人と人との連結性強化の事例として、ASEAN各国拠点大学の教育・研究能力の強化と日本も含む各国大学間のネットワークの強化を通じ、工学系人材を持続的に輩出することを目的に実施中のアセアン工学系高等教育ネットワーク(AUN/SEED-Net)を紹介しました。

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