JICA緒方研究所

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国際開発学会でJICA研究所の研究員が成果発表

2016年12月14日

中国による工事が進むコンゴ民主共和国の道路
中国による工事が進むコンゴ民主共和国の道路(写真:久野真一/JICA)

国際開発学会の第27回全国大会が2016年11月26~27日、広島県東広島市の広島大学・東広島キャンパスで開かれました。JICA研究所の志賀裕朗主任研究員が「開発援助の規範的枠組み-DACドナー及び南南協力ドナーの間に立つ我が国の二国間援助」、伊芸研吾研究助手が「女子教育に関する親の意識の決定要因および女子児童の就学に与える影響-イエメン農村地域を事例として-」の発表を行ったほか、多くのJICA研究所の研究者、関係者が発表者や座長、コメンテーターとして参加しました。

志賀主任研究員の発表「開発援助の規範的枠組み-DACドナー及び南南協力ドナーの間に立つ我が国の二国間援助」は、開発協力に関する一般口頭発表の一つとして行われました。

志賀主任研究員は「開発援助の規範的枠組みは、これまで西側先進諸国、中でもOECD開発援助委員会(DAC)が主導して形成してきたが、中国やインドをはじめとする南南協力ドナーの台頭に伴って、南南協力の規範枠組みが注目されつつある」としたうえで、日本はDAC加盟国でありながら、むしろ南南協力規範との共通点を多く有する独自の援助規範を推進してきたとの見方を示しました。

発展したインド
発展したインド
(写真:谷本美加/JICA)

志賀主任研究員は、欧米諸国が慈善的な援助観を持つのに対し、日本は援助を対等なもの同士が双方の利益のために行う「協力」と見なしていると指摘。日本は民間企業との協調のもとにODAと貿易・投資を三位一体として推進しており、互恵平等・内政不干渉を重視する南南協力の規範枠組みと多くの共通点があると分析。第二次大戦後、東・東南アジア諸国との和解、市場と資源へのアクセス再確立を目指して戦後賠償協定と同時に締結された「経済協力協定」が、我が国の「経済協力」出発点となったと説明しました。

一方、志賀主任研究員は1970年代以降の日本の援助規範の変化についても指摘しました。それは、中東、アフリカや南米諸国への援助の拡大によって生まれ、経済協力は、日本にとって安定的で良好な国際関係の創出という広義の安全保障に貢献するという新たな任務を担うようになったことから生じたと説明。最後に、「日本は、DAC加盟国として欧米流の援助規範を共有しながら、途上国には平等互恵性を持つ開発パートナーを標榜している。これはわが国の強みではあるが、双方から不信を買いかねない微妙な立ち位置に身を置いているとも言える」と指摘しました。なお、このセッションの座長は、加藤宏・元JICA研究所長が務めました。

伊芸研究助手の発表「女子教育に関する親の意識の決定要因および女子児童の就学に与える影響-イエメン農村地域を事例として-」は、ジェンダーと参加に関する一般口頭発表の一つとして行われました。

イエメンの子どもたち
イエメンの子どもたち
(写真:中原二郎/JICA)

伊芸研究助手は、イエメンの農村部の人々を対象とした調査の結果をもとに、「女子教育に対する親の関心にはばらつきがあり、母親のほうが女子教育に関心があるというわけでもない。親の教育レベルや識字レベルが、女子教育に対する認識と相関しており、家父長的な家族観、周辺社会の女性観も大きく影響している」とし、6歳から14歳の女子の就学率の低さの背景にあるさまざまな要因を示唆しました。そして、伝統的な社会通念が強い影響力を持つ農村地域では、親の女子教育に対する認識と就学率が世代を超えて影響し合う構図があることが示されたと指摘するとともに、意識改革を促すプログラムが有効だと話しました。

その他、下田恭美研究員が一般口頭発表「経済成長の社会的側面」のセッションで、「『私達家計に貢献してるの』-インクルーシブビジネス活動が人々にもたらすもの」のテーマで発表、島田剛招聘研究員(静岡県立大学准教授)が「Social Impact of Aid and Policy(援助と政策の社会的インパクト)」のセッションで、「Impact on Kaizen on Workers:Evidence from Central America and Caribbean Region(カイゼンの労働者へのインパクト:中央アメリカ・カリブ諸国の実例から)」のテーマで発表しました。

JICA研究所の前所長で、現在、客員研究員の畝伊智朗・吉備国際大学教授が企画セッション「紛争影響国における復興支援事業の長期的モニタリング」の提案者・座長を務め、発表も行いました。畝客員研究員は企画セッション「JOCV派遣プログラムを活用した大学院による高度職業人育成の成果と課題」でもコメンテーターを務めました。

また、佐藤仁客員研究員が一般口頭発表「社会開発」、萱島信子副所長が教育に関する一般口頭発表「Curriculum 1」で座長を務めました。コメンテーターとして、加藤元所長は、共通論題「これからの開発協力-多様性と協働」、志賀主任研究員は一般口頭発表「ガバナンス」にも登壇しました。

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