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IMF-JICA合同国際会議でインドネシアの健康保険制度と財政について発表-ダルタント招聘研究員

2017年2月10日

財政問題と開発などについて話し合うJICAと国際通貨基金(IMF)の4回目の合同国際会議「地域の発展:財政リスク、財政余地及び持続可能な開発目標(SDGs)」が2017年2月2日、JICA市ヶ谷ビルで開かれ、JICAの北岡伸一理事長が基調講演を行ったほか、テグー・ダルタントJICA研究所招聘研究員(インドネシア大学教授)が発表を行いました。

北岡理事長
北岡理事長

今回のIMF-JICA合同国際会議には、アジア12カ国から、閣僚・局長級の金融財政政策の当局者や研究者らが参加。アジア諸国が財政余地(注)を拡大して持続可能な成長、すなわちSDGsの達成を目指すため、議論を行いました。

北岡理事長は、2015年の2つの国際的合意(SDGsとパリ協定)と2016年のポピュリズムの台頭はグローバル化の機会と課題を象徴的に表し、現在は今後の世界のあり方を考える分岐点にあると述べた上で、SDGsは各国のオーナーシップ主導で達成されるべきであり、そのためにも政治的リーダーシップを支える財政・金融関係者の役割が重要であること、さらに強靭な経済がアジアの平和と安定に必要であることを強調しました。

ダルタント招聘研究員
ダルタント招聘研究員

その財政余地とSDGsをテーマにしたセッションでは、ダルタント招聘研究員がインドネシアでのユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)への取り組みについて発表しました。UHCは「すべての人が、適切な健康増進、予防、治療、機能回復に関するサービスを、支払い可能な費用で受けられること」を意味し、日本政府やJICAは、UHCの積極的な推進を訴えています。

ダルタント招聘研究員は、インドネシアがUHC普及のため、2014年に中央政府が導入した健康保険プログラムについて、「当初は貧困層とフォーマルセクターで働く人を重視し、加入率は2016年に60%を超えた。しかし自主加入のため、インフォーマルセクターで働く人の加入率が低く、いまだに34%以上の人がカバーされていない」「貧困層は保険料免除としているため政府が出す補助金も増加している」と現状を説明しました。

全体の様子
全体の様子

そのうえで、UHCと財政に関して、「UHC実現のためのコストは15年で約2倍になるだろう。税収の効率化、健康保険サービスにかかるコスト削減、そして人びとの健康増進を合わせて進めることができれば、インドネシアは2030年までにUHCの実現が可能ではないか」と述べました。

ダルタント招聘研究員の発表に先立ち、「資源国における公共財政管理」のセッションでは、広田幸紀JICAチーフエコノミストがモデレーターを務め、馬杉学治JICA産業開発・公共政策部ガバナンスグループ課長が発表。ブルネイ、モンゴル、ミャンマーからの参加者と議論を行いました。

さまざまな議論が行われた後、閉会の挨拶で、JICAの神崎康史理事は、財政管理に関連し、人材育成や防災などの幅広い課題の重要性が認識されたとし、国内資源動員や防災分野の協力に加え、SDGsの達成にはセクター横断的協力が重要であり、質の高いインフラやUHCなどの協力も進めていきたいと総括しました。


(注)財政余地(fiscal space):財政余力の程度を表すもの。定義の一つとしては、当該国の債務上限(金利急騰等に直面して債務が際限なく増大し始めると見られる水準)と現在の公的債務水準との差。なお、財政余地が無いことはデフォルトになることを必ずしも意味せず、大胆な財政健全化を行う必要があることを意味する。

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